ブリューゲルの動く絵~ THE MILL AND THE CROSS ~
 監督: レフ・マイェフスキ   
 出演: ルトガー・ハウアーシャーロット・ランプリングマイケル・ヨーク 
 公開: 2011年12月17日
2013年3月18日。DVD観賞。
 邦題の印象から考えて、ブリューゲルがいつの間にか自分の絵の中に入ってしまい、絵が動き出すコメディか…とか…。
 予告だけは見ていて画が凄そうだとは思っていたので、ちょっと笑わせつつリアルな絵画観賞のように素晴らしい映像を見せ続けるんだろう。今、花粉症の薬のせいで眠いんだけど大丈夫かな…とか…。
そんな風に想像していた。全然違うじゃないか!大体、原題は「風車小屋と十字架」だ。
「ブリューゲルと残酷な絵」「ブリューゲルと無関心な人々」「ブリューゲルと公開処刑」……
 そんなタイトルの方が合っている印象だ。
 あるいは、「ブリューゲルの『十字架を担うキリスト』解説」。
 この映画は、16世紀の有名な画家ピーテル・ブリューゲルの絵画『十字架を担うキリスト』が出来る工程を描いた物語だ。
  
   
 たぶん「見た事ある」という方も多いと思う。私も見た事がある。
 しかし、この絵の意味までは真剣に考えた事は無かった。それほど好きな画家でもなかったし、一応美術系の学校を出ていながら、たぶん真面目に美術史の講義を聞いていなかったのだ…ひどい。 
 そんな私にもあなたにも、どんな講義よりも詳しく面白く興味深くこの絵を解説してくれる。
 それがこの作品なのだ。
 …という事で、この記事には特にネタバレ欄は設けません。
 ここで全部ストーリーを文字で語ってしまっても、見なければ意味も価値もない映画だから。
 『十字架を担うキリスト』は、文字通り十字架に架けられるキリストを描いたものだが、この舞台はゴルゴダの丘ではなく、ブリューゲルがいるブラバント公国(ベルギー)なのである。
 服装がまるでキリストが処刑されたような時代とは違う。
 劇中でも、
 蜘蛛の巣の中心にいる救世主は石臼に挽かれる穀粒だ。 赤い服を着たスペイン兵にゴルゴダへ連れて行かれる。
 と、解説されている。
 この時代、この国はスペイン王に支配されており、異教徒は赤い服を着たスペイン兵によって弾圧された。
 劇中では多数の処刑シーンが出てくる。
 それも、とても野蛮な方法なので見ていて痛い。
この、今現在の苦しさや怒りをブリューゲルはキリストの処刑になぞらえて描いているのだ。
 キリストは絵画の中心に描かれるが、人々はキリストに全く関心を持っていない。
 他で起きているトラブルにばかり注目している。
 最も重要なのに見逃される。
 というブリューゲル。
無関心が因習になってしまっている世の中。
 それを奥の方に描かれた岩山の上の風車小屋にいる粉屋が全て見下ろしている。
 粉屋の粉はパンを作る…つまり命をつかさどる粉。
 粉屋こそが、この絵の中における神なのだ。
 無関心も暴力も祈りも人々の生活も、神は全て見ている。しかし、見ているだけで、何をするわけでもない。
 今日も神は人々の生活のために粉を作り続ける。
 見てみれば解るよ。という作品だ。
 ただし、淡々と人々の生活や処刑シーンが描かれるだけで、セリフもほとんどない。
 残酷な事もサラッと描かれるのは、それが生活と隣り合わせにあって当たり前になってしまっているから。
それは、結構、この現代の私たちの生活にも当てはまるのかも知れない。
娯楽性はほぼない作品なので…。絵画が好きな方にはお薦めしておきます。
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