『鑑定士と顔のない依頼人』動き出した歯車

鑑定士と顔のない依頼人 ~ LA MIGLIORE OFFERTA ~

    

監督: ジュゼッペ・トルナトーレ   
キャスト: ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・ホーク、ドナルド・サザーランド、フィリップ・ジャクソン、ダーモット・クロウリー、リヤ・ケベデ
公開: 2013年12月13日

2014年9月28日。DVD観賞

白髪混じりの髪を染め、高価な美術品を絶対的な眼で鑑定し、世の中の信用と信頼を得ている男。怪しきには近寄らず、依頼人からの電話も自分では取らない。必要以上には人と関わらない。女経験は無し。当然、妻子も無し。

人間、どんなに完璧に見えても必ず穴があるものである。
オールドマンには仕事以外の人間関係が無かった。完璧に見えた彼の人生のその部分にジワジワと今まで無かった感情が入りこんでくる。

<あらすじ>
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。
シネマトゥデイより引用

     鑑定士.png

こういうミステリアスなストーリーだから、見る方もいくつか展開を想像しながら見るわけで。
自分で想定した結末の1つではあった。いや、誰でも「そうなるんじゃないの?」と思うだろう、これは…。

…で、ストーリーについては何を書いてもネタバレしてしまいそうな気がするので、そしてネタバレすると何も面白くなくなるので、感想は下のネタバレ欄で。

見どころは、足を踏み入れたこともない高額品オークションの様子や、オールドマンが収集している見事な絵画の数々。そして、巨匠エンニオ・モリコーネの音楽。

クラッシックな館と歴史を語る美術品。そして、最新型のセキュリティシステムとスマートフォン。相反するものが画面の中でチグハグに絡みあうのもまた一興。

 


以下ネタバレ感想

 

鑑定士、これ、詐欺じゃないの~
…と思っていたら詐欺だった。

機械屋のロバートが組んでいたらイヤだな~…
…と思っていたら組んでた。

友達面したビリーが黒幕だったらイヤだな~…
…と思っていたら黒幕だった。

…全て、そうじゃなければいいな~…平気かよ…という最悪想定通りになった。う~ん…可哀想。

クレアはもしかしたら、機械人形で、あの歯車は壊れていくクレアから落ちているのでは~…とも思っていたんだけれども、バッチリガッツリ姿を現しちゃった時点で違うと解ってしまったし。

姿を見せてしまったらもう機械人形とか幽霊とか鶴とか、そういうファンタジー方向とはかけ離れた展開…。
…というか、引きこもりなのにやけに綺麗だったし、最初に出て来た時にアクセサリーまで着けてたよ。気付けよ…あの年まで女に免疫がないって、こういう事

想像の斜め上を行ったのは、屋敷の向かいの店にいるあの女性が「クレア」だったこと。
そして、あの絵がビリーが描いた物だったこと。

贋作者は自分の痕跡を残す。

ヒントは与えられていた。

自分の絵を認めてもらえなかった復讐か……。確かにオールドマンさんもビリーを利用し続けてきたわけで、酷いと言ったら酷いわけだが。

でもね~…。

引っかかったのが若者だったら、
「いいお勉強になりましたね。これからは気を付けて人生を歩んでいきましょう」
と言えるけれども、あの年で大切な絵画も仕事も恋も友人も全て失い…って、もう、絶望するしかない。

だから後味が物すごく悪い。

復讐の内容が、「目には目を」じゃなくて「目には目と歯と指を」くらい上行っている気がするんだもの。

エンニオ・モリコーネの美しい曲を堪能し、絵画を愛でつつ、地獄の底に突き落とされるという……救いのない空虚。

・「鑑定士と顔のない依頼人」公式サイト

 


鑑定士と顔のない依頼人@映画生活トラックバック
・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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