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『華氏 119』アメリカンドリームは終わった

華氏 119

原題 : ~ Fahrenheit 11/9 ~

『華氏119』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: マイケル・ムーア
キャスト: マイケル・ムーア、ドナルド・トランプ

日本公開日

公開: 2018年11月02日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2018年11月15日

 

ドキュメント作品につき、このレビューはネタバレを含みます。

 
「華氏」とは日本や他国で使われている温度の測り方(摂氏)ではなく、独特の面倒な基準がある。

華氏(かし、英語: degree Fahrenheit、記号: °F)は、数種ある温度のうちのひとつであり、ケルビンの1.8分の1 である。真水の凝固点を32カ氏温度、沸騰点を212カ氏温度とし、その間を180等分して1カ氏度としたことに由来する。(by Wikipedia)

アメリカでは「華氏」が使われいる。

これは、アメリカの物語。

けれども、世界の問題。もちろん、日本も。

◆あらすじ
2016 年 11 月9 日、トランプは米国大統領選の勝利を宣言-その日、米国ひいては世界の終りは始まった?!
なぜこうなった?どうしたら止められる?ムーア節炸裂!宿命の戦いに手に汗にぎるリアル・エンターテイメント!(Filmarksより引用)

 

タイトル「華氏 119」の意味

タイトルは、ドナルド・トランプの大統領当選が確定した2016年11月9日アメリカ大統領選に由来する。

また、ジョージ・ブッシュ政権を批判した監督自身の映画『華氏911』(この「911」は、あの「9.11」のこと)をもじったタイトルでもあるのは一目瞭然。
 

前1/5弱はトランプ大悪口大会

始めに申しあげておくと、この映画は決してトランプの悪口を2時間流し続ける作品ではなく、「トランプが[当選してしまった]アメリカ選挙の仕組みや選挙における現状」を語る作品だ。

それでも、やはり一方向から見たもので政治を解った気になるのは危険なことなので、なるべく「ただの作品」として見ようと心掛けていると、前1/5は悪口大会に思えるのだった。
 
議員たちのセクハラニュースなど笑えるように編集はされているのだが、個人的には娘のイヴァンカに対するセクハラもどき(真実は分らない)の描写は親として、ちょっと気持ち悪い。
 
私の中のアントワネットが法廷で訴え始める……。
 母たるものに加えられたこのような下劣な告発に答えることを自然が拒むのです
 
正直、始めの方にほんの何分か差し挟まれたあの描写のおかげで、結構、興ざめしたのは事実。

アメリカの選挙の仕組み

悪口大会だなぁ……と思いつつ見ていると、いつの間にか映像は「しかし、このアメリカをトランプ政権が作り上げたわけではなく、アメリカがトランプ政権を作りあげたのだ」という様相に変わって来る。
 

ヒラリー・クリントンが圧倒的優勢だと言われていたあの選挙で、なぜトランプが勝ったのか。マイケル・ムーアは始めからトランプが勝つ事を予想していたという。
 
それは、もちろんトランプを応援していたからではなく、アメリカ合衆国の選挙の仕組みによるもの。
 

……という話を監督自身のインタビューやナレーション、ニュース映像、イメージ映像などを繋いで解りやすく語っていく。

 
そもそも、対抗馬だったヒラリー・クリントン自身がメール問題で人気を落としていたのは日本のニュースでも伝わっていたところ。そして、それよりそもそも、このヒラリーかトランプを選ばなければならない選挙自体が国民のやる気を失わせていた事実。これも日本のニュースでも伝わっていた。
 
映画は日本のニュースがお伝えしない衝撃の事実と候補選出の仕組みを説明していた。
 
監督が推しているバーニー・サンダースが民主党の候補として落選させられた話。
 
落胆した人々が選挙に行かなかった話。
 

無投票が増えたせいでトランプは当選した。

民主党上げ映画でもなくオバマも……

つまり単なる共和党下げ映画ではなく、民主党内の選挙から不正まで批判している。ヒラリーのことも良く描かれていないし、オバマも批判の対象にされている。
 

ミシガン州フリントの汚水事件会見で、オバマが汚染水を飲んだというニュースは、讃えられる方向だと思っていたが、「飲んでいなかった」「唇を濡らしだだけ」
 『華氏119』感想 オバマ
 

ここでも有権者をまたガッカリさせるのだった。
 

このフリント汚染水事件はこの映画の中で、フロリダ州高校銃乱射事件と共にかなり長い時間を割いている。

フロリダ州高校銃乱射事件後の銃規制運動

【フロリダ高校乱射】 別の学校乱射犯、銃規制呼びかける高校生を称賛
2004年にショットガンを自分の学校に持ち込んだジョン・ロマーノ受刑者は、銃規制の強化を呼びかける生徒たちとその訴えを称賛した。

トランプは銃権利擁護派であり、事件後「教師も銃を持って対抗すればいい」と発言している。
 

この事件によって起きた高校生による銃規制運動。終盤は国民が自ら運動を起こして政治に関心を持ち、大きなうねりを作るアメリカが描かれる。

まるでこの映画の続きのように、2018年11月6日中間選挙で民主党が8年ぶりの下院勝利を掴んだ。

情熱を持って立候補し、史上最年少で下院に当選したコルテス、ムスリムとして初当選したラシダ・タリーブは劇中にも登場している。

ヒトラーとトランプの親和性描写が恐い

ヒトラーが初めてドイツ国の首相になった時のユーモアや人気ぶり。次第に姿を現す独裁性。差別意識。ナチス一党に誘導して行った仕組み……。これをトランプの現在と照らし合わせ、ユーモラスにスピーディに映像として繋いでいく様は、少し恐くなった。

 
いや……トランプが恐いというよりも、マイケル・ムーアが恐い。

 
こんなにも雄弁に何かを推したり批判したり説明する映像力は、むしろ、洗脳に役立つようにすら感じてしまった。

これを見ていたら、ついトランプが本当にヒトラーのように見えてくる。
 
1本の映画としては、すごい。上手い。
 
けれども、この力に圧倒されて何かを信じ込んだら恐い。

参加することだ

随所で笑い、怒りを感じ、驚き、そしてフロリダ州高校銃乱射事件の映像と高校生たちの演説に泣いた。
 
ほんと。映画とは無関係に、銃はなくせよと思うわ。
 
とにかく、声を上げることををあきらめず選挙に参加しよう。うねりを作ろう。
 
それが熱く伝わる作品。

 

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