『おいしい家族』生きてさえいればなんでもいい

おいしい家族

映画『おいしい家族』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: ふくだももこ
キャスト: 松本穂香、板尾創路、浜野謙太、笠松将、モトーラ世理奈、三河悠冴、栁俊太郎

日本公開日

公開: 2019年09月20日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年07月08日(試写会)

 

久しぶりに実家に帰ったらお父さんがお母さんになっていた……って、そりゃ主人公みたいに反発心しか抱かない。

身の回りがマイノリティになりすぎてマジョリティだったはずの自分の方がマイノリティになるという複雑さ。

ヒロインの気持ちに寄り添える展開。

あらすじ

主人公・橙花は東京で働くキャリアウーマン。母の三回忌に実家の離島に帰ると、なぜか父・青治(せいじ)が母の服を着て生活していることを知る。びっくりする橙花を気にせず父は続けて「この人と家族になる」とお調子者の居候・和生(かずお)を紹介。状況をのみこめない橙花と、人の個性を受け入れるおおらかな島の住人達との暮らしを、ときにクスッと、ときにハートフルに描いた物語…(Filmarksより引用)

「家族」と「常識」

映画やドラマでは近年ありがちな「普通ってなに」「常識ってなに」「家族ってなに」……という問題提起を内包する作品。

ホンワカ……を目指しているのだろうけれど、正直、最初の方はヒロインに同情してしまって全くホンワカ出来なかった(笑)

母はすでに亡くなっている。ヒロインは実家にご無沙汰状態。実家に久しぶりに帰ってみたら違和感どころじゃないほどの変化があった。……父が母になっていた

そりゃハラも立つし、ガーガー言いたくもなるよね。だから、すっかりヒロインの目線で見てしまった。おかげさまで、とても気持ちに寄り添えた(笑)

 
しかし、この作品はヒロインに寄り添い続けさせてはくれない。ヒロインはなんとかして状況を「常識」に戻そうとするが、なぜか島ではみんながヒロインの中の「非常識」を受け入れていて、誰も違和感を持っていない。

これって、ちょっとした『彼岸島』状態である(笑)

ゾンビになっちゃった方が気が楽ってこともあるよね……。

ご無沙汰が悪い

結局、実家も島もどうしてこんなに変ってしまったのかというと、ヒロイン・橙花がご無沙汰しずきでいるから……という部分が個人的に痛い。

「忙しいから連絡取れなかった」「便りが無いのは元気な証拠」とはよく言うが、結局、放り出した人間には発言権がないんだよね。(自戒)

父が母になるまでの間には、母が亡くなってから様々な葛藤があり、そしてこうなった。

寂しさに背を向けたヒロインを、それでも迎え入れてくれる優しい家族(家族なのか家族なんだな……)。

 
ふくだももこ監督ご自身が血の繋がらない家族の中で温かく生きてきた身の上でいらっしゃるという事で、作品にそれを反映させているのは伝わった。

世代によって、自分の身の上によって、さまざま考えさせられる話ではある。そして、決して、責めない話でもある。

思ったほどメシテロじゃない

メシテロ映画ではあったけれども、もっとメシテロ映画だと予想していたので、もう少しお料理を見せてくれても良かった。(でも偶然家におはぎがあったので帰ってからガツガツ食べました。そうなるよねーー)

食と衣服にスポットを当てた話なのだから、もっと「おいしい」であって欲しかったな。

メイクももっと本格的に見たかった。

松本穂香さんと板尾さんと笠松将さんがメッチャ良い

松本穂香さん、大人になりきれない女の役、すごくイイ。服も好き。

あと、板尾さんのスタイルがすごくイイ(笑)

笠松将さんはドラマでは悪い人が多いので(笑)こんな可愛い役は新鮮だった。

キャスト的に、見て幸せになれる映画だった。

 


以下ネタバレ感想

 

ファンタジーだな……ファンタジーだよ……。

とは、どうしても思ってしまう。

田舎はホンワカしていて景色が良くて温かい、とよく言われているけれど、まぁ、マイノリティは暮らし辛い環境だろうな……都会より遥かに。

 
私には橙花がちょっと気の毒になって来てしまったんだね。

久々に戻った実家が変わってしまうって、とても寂しいことなのね。どんなにご無沙汰している自分の方が悪いとはいえ。

橙花も自分で言っていた通り、これでは「お父さんまで失った状態」になってしまう。私だったら凄くイヤだ。凄くイヤだと思ってしまうところが、橙花と同じくらい子供脳なんだろうけれど。

 
お母さんの服を着たらおはぎが上手く作れるようになった、というお父さん。

お父さんは寂しかったんだよね。

 
再婚相手が男だっただけ。

変わった妹が出来ただけ。

何を食べても胃の中に入れば同じように、人間もいつかは死んだら同じ土になるのだから……

そう考えたら、深く悩む必要もないのかも知れない。

「家族」に悩む誰もがきっと、少し、気が軽くなる。

 

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