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『帰ってきたムッソリーニ』観る前に知っておきたい歴史のこと

帰ってきたムッソリーニ

原題 : ~ Sono tornato / I’m Back ~

『帰ってきたムッソリーニ』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: ルカ・ミニエロ
キャスト: マッシモ・ポポリツィオ、フランク・マタノ、ステファニア・ロッカ

日本公開日

公開: 2019年09月20日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年09月11日(試写会)
 

ストーリー概要を見て「帰ってきたヒトラー」イタリア版なんだろうなとは思っていたけれど、思っていたより、ホントに丸っと、まんまだった(笑)

「帰ってきたヒトラー」を見ている方にとっては間違い探しのような感覚に陥るかも知れない。

ドイツ版を事前に見ておく必要はないが(むしろ内容的には無関係)、ムッソリーニの歴史についての説明は全くされずに話が進行するので、ちょっとは知っておいた方がきっと楽しい()と思う。

あらすじ

独裁者ムッソリーニが現代ローマによみがえった!?売れない映像作家が、復活したムッソリーニを偶然カメラに収めたことから、一発逆転をかけたドキュメンタリー映画を思い立つ。
2人でイタリア全土を旅しながらの撮影旅行。そっくりさんだと思った若者が彼にスマホを向けると戸惑いながらも撮影に応じたり、テレビ出演したりと、かつての総統は次第に人気を集めていく。そして再び国を征服しようとするが・・・(Filmarksより引用)

「帰ってきたヒトラー」イタリア独裁者篇

前文にも書いたけれども、ストーリー的にほぼほぼ「帰ってきたヒトラー→ムッソリーニ」なのである。

ストーリー的に、だけではなく、蘇ったムッソリーニ(ここは散々宣伝しているからネタバレではないよね)が、不意打ちの街頭インタビューをしながら旅をする。その映像は本物のドキュメンタリー。…という演出手法までヒトラー版と同じ(笑)

ただ、ヒトラー版とは違い、何だか色々許せる気がしちゃうこと(笑)、インタビューを受けた人々の政治に対する反応が日本人に近いこと(現代イタリアってこんな感じなん……)、ムッソリーニ自身がとても生真面目で頼れる感じがしちゃうこと。

その辺がお国柄の違いかな、と思った。
 

だから、「帰ってきたヒトラー」とは同じことしない方がいいのに……ムッソリーニはたぶんこれやらないだろう、という違和感が何点か。

そして、「とある」ワンシーンにはウルッとした。
これはムッソリーニならではのワンシーン。

そもそもムッソリーニとは

ムッソリーニ自体をよく分からないと笑えもせず、ウルっともできず、違和感も持てないかも知れないな……と思ったので、ストーリーのネタバレにはならない程度に「これだけは知っておいた方が良いだろう」ということを3点だけ。

そもそもファシズムとは

ひと言で言うと「独裁制」のこと。王様でもないのに近代国家に独裁制が許されるなどということは滅多にないはずだが、ムッソリーニの時代、イタリアにはファシスト党一党しか無かった。

ファシスト党は、反対派を弾圧して独裁政治を行った。ただ、虐殺は行っていない(表向きは)。

ムッソリーニの最期

1945年4月28日、ムッソリーニは共産党・パルチザンによって、愛人のクラレッタ・ペタッチらと共に処刑された。遺体は散々なぶりものにされた上、ロレート広場で足首をロープで縛る形で逆さ吊りにされた。

(「ムッソリーニの最期」や「処刑」で検索すると、あまり見たくない画像が出て来たりしてしまうので気をつけて。)

ムッソリーニと人種差別

ムッソリーニにはヒトラーと違って人種差別の思想はない。ヒトラーのユダヤ人迫害については、むしろ軽蔑していたくらい。後年、ホロコーストに協力したのは、イタリアを守るためにはナチスに協力せざるを得なかったからで、国のためである。

ただ黒人に対しては嫌悪感を抱いている。それは、自身が侵略したエチオピア戦争の影響。

歴史を踏まえて見てみると…

ヒトラーが独裁のためにナチスを作ったと考えると、ムッソリーニは国のために独裁政治に走った、と思える部分が大きい。処刑もイタリアが行ったというよりもパルチザンが弾圧された復讐をしたようなもので(裁判も行われず処刑されているので、虐殺に近い)。

もちろん、ファシズムを推奨するわけではないが、街頭インタビューを見ていると人々が日本人と同じような不満を言っているので、頼りになる独裁者なら頼りにならない多党制より良いんじゃねと、ついつい思ってしまう危うさはある。
 
また、上に書いたような歴史を踏まえると、お〇〇〇〇と出会うシーンは人種が違うんじゃないかな……とか、「ヒトラー」でも衝撃だったあのシーンはムッソリーニならやらないんじゃないかな……などと、そういう点は違和感。
 

結局、ムッソリーニって日本人にとってはヒトラーほど悪のイメージはないんだよね……と思っていたけれど、試写会場が靖国神社のすぐ側だったので、帰り道、鳥居を見ながらちょっと複雑な気分にはなった。

「いだてん」オリンピックストーリー

ムッソリーニには、1940年幻の東京オリンピック誘致の際、日本に開催地を譲ってくれたという史実の繋がりがある。

これは、2019年度の大河ドラマ「いだてん」の中でも放送されたばかりのエピソード。

NHK大河ドラマ【いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)】第33回「仁義なき戦い」感想
1940年のオリンピック招致をめぐり互いに激しく争う東京とローマ。治五郎(役所広司)は田畑(阿部サダヲ)らをイ…

試写会終了後のトークイベントで、外語大の先生が「いだてん」の話をしてくれたのが嬉しかったなぁ。一人で盛り上がった!!(笑)

そんな歴史があるから、ますます嫌いになれなくなっちゃうね。
 

「帰ってきたヒトラー」を観た方は、違いや違和感を楽しんで。観ていない方はブラックな笑いを楽し……めるかどうかは分からないけれども、ぜひ。

 


以下ネタバレ感想

 

上に散々書いたけれども、原案が「帰ってきたヒトラー」なのであって、エピソードをそのまま使わなくても良かったのではないだろうか。

ムッソリーニは、セカセカと犬を撃たない気がするし、ユダヤ人を傷つけたなら詫びそうな気がするのだった。(たぶん、ここは黒色人種に変えた方が違和感が無かったと思う(エチオピア戦争で毒ガス攻撃しているし……))

 
歴史上で大多数から「最悪」と言われる独裁者は、やはり虐殺を行っている人物だろうと考える。

そういう意味で、やはりヒトラーはどこから見ても巨悪なのだ。

だからこそ……

ヒトラーは滅び、ムッソリーニはこれから何をやらかすのか分からないけれども、現代で生き延びる。

現代人がファシズムを歓迎してしまうような今の政治、どうよ。……そういう結末はある意味「ヒトラー」よりも恐いな。
 

自分と一緒に銃殺され吊るされたクラレッタ・ペタッチの画像を見て懐かしみ、愛しげに「私のせいで死んだ」と泣くひとコマ。

あれこそがムッソリーニ題材の痛みと優しさの描写。もらい泣きした。

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