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『引っ越し大名!』どこまで実話かかたつむり

引っ越し大名!

『引っ越し大名!』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: 犬童一心
キャスト: 星野源、高橋一生、高畑充希、小澤征悦、濱田岳、西村まさ彦、松重豊、及川光博、富田靖子、山内圭哉、正名僕蔵、丘みどり、飯尾和樹、中村靖日、斉藤暁、岡山天音、松岡広大、和田聰宏、鳥越壮真、矢野聖人、向井理

日本公開日

公開: 2019年08月30日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年09月04日

 
時代劇として相当楽しかった(笑)ツッコみどころは多いけれども、そこはそれ、時代劇だから

ストーリーがところどころ飛び過ぎな感じはしたけれども、何となく楽しく見ちゃえるから、ま、OKってことで。

あらすじ

姫路藩書庫番の片桐春之介(星野源)は、人と話すのが苦手で、いつも書庫にこもりっきりで、周囲から「かたつむり」とあだ名される引きこもり侍。あるとき、藩主の松平直矩(なおのり)は、幕府から国替え(引っ越し)を言い渡される。行先は遠く離れた豊後(大分県)の日田。
藩まるごと1万人の引っ越しという、参勤交代をはるかに上回る費用と労力が必要な一大事業。これを成し遂げるには、引っ越し奉行の手腕にかかっている。お国最大のピンチに、いつも本ばかり読んでいるのだから引っ越しの知識があるだろうと、春之介に白羽の矢が立つことに…(Filmarksより引用)

史実?

割と史実史実という宣伝の仕方をしているように感じたので、ツッコみ所だらけだけれど一体どこまで史実なのと、図書館まで行って調べてしまった(笑)

結果、松平大和守直矩はもちろん実在の人物であり、生涯の中で「引越し大名」とあだ名されるほどお所替えがあった……という大前提の史実以外は、それほど史実じゃなかった(笑)

けれども、別にいいのではないでしょうか。令和の時代劇として普通に面白い。

『引っ越し大名!』を見る前にチェックしておく史実の話

必ずしも知らなくても良いかも知れないけれども、チェックしておくとより楽しいかも知れない歴史の話。

「大和守日記」の著者 松平大和守直矩のお家のこと

松平大和守直矩。つまりミッチーなんですけれどね。

どのようなお方かというと、お立場的には徳川家康の次男の五男の息子。つまり、徳川家康のひ孫にあたる。

この方が書かれたのが「大和守日記」。七歳で父を失い大名家を継いだ直矩の、15歳から55歳まで39年分の日記。戦争で焼失し、現在は17歳から20年分の一部だけが残されているという。

その中に、この映画で描かれた播磨姫路藩から豊後日田藩への所替えの切っ掛けとなるお家騒動、その後の転々とした引っ越しについても書かれているらしい。

(もっとも映画では「お家騒動」は史実通りに描かれていないのです。まぁ、そこは、映画で見て(笑))

書籍としては学術書のような物でしか販売されていないので、興味のある方は解説書などを読んでみるといいと思う。触りだけならばネットでも見られます。

http://nirr.lib.niigata-u.ac.jp/bitstream/10623/16609/1/08_08_0013.pdf

当時の催しであった能楽などのこと、武家同士の付き合いのこと、江戸城登城の様子などが細かく書かれていて、史料として大変貴重な物なのだとか。

映画の中ではそういう描写は無かったので、そこは残念。まぁ、主人公は殿様ではないので……。
上士と下士のこと

劇中にサラっと出て来る「上士・下士」というワード。読んで字のごとく「上級武士・下級武士」という扱いのことである。

この解釈や身分や扱いは、地方(藩)や時代によってだいぶ違う。「上士下士」の差別が厳しくて有名なのは坂本龍馬でお馴染みの土佐藩で、関ヶ原以降、山内家が土佐に入った時の家臣が「上士」とされ、元々土佐にいた長宗我部家の旧臣は「下士」とされた。(後、長宗我部の旧臣も取り立てられていく)

「下士」は、土佐藩のような事情で差別を受けた郷士、元は百姓だったのが取り立てられた者、戦のために一時的に取り立てられた者、豪農や商家だが武士身分を買った者など様々。(ちなみに坂本龍馬の坂本家は元は商家)

この映画の中では、「下士は身分の低い武士」くらいの認識でOKかと。

春之介や源右衛門は実在の人なのか

特に記録は無いようで、松平直矩(ミッチー)と柳沢吉保(向井理)以外の人物の事は、モデルが居るのかどうかも深く考えなくていいみたい(笑)

こんな事もあったのかもね。くらいの感覚で見るのをお薦め。

御手杵の槍

ちなみに、予告でも散々見せているのでネタバレではないだろう、ということで、源右衛門が振り回している松平大和守家の家宝「御手杵の槍」は実在しています。

断捨離のためのテキスト

「整理とは捨てることなり」の教えが響く断捨離中の私(笑)

引越しの第一歩は「捨てる事」。

この様子が面白く描かれていくのがこの作品なので、ぜひ楽しんで。

一生無双

最近、高橋一生を見飽きたなと思っている人は見た方がいいほど一生無双。ありがたき。

上に書いた「御手杵の槍」は最高の見せ場他にも、豪胆な中で、ちょっと可愛いキャラクターも見え隠れする。

適役すぎるピエール瀧(笑)

ここはネタバレになってしまうので、とにかく見て。あんな事になる前に撮っていたのにね……。

若干ミュージカル

歌は半端に入れるなら、いっそもっとミュージカルにしちゃっても良かったよねーーと思った。本格時代劇ミュージカル……うん、いいな。その方が外国受けも良さそう(笑)

引越し歌の流れるシーンは全体的に明るい見せ場。

そして、一生の見せ場でもある。(結局、一生(笑))
 『引っ越し大名!』感想

 
もちろん源ちゃんのキャラクターも愛おしい。ピッタリ合った、気弱だけれど真面目、オタクで細かいけれどインスピレーション最強。源ちゃんならではの役。

濱田岳くんには、個人的にはもう少し早い段階から絡んでほしかった。(でも愛おしい)

出番の少なすぎる向井理も楽しい(爆)

キャストの立ち位置をチェックしつつ、キャラクターの愛しさを眺めつつ、引っ越しの勉強をしよう。

言いたい事も言えなかった気弱な若者の成長記。

良い時代劇。

 


以下ネタバレ感想

 

 
「捨てる」にも色々ある。家を捨てる物を捨てる、人を捨てる……。

引越し大名として一番辛い仕事がリストラよねぇ。

物はどんなお宝でも、苦しむのはその価値が分かる人間だけである。

しかし人には感情がある。

「武士を捨てて百姓になり、石高が増えて再び召し抱えるまで待て」とは、なかなかに承諾し難いこと。

藩士とは普通は土地ではなくて家に付くものであり、残されて行ったら、それはもうお家の物ではないのよね。

史実ではなくても、これを文で繋ぎ止めた片桐春之介、誠実だね。

 
生涯5回の引越しの内、描かれたのは豊後日田への国替えだけだが、最終的に石高が復活した陸奥白河まで10年。松重豊さんや正名僕蔵さんなどが姿を消してしまっていることが自然な死を感じさせて寂しい。
 

燃えた書物が頭に入っているから取り出せる能力など、もっと有効に使ってほしかったし、すっ飛ばしすぎでもったいないエピソードも多かったけれども、この映画で好きな所は主要人物の無用な死が無いところ。

お母上とか、於蘭とか源右衛門とか、あの立会のシーンで殺されちゃうんじゃないかとハラハラしていたもんね。(いや、ホント、そのキャラここで死なせる必要あるって時代劇が多いから(笑))

キャラクターを大事に使い、時間経過と共に退場する人は退場し、最後には集合させてあげる。

こういう話だね。
しみじみホッコリと劇場を出る事ができるのは。

 

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