真実
原題 : ~ La Vérité / The Truth About Catherine ~
作品情報
監督・キャスト
監督: 是枝裕和
キャスト: カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ・グルニエ、マノン・クラヴェル、アラン・リボル、クリスチャン・クラエ、ロジェ・ヴァン・オール
日本公開日
公開: 2019年10月11日
レビュー
☆☆☆☆
劇場観賞: 2019年10月16日
親子関係をユーモラスに静かに描く、極めて真実味のあるヒューマンドラマ。このまま日本キャストにしても違和感なく行きそうなほど家族、家族の物語。(カトリーヌ・ドヌーヴの位置は樹木希林さんなんだろうな(笑))
全世界的に子どもは親の子育てを批判したく、親は子どもの気持ちを汲めず、口が悪い人は理解されず、驕った人は孤独になる……そして人の記憶なんて不確かな物。という事。
これも子育てが終わった世代ほど響くストーリーだと思った。
あらすじ
国民的大女優ファビエンヌが自伝本【真実】を出版。アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール、テレビ俳優の娘婿ハンク、ふたりの娘のシャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、そして長年の秘書……お祝いと称して、集まった家族の気がかりはただ1つ。「一体彼女はなにを綴ったのか?」そしてこの自伝は、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く「真実」をも露わにしていき―…(Filmarksより引用)
家族のドラマ
近年、日本だけではなくて海外映画でも親子や家族確執の物語が増えているような気がする。今年だけでも何本見ただろう。『ビューティフル・ボーイ』『ベン・イズ・バック』『長いお別れ』『おいしい家族』『誰もがそれを知っている』『台風家族』『ひとよ』……ホラー関係も元を辿ると家族の問題だったりするものがあるので、きっともっとあるよね。
人間関係の根本が家族にあったり、そもそも人の人格そのものも子育てが影響したりするのだから、確執ができるのもやむを得ない。
友達や近所づきあいならば、嫌なら切ってしまうことも出来る。けれども絶対切れない関係である「家族」そして「親子」。恨みを持てば根は深い。
恨みを買いたくなければ謙虚に生きるしかないが、言いたいことも言えないこんな世の中で、もっと自由に生きたいではないか。
で、自由に生きてきた老女優の自伝が嘘ばかりだとニューヨークからわざわざ文句を言いに来る一人娘。母親も精神的には駄々っ子なので、その娘も根底ではなかなかのアダルトチルドレン。未だに反抗期まっただ中。女優の自伝など放っておけばいいものを嘘を書かれては悔しいから放っておけない。
リュミールのセリフの中には共感できる部分も多くて、自分の実家に対する思いが掘り起こされることしきり……ちょっと痛い。
是枝監督作品にしては
『8月の家族たち』のようなものを想定して見ていたけれども、是枝監督は優しかった(笑)
もっとも、是枝監督が描く「家族」は疑似だろうと本物だろうといつも優しいのだけれど。
今回は特に「今どきなら普通に多そうな」家族の物語かも。
大きな事件を期待するのではなくて、緑豊かなホームドラマをジックリ見るつもりで行くといいと思う。
カトリーヌ・ドヌーヴ
子どもの頃から、こんなに美しい人がこの世に居るんだなぁ……と思いながら見ていた女優さんの1人。
御年75歳。老けて当然。しかし貫禄と年齢なりの美貌は衰えず。
この人の私生活がどんなものなのかは分からないが、ファビエンヌのような女優だとしてもおかしくはない。
セリフが抜ける事もあるだろうし、老いを受け入れるのが難しい時もあるだろうし、若い女優に抜かされる気分になりたくないこともあるだろう。
この役、よく受けて下さったなぁと思う。女優として、現段階の自分と被るような役は嫌だろうから。いや、それを受け入れられる度量はやはりファビエンヌとはだいぶ違うな。
キャストはジュリエット・ビノシュも等身大の「こんな娘なのかも」という演技。リアリティに溢れている。
気になったのがマノン役の女優さん。とてもチャーミングで、演技シーンに見入ってしまった。本名もマノンさんというのね…マノン・クラヴェルさん。
劇中劇の時は女優として凛とした表情。オフの時の可愛らしさ。
最初、デイジー・リドリーかと思っちゃった。ちょっと似ている(気がする)。
人生の閉め方
人の記憶は曖昧で、子どもは特に「最近の親」のことしか記憶にない。幼い頃、一生懸命世話してやったり遊んでやったりしても、大人になってから飲んだくれて寝ていたらその記憶が「親の姿」の全てだ。なんだか損(笑)
人間は悪いことが記憶に残り勝ちで良いことはあまり覚えていないという一面もある。
最後に孤独になるか家族に囲まれて過ごせるかは、晩年の心がけ次第ということで……辛いね、人間って。
そんなことを色々と考えさせてくれる良い話だった。
後味はユーモアと温かさ。
以下ネタバレ感想
どんな内容であれ、映画にはポエムが必要……とは常々思っていること。それを作り上げているスタッフや役者さんは素晴らしい。
劇中劇の「宇宙から時々帰って来る母親」がファビエンヌとリンクしているという作りが面白かった。
私たちは映画を見ながら自らの人生を振り返ったりするわけだが、女優も映画に出演しながら自らの人生を反省することもあるのかしら。
ラストの「嘘」は、女優にはバレていると思うけれども。なんせ魔女なのだから。トゥルリン……!
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