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『STAR SAND 星砂物語』戦時に戦わないという裏切り

STAR SAND 星砂物語

原題 : ~ The STAR SAND ~

作品情報

監督・キャスト

監督: ロジャー・パルバース
キャスト:  織田梨沙、満島真之介、ブランドン・マクレランド、三浦貴大、吉岡里帆、寺島しのぶ、 渡辺真起子、石橋蓮司、緑魔子、ダンカン・ハミルトン、近谷浩二、沼田康弘

日本公開日

公開: 2017年8月4日

レビュー

☆☆☆

観賞: 2018年10月28日(DVD)

 

◆あらすじ
1945年の沖縄。戦禍からは遠く離れた小さな島に渡って独り暮らし始めた16歳の 少女・洋海(織田梨沙)は、洞窟で脱走兵である日本人・隆康(満島真之介)とアメリカ人・ボブ(ブランドン・マクレランド)という二人の青年に出会う。戦うことが厭になって軍を離れた“卑怯者”同士の日本兵と米兵は、洞窟の中で暮らすうちに心を通わせ合い、彼らを気に掛ける洋海は足しげく洞窟を訪れ、 三人の間には不思議な関係が築かれてゆく。しかしある日、隆康の兄・一(はじめ=三浦貴大)が洞窟にやって来る。……。(Filmarksより引用)

 

『戦場のメリークリスマス』助監督の初監督作品

原作は監督でもあるロジャー・パルバースの小説『星砂物語』。あの『戦場のメリークリスマス』の助監督でもある。
 
そう思いながら見るからか、戦時中にあって爆撃や銃撃よりも人の心に争いを感じる描写の随所に大島渚監督の香り。

美しい風景と夜空

見どころの一つは、八重山諸島の美しい風景。

……と言ったら、えっ、戦争映画じゃないのと、思うわけだが、設定が「戦火を逃れた離れ島」なので、実際には戦場の描写はないのである。

沖縄方面はどの島も大変な戦場になっているイメージだったが、八重山や宮古には上陸戦はなく、その代わり上陸した日本軍によって酷使されたらしい。

そして、終戦近くには空襲があり、大変な被害が出たという。

「鳩間島の歴史 – 太平洋戦争」によると、

1941年~1945年
■太平洋戦争
八重山では上陸戦は行われなっかった。鳩間島では他の島のように空撃も少なかった。
しかし、1945年3月以降は他の島と同様、空爆が激しくなっていく。記録にも無数の爆弾が落とされたとある。
戦死者は戦争マラリアでの被害を合わせると、鳩間島で100人ほどの人が亡くなった。

■空襲
1945(昭和20)年3月末から6月末へかけて、民間への米軍の艦砲射撃が始まり、大きな被害を受けた。

と、ある。

孤島であるが故の病気や飢餓にも悩まされたらしく、戦争とは別の戦いが起きていたといえる。

戦争とは別の戦い

まさに、そういう話だった。

洞窟の中の3人は、

脱走日本兵。
脱走アメリカ兵。
日系アメリカ人娘。

であり、いずれも世間に曝されたら殺される可能性のある人たちだ。

だから、戦わず隠れている。隠れている分には洞窟の中は平和だ。
『STAR SAND -星砂物語-』感想

そこに「世間」が現れる。

なによりも「国が大事」な世間の1人。

寺島しのぶの凄み

戦場描写はまるでないが、洋海が隠れ住んでいた空き家の主として現れる寺島しのぶの怪演は必見。

正直、思っていた作品と違ったので少し眠気すら覚えていたのだけれども、この辺から目が覚めた(笑)

演技だけで体験を観客の頭の中に映像化できる役者って、本当に凄い。

壮絶な語り部。

坂本龍一の主題曲

劇伴は終盤の現代シーン以外はほぼ入らない。思い出のシーンに音のない世界。

劇伴の担当は田中拓人氏だが、主題曲の「Star Sand」は坂本龍一氏が手掛けている。

こんなところでも『戦メリ』の香り。

悲惨な体験を経て、思い出に替え、意志を持って運命を受け入れる背景を彩る。美しい。

織田梨沙の初主演作

織田梨沙さんは大友監督の『秘密 THE TOP SECRET』で初見で……正直セリフ回しがあまり上手いとは思えず、でも不思議な存在感が強烈に記憶に焼きついたのだけど。
 『秘密』織田梨沙

この作品ではアメリカ帰りの役柄だったので、ものすごくそれが合っていた。(そして英語がものすごく上手かった帰国子女)

今回は16歳の情熱的で純真な少女を熱演。美しかった。

国より大事なものはない

ベトナム戦争への反発から国を出たロジャー・パルバースにとって、「戦時に戦わないという裏切り」は生涯のテーマらしい。

平和を願う事は悪なのか。

全体よりも個人の愛を求めてはいけないのか。

それが描かれる。

「美しい戦時物語」であって、戦争映画や戦争を勉強するための作品ではない。

 
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以下ネタバレ感想

 

「君は生きてくれ。

そうしないとこの洞窟で起きたことが永遠に消えてしまう。」

と、岩淵は言ったという。

 
「この洞窟で起きたこと」

とは、平和を愛して脱走した者たちが「常識」に殺されてしまったこと。

 
「人に痛みを与えない。
そういうことができれば人間は本当に幸せ。」

そういう本当に本当に優しいボブさんと、岩淵さんの存在を伝えたくて、洋海は日記を書いた。

疑問に思われたくて、わざわざボールペンで。(先生、気づきなさいよ(笑))

正直、現代パートは要らないのではないかと思っていたのだけれども、現代に「伝える」のが目的だから無くてはならなかったのかな。

 
しかし、この結末は、私には少し優し過ぎた。
 
「戦時に戦わないのは逃げなのか」

は、逃げてもいいんだよ、と背中をさすってあげたい気持ちにもなるが、「決められた事をやらずに自由に生きてもいいのか」と聞かれれば、事と次第によっては自分勝手にも繋がる。

それは最終的には「自分の自由のためならば人を殺してもいいのか」にも繋がり、結果、戦争は終わらない……。
 

ボブさんが兄に刺し殺されている間、岩淵はすぐ側で「いつものように自由に瞑想している」ところだった。

これを一体どう受け止めればいいのか。
 

守る事。戦う事。そして自由。

 
保坂に「これは貴女が持っていて」と星砂が詰まった牛乳瓶を渡す洋海。
 
私は、これをどうすれば?

って、言うよね……。

自由にそんな物を渡されても。
 
私には自由という名の呪いにしか見えなかった。少し恐い。

 
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