『この道』この道はどの道でもいい

この道

映画『この道』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: 佐々部清
キャスト: 大森南朋、AKIRA、貫地谷しほり、松本若菜、柳沢慎吾、羽田美智子、松重豊、由紀さおり、安田祥子、小島藤子、津田寛治、升毅、稲葉友、伊嵜充則、佐々木一平

日本公開日

公開: 2019年01月05日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年1月9日

 
これを観に行く少し前に赤ちゃんを預かる機会があり、寝入りぐずりをあやすために何か子守唄を……と考えた。

少ないレパートリーの中から自然と浮かんできたのが『ゆりかごのうた』だった。
 

劇中でそれが口ずさまれた時、子どもの温かい丸ぁるいフワフワの身体を抱いていた記憶がまざまざと蘇ってきて、少し泣いた。

そうだ。これも北原白秋だった。
なんて美しくて懐かしいリズム。

ねんねこ ねんねこ ねんねこよ……

あらすじ

九州柳川から文学を志し上京した北原白秋。隣家の美人妻・俊子に気もそぞろ。逢瀬を俊子の夫に見つかり姦通罪で入獄。白秋の才能を眠らすまいと与謝野夫妻が奔走し釈放されるが、恩も顧みずのうのうと俊子と結婚。その刹那、俊子は家出、白秋は入水自殺を図るが蟹に足を噛まれ断念。そんなおバカな白秋と洋行帰りの音楽家・山田耕作に鈴木三重吉は童謡創作の白羽の矢を立てる。才能がぶつかり反目する二人だが、関東大震災の惨状…(Filmarksより引用)

このレビューは短感です。歴史ものなので、ネタバレには特に配慮していません。

全般的に北原白秋の伝記

北原白秋は明治生まれの詩人。生まれは福岡県柳川市だが、19の時に早稲田大学へ入るため上京し、実家の親も呼んで長く東京に暮らしている。

作中では独り暮らしのようになっていたけれども、隣の人妻とあんなことになっていた時期は原宿で両親と弟妹と共に暮らしており、そう考えると本当に「すごく」「ダメな人」。

 
映画ではそんな風に親兄弟を端折り、結婚離婚のあれこれを端折り、流れるようなスピードで白秋の半生を追っている。

テーマが『この道』秘話……白秋と山田耕作物語ということだから、これはこれで良いと思った。

北原白秋とは|北原白秋記念館

音楽映画としての側面

序盤の子どもの合唱からウルウルする。音楽題材映画はそれだけでもう50%は上がる。

 
それだけに、個人的には劇伴はもっと全般的に山田耕作の楽曲に寄せてほしい(何ならオール耕作アレンジでよかったのに……)と思ったし、EDの歌声は時代物テーマの作品には合わないと思ってしまったのだった。

音楽を楽しむ作品として映画自体の音楽作りはもったいなかった。

人間物語としての側面

南朋さんの無邪気でクズで才能あふれる白秋が素晴らしい 。AKIRAさんも上手くなったなぁって……。雰囲気はとても出ていた(カッコ良すぎだけれど)。

耕作の思い出話から始まるのに、意外と耕作の出番が遅く。もっと2人の物語にすればよかったのに。あるいは、別に耕作と2人の物語にしなくても良かったんじゃないかとすら思える。

ちょっと「2人の」エピソードが足らなかった。

関東大震災の描き方など歴史伝記ものとしても薄いので、ぼやけた印象になったことは否めない。

 

それでも、やはり、日本の童謡っていいなぁ。詩っていいなぁ。日本の風景も四季もいいなぁ。

……と、日本を振り返り、好きになる。そんな作品ではあった。音楽と文学は偉大。

 

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