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『ある戦争』これは戦犯と言えるのか

ある戦争

原題 : ~ KRIGEN ~

作品情報

監督・キャスト

監督: トビアス・リンホルム
キャスト: ピルー・アスベック、ツヴァ・ノヴォトニー、ソーレン・マリン、ダール・サリム、シャルロッテ・ムンク、ダルフィ・アル・ジャブリ

日本公開日

公開: 2016年10月08日

レビュー

☆☆☆☆

観賞: 2019年6月15日(Amazonプライム)

 
「事件は現場で起きている」んだよ!?

その場に居なかった者が平和な場所から彼の判断を責めるシーンは酷い。つらい。情けない。としか言いようがない。

これが現代の戦争犯罪裁判だというならば、もう誰も従軍などしなくてもいい。

あらすじ

アフガニスタンの平和維持のために駐留するデンマーク軍の部隊長、クラウス。ある日、彼の率いる部隊はパトロール中にタリバンの急襲を受ける。姿の見えない敵から、次々と浴びせられる銃弾。遂には、隊員の一人が瀕死の重傷を負ってしまう。部下を救うためには、一帯を空爆するしかない。だが周囲には民間人のいる可能性も否定できず……(「ある戦争」Amazonプライムより引用)

徴兵制

デンマークでは男子に対してのみ、4ヶ月間の徴兵制度が施行されている。兵役はあるが、もちろんその4ヶ月の間にアフガニスタンなどに派遣される事はない。

ただ、希望者に対して延長制度があり、希望した場合は海外へも派遣されるらしい。たった4ヶ月の訓練期間、兵隊の実感も戦争の実感もないに違いない。出来る気になって延長したあげく、こんな事に巻き込まれたら……。

戦地に行けば、当然戦死する可能性だってあるわけで。仲間が死ぬのを見てから家に帰りたいと泣く兵士に「軍人のくせにメンタルが弱い」など、とても言えない。強制兵役の延長なのだもの。

子どもを守る

デンマーク国防軍は世界平和維持のための活動も目的の1つとしており、主人公・クラウスはそのためにアフガニスタンに駐留していた。目的は民間人を守ることであり、タリバンを積極的に攻撃することでははない。

しかし、やられたら自分たちを守るためにやらなければならない。武器を持たなければ相手も平和に去って行ってくれるかと言えば、絶対にそんなことはない。この辺、日本人としても考えさせられる場面だと思う。

作中には「子供」がたくさん出て来る。

父の不在で不安定になっているクラウスの子ども。無邪気に遊ぶアフガニスタンの子ども。タリバンから救ってやれなかった子どもの足……。

タリバンにやられた部下。救えなかった一家。そして攻防戦。クラウスは精神的に追い詰められていく。そして事件は起きる。

裁判

善意と混乱と衝動と……。彼の一体何が悪いと言うのか。

女弁護士に、そんなに言うならお前が戦地へ行って上手に指揮してみやがれと言いたくなってしまった。

法律の順序は絶対的なもので、そこを緩く考えてしまったら秩序は無くなる。もちろん、この弁護士は自分のお仕事をしただけ。それは分かる。

しかし映画を観ている者は現地の様子を見ている。だから、クラウスには同情しかできない。どんなに悲惨な現場を見せられても。

実話じゃないけれど実在の兵士が参加

主要キャスト以外はアフガニスタンに従軍したことのある兵士が参加しているというこの映画。彼らはどんな気持ちでこれに参加しただろうか。

「守るべきもの」は何なのか。「人の命を奪うこと」はどういうことなのか。勉強のための参加なのかも知れない。

「偽りなき者」脚本家の監督作品

トビアス・リンホルム監督は、あの『偽りなき者』の脚本を担当している。

あれと同じくらい理不尽で、「正義」の意味を考えさせられる。

「正しい」は本当に難しい。

 


以下ネタバレ感想

 

判決は無罪。無罪。当たり前だ。これが有罪だったら誰ももう徴兵になど応じなくてもいい。

しかし、「銃口を見た」と言うブッチャーの証言は恐らく真実ではなく、クラウスにも何が真実だったか分からないままだろう。

 
真実は1つ。

第6地区の民間人は確かに自分のせいで殺された。

その後味が苦い。

 
戦争がなければ、誰もこんな思いしなくて済むのに。
 

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