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『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』思い出を殺しに来るラスト

ドラゴンクエスト ユア・ストーリー

ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 感想

作品情報

監督・キャスト

監督: 山崎貴
キャスト: 佐藤健、有村架純、波瑠、坂口健太郎、山田孝之、ケンドーコバヤシ、安田顕、古田新太、松尾スズキ、山寺宏一、井浦新、賀来千香子、吉田鋼太郎

日本公開日

公開: 2019年08月02日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年08月05日

TwitterのTLに続々と罵倒の声が流れてくるのを「何をそんなに怒っているのだろう」と思いながら見ていたけれども、よく分かった。これは、あのゲームを愛していた人間と、いわゆるゲーマーは怒るよ。

妨害する権利も義務もないので観るなとは言わないけれども、『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の世界に入り込み、ゲームのキャラクターの人生を自分の人生のように楽しみ、夢中でプレイした経験のある方は観ない方が良いと思う。

私自身がそうだったから。悪評の正体を知りたくてつい観に行き、とても悲しかったから。

これは人を傷つける映画。

(注)この記事はドラクエ熱強すぎモードで書かれているので、引きながら読んでください。
このレビューは核心に触れる部分はネタバレ枠に記載していますが、原作『天空の花嫁』ゲームストーリー自体のネタバレは穴埋めテスト方式で書かせていただきます。(『天空の花嫁』をプレイしたことがある方はたぶん分かる。かも(笑))

あらすじ

少年リュカは父パパスと旅を続けていた。その目的は、ゲマ率いる魔物たちに連れ去られた母を取り戻すこと。旅の道中、遂にゲマと遭遇し、魔物たちと激しい戦いを繰り広げるパパス。しかし一瞬のスキをつかれ、リュカが人質にとられてしまい、手出しができなくなったパパスは、リュカの目の前で無念の死を遂げる――それから10年。故郷に戻ったリュカは「天空のつるぎと勇者を探し出せば、母を救うことができる」というパパスの日記を発見する……(Filmarksより引用)

原作(原媒体)『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』

『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』は1992年にエニックスから発売された「ドラゴンクエスト」シリーズ5作目のRPG(ロールプレイングゲーム)である。

発売当初はスーパーファミコン用のソフトだった。現在は任天堂DS版やスマホでプレイできるらしい。当方はスーパーファミコンでプレイしました。懐かしい。
 

 
ドラクエシリーズは「I」の時から主人公に好きな名前を付けて冒険できるシステムであり、自分の名前を付けた勇者が持ち物を増やしたり、レベルが上がったり、仲間が増えたり、呪文を覚えたり……成長しながら敵に向かっていく快感は何ごとにも替えられず。

当方は初めてやったRPGがドラクエであり、「I」の時からこの可愛い愛しいゲームに夢中になり、毎度すぎやまこういち氏のEDを泣きながら聞き、達成感と寂しさを味わいながら大人になって行ったのだった。(嘘です。始めから大人でした。)

 
ドラクエは初めから魅力的なゲームだったが、『天空の花嫁』にはさらに魅力的なシステムが増えていた。

『天空の花嫁』ではモンスターを仲間にすることが出来るようになっていた(それまでは仲間に加える事が出来るのは人間だけだった)。ペット的な役割では無く、彼らもレベルアップし、戦うのである。異種との交流に私たちはワクワクした。

それだけではなく。

『天空の花嫁』では何と、主人公、つまり私は(A)することが出来るのだった。(A)だけではなく、やがて(B)も持つことになる。何か凄くないですかこの当時まだ(A)していなかった私が(B)の名前まで付けちゃうんだよ。

(C)にするか(D)にするかは『天空の花嫁』プレイヤーはみんなが経験するところ。

どちらを選ぶかでどう変わるのかも攻略してみないと分らないので、多くのプレイヤーが恐らく2度はこのゲームをリピートしていると思われる。

 
『天空の花嫁』は、とにかく世界観が広くて楽しかったなぁ。まさに自分のもう一つの人生だった。あの頃。

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の素晴らしさ

冒頭でメチャクチャ書いておきながら「素晴らしい」ってなに……という話だけれども、そもそもこの映画の出来栄えは素晴らしいのである。だから逆に問題なの(笑)

CGが酷くて絵が汚くてアニメが全く動いていなくて声優もヘタクソで……という方向に酷かったら、どんなに良かったか。
 
キャラクターデザインは鳥山明ではないものの可愛らしいし、絵は美しいし、動きも滑らか。映像はさすがの山崎貴監督。ストーリーはあちこち飛んだ感じだがゲームだと思えば違和感もないし、ゲームを攻略済みの身としては充分楽しめた。そう、楽しめてしまうの。

私自身だって、あのクライマックスまでは、「物語になるとこんな感じになるんだね~~」とニコニコしながら見ていたわけ。この映画を紹介するための仕事記事なら、「素晴らしいクオリティで、懐かしく昔のゲームを思い出す事ができる傑作」とか書いちゃっているだろう。

だから、この元ゲームを知らないで映画だけ観た人にとっては、プレイ経験者が何を怒っているのか恐らく分からないのである。

そして絶望へ

私もクライマックスまでは楽しかったし、良い出来じゃんと思っていた。ラストはすぎやまこういち氏のあのテーマを聞きながら感動の号泣をする予定だったの。

今はもう、昔体験したあの懐かしい旅を全部ぶち壊された気分。

 
この映画は、そう、例えば、サンタクロースを信じてワクワクとクリスマスを過ごした思い出を「お前、サンタなんて信じてたの?あんなの虚構だよ。バカだね、あはは。」と悪魔のように笑い飛ばされる感覚に似ている、きっと。
 

ごめんね、そんな事は分かっていた。あれは私の「もう一つの人生の思い出」という名の虚構ですよ。でも、こんな形で突きつけられたくは無かった。

どんなに意外性を狙ってヒットしても、人を傷つける物は作っちゃいけないって倉本聰先生も言ってた。そういう話。

炎上商法

しかし、これは狙ってやっているのだろうな、という気もしている。

あのセンセーショナルな結末に、ドラクエおたくが騒げば騒ぐほど、私のように「どうせ与えられたYour story が許せなくて騒いでいるだけなんだろ、大人げないな、はっはっは……」と、つい観に行ってしまう人が後を絶たないからである。

そういう性質の怒りではないんですよね。

原作付きのストーリーに悪評価が付く時、その原因は大抵、「原作と違う」ことだと思うのだ。しかし、この映画に向かう怒りの理由はソコではない。

もっと、根本的に、「このゲームに夢中になった私」が傷つけられるの。

という事だけは書いておきたかった。

ちなみに、夏休み映画なのだろうけれども、お子様向けではないと思う。ゲームの内容をある程度知らなければ分からない呪文や登場人物の設定の説明が端折られていて、物語としては不具合だらけである。(まぁ、それもクライマックスに向けるための伏線なんですけどね。)

やはり、これは、あのゲームが懐かしい中年プレイヤー向けの作品だよねぇ……なのに思い出を壊すのね。悪趣味。

ここから下にはネタバレを書きます。
 

()の回答
・A 結婚
・B 子供
・C ビアンカ
・D フローラ

 


以下ネタバレ感想

 

この映画を観る前に悪評の正体として想定していたものの1つは、「ビアンカかフローラかで製作者と観客の意見が合わなかったとか、そういうことかな」だった。

ここはゲーム発売当時からプレイヤーの間でも意見が割れるところだったからだ。(私はフローラ派だった気がする)

そして、その後考えたのが、全てのストーリーが終わった後に、やはりフローラと結婚したくなってプレイを巻き戻すとか……。

ビアンカとフローラの2人共と結婚するとか。

とにかく、「ビアンカかフローラか」関係の事しか頭に浮かばなかった(笑)今から考えれば、そんなの甘い予想だった。
 

まさか、ゲーム中に現実に引き戻されるとは思わなかったよ。あのラスボス。

「私はゲームの中に潜むウィルスだ」
「お前を現実に戻すためにやってきた」
「この世界は全てバーチャルだよ」

「大人になれよ」

そう言って、チリチリと紙屑のように破り捨てられ消えていく、今まで入り込んで見ていた「天空の花嫁」世界。私の思い出。
 

まぁよくよく考えれば、「私の思い出」の再現が素晴らしかったから、この世界が消えていくシーンにリアリティがあり過ぎたんだよね。世界が消えていく映像もまた、とてもよく出来ていたし(笑)
 

でもね、このシーンを見せられた後で、「それでも僕はこの世界を愛してゲームをやり続けるんだぁぁ!」と、ゲーム世界を元に戻されてもね……。

もう、心が冷え過ぎた。

感動し、泣きながら聞くはずだったEDのすぎやまこういち氏のテーマは「どうせ虚構だしね」と思いながら虚しく右から左へ消えていった。

あの映像で完璧にラストまで「私の思い出」を再現してくれていたら、どんなに泣けるEDだっただろう。
 

どうせなら、「猫かなんかがリセットボタンを押してしまってゲームが全部消えてしまったEND」の方がまだ良かったかも(笑)それこそ、初期のスーファミあるあるだし。「ああ、懐かしいなぁ」と、なったかも知れない(笑)

今の私に出来る事は、この映画自体をさっさと忘れることである。リセットは大事。

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★前田有一の超映画批評★
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