『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』普通じゃないから世界は素晴らしい

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

原題 : ~ THE IMITATION GAME ~

作品情報

監督・キャスト

監督: モルテン・ティルドゥム
キャスト: ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、ロリー・キニア、アレン・リーチ、マシュー・ビアード、チャールズ・ダンス、マーク・ストロング

日本公開日

公開: 2015年3月13日

受賞

第87回 アカデミー賞脚色賞受賞 他、トロント国際映画祭・ハリウッド映画賞など多数受賞&ノミネート。

レビュー

☆☆☆☆

2015年3月30日。劇場観賞

 
第二次世界大戦は近代史中の近代史だ。体験者はご存命だし、写真どころか動画映像まで残されている。にも関わらず、各国から隠されていた黒歴史が今だにボロボロ出てくる。

フランス政府は1995年になってヴィシー政権下ホロコーストの責任を認めた。

ロシアのプーチン首相が「カティンの森事件」をソ連の責任だと認めたのは2008年の事。

多くの戦争犯罪がたぶん21世紀に入ってもまだ闇の中である。

イギリス政府がアラン・チューリングに公式に謝罪したのは2009年、正式に恩赦が行われたのは2013年。

現在、私たちが使用している「コンピューター」の父ともいえる人が「こんな事」でその功績を闇に葬られていたなんて……。

あらすじ

第二次世界大戦時、ドイツ軍が誇った世界最強の暗号<エニグマ>。 世界の運命は、解読不可能と言われた暗号に挑んだ、一人の天才数学者アラン・チューリングに託された。 英国政府が50年以上隠し続けた、一人の天才の真実の物語。時代に翻弄された男の秘密と数奇な人生とは…。(イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(字幕版)(Amazon)より引用)

このレビューは短感です。後ほど追記する可能性はあります。

コンピューターの父、アラン・チューリングの伝記的映画

第二次世界大戦下、イギリスは、ナチスドイツが使用していた暗号機「エニグマ」(Enigma)の解読に悩まされていた。その解読チームとして呼ばれたのが数学者のアラン・チューリングである。

チューリングは解読機「クリストファー」の設計を開始するも、軍は予算を出し渋る。同僚はチューリングの解読機に非協力的。
 

困難な状況の中、人間関係の形成に難があるチューリングが成功に向かっていく……その状況、その心理、その幸福度……起伏の激しさにハラハラしたりウルウルしたりする。

兵隊として戦地へ行ったわけではないが、解読チームのオフィスはチューリングの戦場。

暗号解読を「考える」人工知能の初期の初期。ああ、こんなものを作っていたのか……という様子を垣間見るトリビア的描写も面白い。

禍福は糾える縄の如し

人と交わる事が出来ず、孤高の天才であるがゆえに人を見下し、ますます孤独を深めていく……。いや、たぶん、彼は初めは孤独ではなかったと思う。「孤独ではない状態」を知らなければ人は孤独になどならないのだから。

成功すれば失敗がやってくる、幸福感が高まれば不幸がやってくる。この繰り返しに、何度も胸を突かれる。可哀想で可哀想で。不器用なチューリングが愛しくて愛しくて。

偉業を潰す悪法

イングランドでは1967年まで同性愛は重罪だった。根本は宗教的な理念に基づくものだけれども、こんな法律のために人生を全て奪われた人たちが多数存在した。

天才数学者であり、国のために尽くし、歴史を作ったというのに。

もっと評価されて欲しい

ものすごく多くの賞にノミネートされているのだから充分といえば充分なのかも知れないけれども、この切なくも美しい作品が多くの受賞を逃しているのは何だか納得できなくて。

生きている間に報われなかったアランそのもののように思えて切ない。

個人的には、87回アカデミー賞作品賞ノミネートの中でこれが一番好きかも……。

 


以下ネタバレ感想

 

不器用な人が救われていく話に弱くて。

救われたのに、また孤独になって行く話には尚更弱くて。

ジョーンが間に入ってくれて、人間関係も仕事も順調に進んで行ったのに、結局は何もかもふいにする。「性愛」が全てを狂わせたようにすら思える。
 

偉業を成し遂げたのに結局「仲間とは会わなかったこと」にされ、仕事の履歴は消され、何をやっていたのか誰にも言えないまま性犯罪者にされる。

廃人のような人生の終わり。

 
「誰も予想しなかった人物が誰も想像しなかった偉業を成し遂げる」

 
生きている内に評価を受けられるようにさせてあげたかった。

このドラマの中だけでも、彼の孤独と成し遂げた事を理解してくれる人がいてくれて良かった。

 


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