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『ある町の高い煙突』日立鉱山煙害事件の歴史

ある町の高い煙突

映画『ある町の高い煙突』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: 松村克弥
キャスト: 井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、吉川晃司、仲代達矢、大和田伸也、小林綾子、渡辺裕之、螢雪次朗、六平直政、伊嵜充則、大和田健介

日本公開日

公開: 2019年06月22日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年6月24日

 
明治時代、茨城県で起きた日立鉱山の鉱害問題について、どう解決に向かったかという史実ベースの物語。

その歴史に興味があって観賞したが、全体的には丈長な印象。繰り返される村民の怒号怒号怒号が辛い…。

このレビューは短感です。史実ベースなので特にネタバレには配慮していません。

あらすじ

1910年、茨城県久慈郡入四間の裕福な地主の家に生まれ育った関根三郎はある日、隣村の日立鉱山による煙害が発生しているという話を耳にする。村の権力者である三郎の祖父・兵馬は事態を重く見て、分家の恒吉を連れて鉱山会社へ掛け合いに行くが、「補償はするが煙害は我慢してくれ」と一方的。受験を控えた三郎を心配した兵馬はある夜、30年前に村長として採掘権を許可したのは自分だと告げ、その5日後に亡くなってしまう…(Filmarksより引用)

日本の鉱山鉱害事件

以前、NHKの土曜ドラマで放映された『足尾から来た女』は、上手い演出と上手い役者で食い入るように見てしまう名作だった。

【足尾から来た女】前編 感想
足尾から来た女          明治初期から始まった日本で初めての公害事件といわれる「足尾鉱毒事件」を描いた…

このドラマで描かれていたのは栃木の足尾銅山で、日本で初の鉱毒公害といわれている。

いくつかの村は鉱毒のせいで生活が成り立たなくなり、強制廃村。それでも国は銅山が大事だ。

始めの内は報道を規制する方向で公害を隠していたが、徐々に話は世間に広まって最終的には公害認定されている。しかし認定されたのは1974年(昭和49年)の話。鉱毒被害に遭った人々が反対運動を始めたのは1890年(明治23年)。

それほど長い間、多くの農民が山を枯らされ、洪水に翻弄させられ、田畑を潰され、わずかな金で村から追い出され、苦しんだことになる。

足尾銅山の光と影~日本一の鉱都の歴史を歩む~
~足尾銅山の光と影~日本一の鉱都の歴史を歩む~~ 栃木県観光物産協会がお届けする公式観光サイト「とちぎ旅ネット」。観光スポット、温泉、宿、グルメ、お土産、お祭りなど、旅のスポット情報を探せます。

日立鉱山の大煙突

そんな中、日立鉱山は、鉱山主と農民が根気よく交渉を続け、煙害を減少させるための研究と努力を怠らず、この作品のテーマである「大煙突」へと辿り着いたのである。

鉱害事件の事態収拾のために沈められた村 – 國學院大學
國學院大學公式サイト。渋谷と横浜・たまプラーザにキャンパス。國學院大學では、日本を学び、世界に貢献できる人材育成を目指しています。

原作者の新田次郎は、主人公・関根三郎のモデルである関右馬允に直接取材してこの作品を書いている。

この時代に大きな権力に屈せず、知恵と思いやりで解決に向かう人間力、すごくない

ということで、楽しみに観たのだけれど。

冷静に、合理的に

鉱毒に侵されていく生活を何とかしたくて「一揆」を提案する村人に「冷静に、合理的に」交渉しようと提案する若き入四間煙害対策委員長・三郎。

一校への進学をあきらめて村へ残ったのだから学歴も中学止まりなわけで、この理解力と学力は本当に秀才だったのだなぁと。

秀才にして交渉術に長け「まだ若いのに可哀想」などという感情が一切湧かないクールさ。実在の関右馬允もこんな人だったのだろうか。

 
これを演じた井手麻渡さんの背筋が伸びた良家の坊っちゃんらしい佇まいがとても良かった。

無名塾の方だそうで、(ああ、なるほど……それで仲代達矢さん)先が楽しみな若手役者さん。

1本の映画としての評価は…

私はこの映画が決して嫌いではないし、この題材に興味惹かれたから観たわけだが、1本の映画としては、ドラマとしても絵作りも少し残念な気はしている。

(物語冒頭の、実際の過去映像を使った史実説明が紙芝居のような静止画の長映しで……その時点でもう嫌な予感でいっぱいになった……)

見終わった感想は「公民館で見る地元制作ドキュメントみたい」な印象。

 
題材は興味深く面白いものだし、この時代にこんなに熱い男たちの物語があったと思ったら捨ててはおけない話なはずだか、印象に残っているのは村人の怒号ばかり。

TBS日曜ドラマやNHKのご当地ドラマで放映してくれた方が見応えのあるものが出来そう。

多くの人にこの歴史に触れてほしいとは思うので、この映画の存在を知ってほしいし見てほしい、とは思う……思うけれども、1本の作品としては、もう少し物語性が欲しかった。

本当に利益度外視で、歴史教材の1本として公民館や学校で上映してもらえるといいな。

(その際は、千穂さんのエピソードは削ってもいいかな……)

 

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★前田有一の超映画批評★
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