『アメリカン・アニマルズ』実話とは思えないほどの真実

アメリカン・アニマルズ

原題 : ~ American Animals ~

『アメリカン・アニマルズ』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: バート・レイトン
キャスト: エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェンナー、ジャリッド・アブラハムソン、ウド・キア、アン・ダウド、ララ・グライス、ドリュー・スターキー、ゲイリー・バサラバ、ジェーン・マクニール、ウェイン・デュヴァル

日本公開日

公開: 2019年05月17日

レビュー

☆☆☆☆

劇場観賞: 2019年5月17日

 
人は自分が見たい物語を信じる。
例え信じた物語が偽物だったとしても。

こんな事が実話だとはとても信じられないけれども、こんな事だからこそ実話なのかも知れない……。

なんという愚かな青春。

あらすじ

アメリカ・ケンタッキー州で退屈な大学生活を送るウォーレンとスペンサーは、自分が周りの人間と何一つ変わらない普通の大人になりかけていることを感じていた。そんなある日、2人は大学図書館に時価1200万ドル(およそ12億円相当)の超える画集「アメリカの鳥類」が保管されていることを知る。「その本が手に入れば、莫大な金で俺たちの人生は最高になる」そう確信したウォーレンとスペンサーは…(Filmarksより引用)

ご本人のインタビュー形式

本人出演で、本人がストーリーテラーとして物語が進んでいく形式。思い切りカメラ目線でインタビューに答える演出は『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』を思い出させ、俳優ではなく本人だということで『ヒトラーを欺いた黄色い星』を思い浮かべる。

 
しかし、これは、命を守るために逃げざるを得なかった人たちへのインタビューではなく、世界の王者として君臨するためにやってしまった事件でもない……。どこにでもいる大学生が「やってみた」事件。

軽すぎて間抜けすぎて驚く。

「実話ベース」ではなく「実話」

本人へのインタビューなのだから、完全な「実話」ということである。

正直、やらかした事は段取りが酷すぎて、とても実話だと思えない。実話だと思えないほどのズサンさが、むしろ実話っぽいのだろう。犯罪は映画のようにスタイリッシュに成功しないものである。

 
けれども、それは「本当に実話」なのだろうか。

真実は映画のラストに語られる。

この映画が描きたいこと。それは、「そこ」にあるのだろう。

目に見えることが真実なのかどうかは分らないという話。

 
「僕らは特別な存在なんかじゃない。」
こんなことで「特別な存在」になんかならなくていい。

 
最近話題の、エスカレートしていくYoutuber のこともちょっと思い出した。

 
この映画の彼らは、間違いなく反面教師。

スリルを求めて……

実行中描写はスリル満点……と言いたいけれども、キリキリしてイライラして、思わず舌打ちしちゃった(笑)

予告映像の「4人の爺さん」過程も面白い。

上映時間・2時間は、あっという間。

 


以下ネタバレ感想

 

計画がズサン過ぎて、本当に実在の事件なのか?と聞きたくなってしまう。いや、むしろフィクションならば脚本家出て来いというレベルのひどさ(笑)
 

ウォーレンは、自分の屈折した気持ちの解消に友達を巻き込んだ。しかし彼は言う。

首謀者は俺じゃない。
首謀者は居なかった。

一番自分の信じたいものしか見ていなかったのは、彼だったのかも知れない。

でも、他の3人も自分の話をしているだけで。

この映画では描かれなかった視点が他にあっても不思議はない。
 

人間は信じたいことしか信じない。

僕らは一方の視点でしか物を見ていない。

「実話」と謳いつつ、映画はラストに「一方の視点からしか見ていないことは真実かどうか分らない」と、ほざく。

まるで、騙し絵を見せられたかのような気持ち。
 

この愚かな計画がせめて人のためならまだ良かったのだけど。

人を傷つけない犯罪など無い。

例え暴力を使わなかったとしても、傷つけた事には変わりがない。

けれども彼らを一番反省へ導いたのは、老婦人への暴力だった。これはまだ、善良である証。
 

今はきっと反省して本物の夢を見ている。

あれは、そういうラストだと思いたい。

 

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