『オーケストラ・クラス』学級崩壊を救うもの

オーケストラ・クラス

原題 : ~ La Melodie ~

作品情報

監督・キャスト

監督: ラシド・ハミ
キャスト: カド・メラッド、サミール・ゲスミ、アルフレッド・ルネリー、ザカリア・タイエビ・ラザン、シレル・ナタフ、ユースフ・ゲイエ

日本公開日

公開: 2018年08月18日

レビュー

☆☆☆

観賞: 2019年6月7日(オーケストラ・クラス(Amazon)配信)

 
もっと民族間のあれこれに関わる話なのかと予想していたが、意外にも日本の学級崩壊救済に繋がるストーリーにもなっていた。現代教育の難しさ……。

このレビューは短感です。実話ベースなのでネタバレには配慮されていません。

あらすじ

パリ郊外の小学校では、楽器を持ったことのない子供たちに音楽の素晴らしさを知ってもらおうと、ある教育プログラムを実践している。その最終目標はパリ随一のコンサート・ホールで「シェエラザード」を演奏することだ。プロの演奏家としての仕事にあぶれたバイオリニストのダウドが6年生のオーケストラ・クラスを指導することになったが、やんちゃな生徒たちは勝手気ままに騒ぎ続け、楽器の扱い方を教えようとしても聞く耳を持たない…(オーケストラ・クラス(Amazon)より引用)

実話ベース

フランスに実在する音楽教育プロジェクト「Démos(デモス)」を題材にした物語。ということで、実話ベースである。

デモスでは、音楽に触れる機会のない貧しい子供たちに、無料で楽器を贈り、プロの音楽家が教えているという話。劇中でダウドが「まるで奉仕活動」と言うが、文字通り奉仕活動である。

実際のデモス楽器贈呈式の様子。

こうやって万人に機会が与えられること、音楽を広く伝えようと試みることなど、日本にはなかなか浸透しなさそうな文化活動。本当に素晴らしいプロジェクト。

移民テーマよりも学校教育の話に近い

舞台になっているこの地域は、移民の多い地域らしい。移民問題。日本人にはテーマとして少し遠く、ゆえにネットを見ていると綺麗ごとな発言がとても多い。

日本人には取っつきにくいテーマかなぁ……と思いつつも、音楽を楽しむつもりで観賞したが、劇中では「移民」に関して触れることはほぼなく、どちらかというと「教育」に関する物語だった。

子どもたちは腹が立つほど騒がしく、子どもに慣れない主人公は戸惑いながら成長する。子どもと大人の成長物語。

「問題児」「モンスターペアレント」「パワハラDV」

テーマの子どもたちは小学6年生クラスという設定。

子どもたちの口から出るのは、卑猥な言葉や悪口、くだらないお喋りで授業は中断気味。教師は主人公に「怒鳴らず手を出さず」「威厳で指導しろ」と言うが、その教師だって、ちっともクラスを統率できていない。

日本の小学校でも学級崩壊になりがちなギャングエイジ(小学3・4年くらいから)にピッタリな状況。

教室で子どもに手を出すことは平成に入ってから日本でも徹底されてきたが、海外ではより早くから神経質なほど気を使われている。

『ぼくたちのムッシュ・ラザール』を見た時に、フランスではここまでと驚いた事を覚えている。

今回も正直少し驚いた。どう見ても生徒の方が酷すぎるから。

それでも指導者は怒ってはならず、気を使い、親にも気を使い、宥めすかしながら指導する。なんという根気の要る仕事。

そんな中で、子どもたちは少しずつヴァイオリンが上達し、自信を持ち、上達する事で指導者を尊敬して親しみを持つ……。自信は人間を成長させる一番の御馳走。こういう活動が学級崩壊クラスを指導するヒントになる。かも知れない。

ヴァイオリン好きにはたまらない

個人的にはヴァイオリンの音色が本当に大好きなので、これだけで映画の評価が2倍も3倍も上がってしまう。

自分に自信の持てなかった1人の少年が才能を発揮し、練習することでソロまで弾くようになる。

物語の展開としては定番で先が読めるけれども、ラストのコンサートを聞くつもりで観ることができるならば、価値のある1本。

演技しているとは思えないほど自然体に憎らしい(笑)、子どもたちの成長にも注目。
 

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