ブラック・ブレッド~ PA NEGRE ~
 監督: アグスティ・ビジャロンガ   
 出演: フランセスク・クルメ、マリナ・コマス、ノラ・ナバス、セルジ・ロペス、ルジェ・カザマジョ、リュイサ・カステル、マルセ・アラーナガ、マリナ・ガテイル、アリザ・クラウェット、ライア・マルール、アドゥアル・フェルナンデス 
 公開: 2012年6月23日
2013年2月23日。DVD観賞。
 1936年から3年間に渡ってスペインでは内戦があった。
 作品中では「内戦のせいで」と大人の口から何度も語られるが、それについて詳しく描写されるシーンも物語との関わりも特に描かれない。
 ただ、主人公の少年は、この内戦のせいで迫害されている「右派」の一家である事。
 内戦のせいで一家が生活に窮している事が表される。
 「ブラック・ブレッド」は文字通り「黒パン」。
 貧しさの象徴だ。
 「アルプスの少女ハイジ」を思い出す。
 ペーターのおばあさんが、硬くて食べられないと嘆いているのが気の毒で、フランクフルトへ行ったハイジはフワフワの白いパンを持って帰ろうと隠す。
この作品中では、主人公・アンドレウが初めて白パンに手を延ばそうとして、黒パンを食べるようにと叱られるシーンがある。
 アンドレウがある事故を目撃する所から物語は始まる。
 友達の親子が何者かに殺され、一体誰が事件を起こしたかという謎を追う内に大人たちのどす黒い過去が明らかになっていく。
 バウマスの洞窟に住んでいると言われる怪物・ピトルリウアとは一体何なのか。
 誰が親子を殺したのか。
という問題が次第に少年の家族、そして村の過去を暴いていくミステリー……。
だと思って借りてきたので、かなり肩透かしを食らったのは確か。
ミステリーよりも、人間の黒さ、大人の黒さ、ブラックな部分を抉り取る物語だった。
 青暗い写真のようなクラッシックな映像が美しい。。
 ストーリーとしては、ミステリーやサスペンスを期待する方にはお薦めしません。
貧しくても大人は正しいと思っていた少年の決断と、甘い少年時代への決別を見せて終わるラストは心が痛い。
ここから下ネタバレ↓観てない方は観てから読んでね
羽のない鳥。マルセルはピトルリウアだった。
 その羽をもいだのは自分が信じ、愛してきた父だった。
 (まぁ…実際にもいだのは羽じゃなくて「ち〇〇」だけど…)
 しかし、父にもそうしなきゃならなかった理由はあった。
 大人には大人の事情。
 でも、少年には理解できない。
子どもの願いは、いつだって親に守られて正しい親の元で幸せに暮らす事だから。
 でも、大人は性や色んな柵に囚われて真っ黒なの。
 それを受け入れるには、少年はまだ幼い。 
 父親はピトルリウアを作った本人で人も殺していた。
 母親は全て知っていた。
 気高そうにしているけど生活のために町長に身体も許す。
まぁ…そんなこんなを知ってしまったら、それでも親を愛して真っ直ぐ育てと言っても確かに難しいだろう。
結局、アンドレウは元凶であるマヌベンスの元に、それと知って養子に行く。
 どうせみんな黒いんだ。
 だったら、俺も白いパンが食える生活してやる。
的な決断。
 でも、これはこれで良いと思うのだ。
 だって、生きていくためには誰だって黒い決断が必要な時があるんだから。
 ただ、いつか、自分の両親が家族のためにやむない選択をしたんだという事は理解してほしい。
 そう願ってやまないラスト。
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