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映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『フルートベール駅で』黒人青年射殺事件

外国・ハ行 ライアン・クーグラー マイケル・B・ジョーダン メロニー・ディアス オクタヴィア・スペンサー ケヴィン・デュランド チャド・マイケル・マーレイ アーナ・オライリー アリアナ・ニール ★★★

フルートベール駅で ~ FRUITVALE STATION ~

    

監督: ライアン・クーグラー   
キャスト: マイケル・B・ジョーダン、メロニー・ディアス、オクタヴィア・スペンサー、ケヴィン・デュランド、チャド・マイケル・マーレイ、アーナ・オライリー、アリアナ・ニール
公開: 2014年3月21日


2014年10月8日。DVD観賞


2009年1月1日。
街が Happy New Year に浮かれる中、サンフランシスコ・ベイエリアのフルートベール駅で無抵抗の22歳の黒人青年が警官に射殺された。

この映画は、その実際に起きた事件をベースに描かれたものである。

『米地下鉄駅で白人警官が黒人男性を射殺、容疑者を殺人で逮捕』2009年01月15日付「AFPBB News」

…という作品である事だけは事前知識として知っていた。

結果、想像していたものとはだいぶ違ったけれども。

この映画は射殺された青年の最期の1日をドキュメントドラマのように綴ったものである。もちろん、「その日」の後に自分の身に何が起きるかなんて知らないワケで、人と会ったり娘や恋人と愛し合ったり親に会ったり…誰にでもある普通の1日。

…という事で、この記事には特にネタバレ欄は設けません。描かれているエピソードはなるべくネタバレしないように書かせていただきます。簡単感想で。

<あらすじ>
2009年、新年を迎えたサンフランシスコのフルートベール駅。多くの人が入り乱れるホームで、22歳の黒人青年オスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)が銃で撃たれてこの世を去る。命を失ったオスカーにとって、母の誕生日を祝い、娘と遊び、家族や友人と過ごしたいつもの日常が、悲しいことに最後の日となってしまった。
シネマトゥデイより引用



冒頭に「事件」を撮影した実際の映像が映し出され、もう悲しさでいっぱいになる。
その後は彼の普通の1日が始まるのだが、「事件」と深く関わる事になる出会いが1件だけある。

この後に何が起きるか見ている方はもう解っているので、オスカーが恋人と会っていても娘と遊んでいても心はザワザワしっぱなし。しかし色々とエピソードはあるものの本当に普通の1日なので、下手すると退屈になるくらい…。

「普通の1日」といっても、楽しいことばかりではない。けれども、それらの楽しくない事は特に彼が黒人だから起きた事ではなく、彼自身の性格や生き方が起因するものだ。

だから「この人自身がこんなだから、こんな事になったんじゃないか?」と見られなくもない。まるっきり何の悪事もしていない聖人君子が黒人だから殺されましたという話ではないのである。

見終わって、その辺が何だか物すごくモヤモヤするのである。

オスカーは「この日」もたくさんの人と関わっているが、それもそれこそ白人だったり東洋人系だったり、みんな普通の人間として接しており、特に人種差別の描写はない。

この映画が本当に「人種差別による事件だ」という事を訴えるものならば、エピソードの中にも差別を盛り込み、彼の悪事の過去も消して、罪なき真っ白の心を持つ1人の黒人が白人に殺された…というストーリーを作り出すんじゃないかなぁと。

しかし、監督はそれをしなかった。

嘘も付けば浮気も遅刻もし、悪事にも手を染める。けれども人と積極的に関わり人助けもするし反省もしている。愛に溢れた親子関係、気の良い仲間たち、神への祈り。良い事もすれば悪い事もする「普通の人間」が、権力を持つ大きな暴力によって命を奪われた。

だから理不尽なのである。

病院のシーンでは涙が出た。自分もこの悪夢が起きる一因を作ってしまったお母さんの気持ちを考えたらやり切れない。


「その日」ホームに引き出されたのは黒人ばかり。それは警察官の偏見と圧力なんだよね。ポリスの中に1人でも黒人がいれば事態は変わっていたかも知れない。

オスカーを撃ったヨハネス・メーサラル巡査は「テーザー銃(電気銃)と間違えて本物の銃で撃ってしまった」と主張し、わずか2年の実刑。実際には11ヶ月で刑期を終えたとか。

これには警察の威信のようなものも関わっているわけで、実際にはメーサラル巡査自身は深く後悔しているかも知れない。していないかも知れない。それは解らない。

アメリカではこの事件以外にも精神疾患を持つ人など社会的弱者、黒人など有色人種が警官から暴行を受けたり殺されたりしており、つい最近、2014年8月にも18歳の無抵抗の黒人少年が射殺されている。

現代のように防犯カメラや目撃者の携帯映像がネットに流れなかった時代には、もっともっと多くの露見しない暴力が行われていたんだろうな。

警察の暴力が大きくなった背景には、力で抑えなければどうにもならない犯罪の多さや大きさもあるのだろうけれども…。

脅して叩いて叩かれて巻き込まれて…を繰り返していたら、いつまで経ってもまた同じことが起こる。それは世界のどの国でも同じ。

権力が暴力を駆使するのを止めない限り、「フルートベール駅」は無くなる事がない。


「フルートベール駅で」公式サイト


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