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『ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路』偉大な音楽家の姉という呪縛

ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路

原題 : ~ NANNERL, LA SOEUR DE MOZART ~

作品情報

監督・キャスト

監督: ルネ・フェレ
キャスト: マリー・フェレ、マルク・バルベ、ダヴィッド・モロー、デルフィーヌ・シュイヨー、クロヴィス・フワン、サロメ・ステヴナン、リザ・フェレ

日本公開日

公開: 2011年4月9日

レビュー

☆☆☆

2012年2月5日 DVD観賞

 

マリア・アンナ・モーツァルトは、かの有名なあのヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの姉である。モーツァルトは7人兄弟だったが、マリア・アンナの他の兄弟は全て幼いころに亡くなった。

タイトルの「ナンネル」は、マリア・アンナの愛称。

モーツァルト家には、現代まで続く子孫がいない。モーツァルト本人に関する逸話、伝記は数多く残されているが、彼の姉に関する記録はあまり数が無い。

しかし、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの偉業を世に残したのは、この姉の功績である。弟の死後も、彼女は弟の陰で働き続けた事になる。

あらすじ

18世紀中頃のヨーロッパ。父レオポルト(マルク・バルベ)の薫陶を受け、3歳から音楽を学んでその才能を開花させた14歳のマリア・アンナ・モーツァルト、通称ナンネル(マリー・フェレ)には、11歳の弟ヴォルフガング(ダヴィッド・モロー)がいた。3年半をかけてヨーロッパを巡る長い演奏旅行のなか、各地の演奏会で“神童”と絶賛されるヴォルフガングをレオポルドは溺愛していた。一方ナンネルには、ヴァイオリンに触れることさえ禁じるのだった…(Movie Walkerより引用)

ナンネルの青春物語

この映画は、そんなヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト関連の偉業には全く関係なく、ただ、1人の若い女性としてのナンネルの青春物語になっている。

だから、ナンネルの生涯に渡る伝記を期待して観た方にとっては、期待外れかも。
 
「えっ。こんな所までしか描かないの?」
 
という感じで終わっちゃいます(汗)
 

しかし、「こんなこと」程度の話ではない。この作品では1人の女性の恋と、思い通りに生きられない鬱屈した青春と同時に、現代にも通じる家族というしがらみの問題が描かれている。
 

時代が違うとは言え、自分の望みどおりに行くように子供の頭を抑えつけ続ける親。
 

園子温監督が「紀子の食卓」「愛のむきだし」で描いているのと同じテーマがこの作品の中にも埋め込まれているのだ。

 
この人の生涯が、いかに親の影響を受け親に手綱を取られて動かされてるか、これからご覧になる方はそこを考えながら見てみていただきたいと思います。

 
子どもは親を選べず、親の力は自分が思っているよりもずっと強大なもの。

兄弟がいればなおの事、比べられれば比べられるほど子供は苦しい。
 

『ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路』感想

 

ナンネルの音楽帳

劇中にも登場する「ナンネルのための音楽帳」は実在する。2人の父、レオポルトがナンネルにも音楽(ピアノ)の英才教育を受けさせていたことは事実だと分る。

1759年~。『ナンネルの音楽帳』はレオポルドがウォルフガングの姉マリア・アンナ(愛称ナンネル)の練習用に書いた曲集。当初は41曲からなり、中には他人の曲も含まれていた。後にウォルフガングの曲が2曲加えられて43曲になった。すべて短い簡潔な曲である。(「YAMAHAピアノレパートリーガイド」より引用)

女性の夢や可能性を認めぬ時代背景

ストーリー的には少し物足りない印象はあるものの、音楽や当時の衣装、宮廷の雰囲気や調度は堪能でき、この当時の女性がどんな扱いだったのかというのもお勉強になる。

 

18世紀ロココ時代のヨーロッパが好きな方には楽しめる1本。

 
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以下ネタバレ感想

 
ナンネルに弟ほどの音楽的才能が本当にあったのかどうかは、解らない。

 
この当時、女性は作曲の勉強はさせてもらえなかった。(ヴァイオリンも「はしたない」と思われていたとは初めて知った。)

 
もしも、ナンネルがヴォルフガングと同じだけの作曲の勉強をしていたら…

というのは、歴史IFの話…
 

この作品では、結局、ナンネルの作曲への情熱は恋と共に燃え、恋と共に尽きてしまった事になる。

 
お父さんが常にナンネルを押さえつけていたから…
というのが表面的な見方だけれども、このお母さんもなかなかクセモノなのだ。
 

好きなようにやりたいからと独立したナンネルは、結局恋に破れ、母からの手紙でホームシックになったように家族の元へ戻ってしまう。

しかし、これが、私にはただのホームシックには見えない。

母からの手紙はずっと縛り付けていた娘への「帰ってきてよ」という呪文であり、ナンネルはそれに動かされて家へ帰る。

 
家族でずっと一緒なのが私の幸せ。

と、母はいう。

子どもの独立を望まない親の呪縛…。
 

ヴォルフガング・モーツァルトが奇行の持ち主、変人と言われていたのは有名な話だが、これも家族に縛り付けられた少年時代の影響を感じる。

大人しく見える姉の方も、恐らくは同じだけの「爆発しきれない何か」を抱えて育ったに違いない。

 
でも、親は子供たちにそれなりの大きな愛を注いで育てた。その方向が間違っていたとは誰にも言えない。

だって、子育てとは、それほど難しい物なのだから。

 
ナンネルは、この後、父のいうとおりに子爵家へ後妻に入る。ヴォルフガングは父に反発しつつ、自分で選んだ妻と結婚する。

 
2人とも結婚生活が充分幸せだったとは…言えない気がする。

 
ヘタに育てられた子供は、自分の家族も上手に作ることが出来ない。
いつの時代も、それだけは変わらないのである。

 
しかし、あんな恰好で狭い馬車で寝る旅生活って絶対に身体に悪い…
 

そして、この昼メロのような日本語タイトルは一体…?(笑)

 
主役のマリー・フェレはルネ・フェレ監督のお嬢さんだそうです。三吉彩花ちゃんにちょっと似た美少女。

 
王太子との恋は恐らくフィクションなのだろうが、そういう事もあった「かも」、知れない。

音楽に仕事に恋に、様々な制約を受けた時代の女性の物語。

 

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