映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『トガニ 幼き瞳の告発』世界が私たちを変えないようにするための闘い

トガニ 幼き瞳の告発~ Silenced/도가니 ~

  

監督: ファン・ドンヒョク   
出演: コン・ユ、チョン・ユミ、キム・ヒョンスン、チョン・インソ、ペク・スンファン、チャン・グァン、キム・ミンサン、キム・ジュリョン、オム・ヒョソプ、キム・ジヨン
公開: 2012年8月4日


2013年4月9日。DVD観賞。

2005年に韓国で起きた実際の事件をベースに書かれた孔枝泳氏の小説を元に作られた作品。

ソウルで職に就けずに暮らしていたカン・イノは、大学時代の恩師の紹介で校外の視聴覚障害者学校へ美術教師として赴任する。そこでは耳が聞こえない故に心も閉ざした子供たちが寄宿生活を送っていた。
子どもたちと触れ合う内に、イノはこの学校で隠れた虐待が行われている事を知る。



見ていてすぐに思い浮かんだのが、1998年のTBSドラマ・野島伸司脚本の「聖者の行進」
相手が知的障害を持つ子供だからと虐待する痛々しい弱い者虐めと卑怯な権力者の図が展開される心が痛いドラマだった。

とにかく辛い…。純粋な子供たちの瞳を見るほど辛い。

相手の弱みを知っているから大きく出る卑怯な大人たち。狡猾な大人は逃げる手管も持っている。
踏み潰されるのは、いつも弱者だ。

子役さんたちの演技が、とにかく素晴らしい。
その瞳の真っ直ぐな美しさに悪は己を恥じないのだろうか…。

あの国だから、とかいう話ではない。
権力を笠に着てやりたい放題な人間は時代も国も超えて存在するのは事実。

「トガニ」とは韓国語で「坩堝」(るつぼ)を意味するという。
正しく美しい物は汚い物が渦巻く坩堝に陥れられたのだ。

ただの事件物として見るのではなく、子どもが健やかに幸せに暮らせる環境について、誰もが先入観を捨て真実を見る目を持たなくてはならないと考えさせられる作品。


そして、この映画には映画が公開された事による後日談があるわけだが…。
それを書いたら結末までネタバレするので、そこは下で。

 

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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身体の障がいは心の障がいに繋がる…。
始めにそう聞いた通り、子どもたちは伏し目がちで大人を信用せず心を開いてくれない…と思っていたイノ。

子どもたちが何を恐れているのか、真実を知った時の衝撃。
本当に酷いとしか言いようがない。

口がきけない事を承知でやっている犯罪。その上、性的虐待を加える子供の境遇まで調べてからの行い。
親も障がい者であったり、あるいは孤児であったり、文句を言ってくる保護者が居ない事も解っていてやっているのだ。

それだけに、耳が聞こえないからこその証言が出来たヨンドゥの裁判シーンは涙…。
障がい者学校の長なのに手話も使えない校長がたった1つだけ覚えていた手話。
「他人に話したら殺す」

そして、完全に聴覚を失ったわけではなかった事を示した音楽テスト。

悪を見つめる厳しい美しさと、真実を訴える声なき声にただただ泣けた。

「敬虔なクリスチャンで人格者」のはずの校長。
「警察は国民と共に」の看板を掲げた警察。
「自由 平等 正義」を掲げた裁判所。…

誰も彼らを救ってはくれなかった。

権力は彼らを踏みつぶし、幹部級の判事出身弁護士を初めての事件で勝たせてやる慣例「前官礼遇」によって、甘い甘い判決が下りた。

結末はあまりにも理不尽で、あまりにも悲しい。

それでも、この事件を経て、彼らは知ったと言うのだ。

私たちも他の人と同じように大切な存在だと。

そう。大切じゃない子どもなんてこの世にはいないんだよ。
みんなが幸せに暮らせる国。いつになったら悪は正しく裁かれるんだろう。

この闘いの意味を模索するイノにユジンは闘いの意味を知ったと言う。

私たちの闘いは世界を変えるためではなく、世界が私たちを変えないようにするためだと。


韓国映画だから…こんな結末は解っていた気がする。
「2011年 加害者の一部は復職しこの事件は終了した」
というテロップをもってこの映画は幕を閉じる。

しかし、この作品には後日談がある。

この映画公開後に、この事件関係者と判決に関わった人間への非難の声が上がり、事件関係者は改めて罰せられたというのだ。
そして、障がい者への虐待に対する「トガニ法」まで制定されたというのだから、ペンは強し(映画は強し?)を世の中に見せてくれた事になる。

この映画の本当の結末は正義ある現実。
その実話にだけは救われる思い。

「トガニ 幼き瞳の告発」公式サイト

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