『真夏の方程式』全てを知って選択する道

真夏の方程式 

     

 

監督: 西谷弘   
出演: 福山雅治、吉高由里子、北村一輝、杏、山崎光、塩見三省、白竜、風吹ジュン、前田吟、豊嶋花、青木珠菜、田中哲司、神保悟志、根岸季衣、永島敏行
公開: 2013年6月29日

2013年7月3日。劇場観賞。

原作は東野圭吾氏の探偵ガリレオシリーズ、同名小説。
フジテレビ系で放送されていた『ガリレオ』『ガリレオ2』の劇場版であり、映画としては2008年の『容疑者Xの献身』に続く第2弾となる。

2013年4月期に放送された連続ドラマの『ガリレオ2』があまりの出来だったので…ドラマを見ていた者としては不安がぬぐえなかったこの作品。

いい話だった。久しぶりにガリレオらしい人間の心の奥を掘り起こすストーリーを見る事が出来た。

『容疑者Xの献身』では、主役はほぼ石神に譲った形で謎を解いていくことに専念した湯川先生。
今回はガッツリ主役です。

玻璃ヶ浦で行われた海底鉱物資源の開発計画説明会に物理学者として参加した湯川先生は説明会の間、「緑岩荘」という旅館へ宿泊する。「緑岩荘」の娘・成実は地元の開発計画反対派の1人だった。
湯川先生が宿泊している間に同じく「緑岩荘」の客であった塚原正次が崖上から海岸へ転落死する事故が起こる。
警察の調べが進む内に、これは単なる事故ではない事が発覚。塚原は警視庁の元刑事であり、開発計画説明会以外の目的で玻璃ヶ浦へ来ていた事が解る。

例によって岸谷刑事のゴリ押しで捜査に関わる事になった湯川先生。

湯川先生が謎を解いていけばいくほど、本来は善良なはずの人たちの傷があらわになって行く構図が切ない…。

「ある人の人生が歪められる」のは…「ある人」とは、そういう事かと。

『ガリレオ2』のおかげで、ガリレオはもういいよ、と思っちゃった人は、これは安心して見に行けばいいと思う。
ドラマシリーズで不評だった女刑事はここではガツガツ発言するほど出番はないし、ドラマの時と違って喋るだけではなくきちんと働いているので好感度上がると思います(たぶん)
   

この旅で、湯川先生には珍しい小さな「友達」が出来る。
  

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全てを知った上で何を選択するか考える。

この作品の中で何度か口に出すこの言葉。
恐らく数式で正しい方向をキッパリ決めてきたはずの湯川先生自身も「選択」する事になる。

水晶が海底に見えると言われるほどに美しい海と、情緒的な思い出と、何が正しいのか誰にも決められない「選択」。

切ない物語。

『容疑者Xの献身』ほどの名作ではないかも知れないが、キャストの熱演と素晴らしい風景と共に、今まで見なかった湯川先生の包み込むような優しい一面をジンワリ感じ取る事が出来る秀作になっている。

最後の『ガリレオ』です。
今までこの作品と付き合ってきたファンの方はぜひ。

【関連記事】
・『容疑者Xの献身』感想
・『ガリレオ2』感想 ドラマ@見取り八段・実0段

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


この事件は難しい。選択を誤ると、ある人の人生が歪められる。

「ある人」は、娘の罪を被って刑に服し、秘密を墓場まで持って行こうとしている余命わずかな仙波の事かと思っていた。

人生を選択する瞬間はたくさんある。
みんなが、成実を守ろうとした。
成美の罪を隠すために沈黙を守り続けた。

成美自身も苦しかったはずだ。
だから、そんな自分を癒してくれた実父の仙波の故郷である玻璃ヶ浦を守る事に拘った。

恐らく…塚原元刑事も「選択」した上でそっとしておいてくれた気がするのだ。
真実だけが幸せではないと、塚原も解っていたはず。

しかし、重治は塚原を殺してしまった。
事件は事故として封印される。

ここにまさか恭平が関わっていたとは思わなかった。
無邪気に伯父のいう通り煙突に蓋をした恭平。

「人生が歪められる」のは恭平だったんだね…。

しかし、恭平は賢い子だ。自分が何をしたのかすでに気づいてしまっている。

楽しかった花火の思い出は、恐らくこの先の人生で彼にとってトラウマに変わる。

けれども、湯川先生は恭平を放りっぱなしにはしないと約束してくれた。

その重荷は一緒に背負う。何が正しいか一緒に考える。

君は1人じゃない。

湯川先生と一緒に見た美しい海底の思い出が恭平の夏休みの思い出。
いっぱい悩んだ末、きっと彼はいつか帝都大学の湯川研究室にやってくる。

それまで、この少年の成長が健やかでありますように…そう願ってやまない切ないラスト。

「真夏の方程式」公式サイト

 

 

 

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奈可久う子(くう)

◆ドラマ・映画 エンタメ系ライター&ブロガー。◆ハウツーサイトやリクルート・キュレーションサイトなどで映画紹介のライターしておりました。(お仕事はいつでも有り難くお受けします)

◆映画の評点はあくまでも私感です。(平均が2.5で1と5は滅多に付けていません)

◆戦争とホロコーストテーマの作品観賞がライフワーク。

◆レビューは上半部はネタバレなし感想、下部は観了した方と感想を共有できるように書いています。(古い記事は簡単感想です。時間のある時にリライトしています)

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