『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』フィクションっぽくても音楽は本物

パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

原題 : ~ THE DEVIL’S VIOLINIST ~

作品情報

監督・キャスト

監督: バーナード・ローズ
キャスト: デイヴィッド・ギャレット、ジャレッド・ハリス、アンドレア・デック、クリスチャン・マッケイ、ジョエリー・リチャードソン、ヘルムート・バーガー

日本公開日

公開: 2014年7月11日

レビュー

☆☆☆

2015年5月9日。DVD観賞

ニコロ・パガニーニ

パガニーニは19世紀イタリアに生を受けたヴァイオリン奏者であり作曲家である。7歳から父や専門教師にバイオリンを学び、13歳にはもう学ぶことがなくなったというからその天才っぷりが偲ばれる。
 

その鬼才バイオリニストを現代の鬼才、デイヴィッド・ギャレットが演じる。

バイオリンの音色好きにとっては必見…いや、必聴…ストーリーは、どうでもね…。

あらすじ
1830年のイタリア、並外れた才能を持ちながらも不遇の日々を送るバイオリニスト、パガニーニ(デイヴィッド・ギャレット)の前に突如現れたウルバーニ(ジャレッド・ハリス)は、彼を著名なバイオリニストにしてみせると約束。ウルバーニはさまざまな手段を用いて名門劇場での公演を成功に導き、パガニーニは一躍富と名声を手に入れる。成功後も放蕩(ほうとう)生活を送る彼のもとに、ロンドンデビューの話が舞い込む。(シネマトゥデイより引用)

パガニーニのほんの数年を描いたもの

ストーリーの方は普通にパガニーニの伝記…と言っても彼の一生をなぞるわけではなく、1830年辺りからの数年、ロンドン公演を切り取って描いた物である。

 

1830年といえば、パガニーニはすでに50近い。48歳かな。主演のデイヴィッド・ギャレットが全く50には見えないので(演出自体も特に老けさせようとしているフシがないし~…)ちょっと混乱するのだった。

 

冒頭の音楽家として落ちぶれた感もよく解らなかったな…

だ、だって、50までの間に国立管弦楽団の主席ヴァイオリニストになったりナポレオンの妹と浮名を流したり、ウィーン公演を成功させたりシューベルトなどの音楽家に影響を与え、ゲーテなどの文豪とも会って……と、充分な名音楽家っぷりのはずなのに…何せ50だから~。

 

しかし、この映画のパガニーニはまるで10代か20代の若造のようなのだった。どうやら無名で世間から理解されていないらしい。…で、ウルバーニというプロデューサー&マネージャーを得る。

ウルバーニさんとは実話なの?

「キミの芸術は斬新過ぎて観客が反応できないのだ。聴衆を歓喜させろ。まず物語を作れ。」

 
このウルバーニさん、まるっきり架空の人物というワケでは無く実在する従者・ウルバーニと他の人物を掛け合わせて作った半実物という事らしい。

 

まるで恋人のように親のように先生のように面倒を見てくれたこの男も実は悪魔っぽくて、ちょっと『アマデウス』のサリエリさんを連想してしまうのだが、最終的には……よく解らない人だったわ。。

 
まぁ…そんなこんなでストーリーに関しては伝記として中途半端、恋愛ものとして中途半端、ミステリーとして中途半端と何だかな…って感じだが、鬼才が演じる鬼才の音楽…それはもう、それだけは本物なのだ。

デイヴィッド・ギャレット監修の音楽の力が凄い

ストーリーや脚本が★1つだとしても、この音楽部分で★が3つくらい付いちゃうくらい魅せられる。それは音楽の力だけでは無く、魅せる演出と映像もあるからであって、その点ではこの映画はやはり凄い映画だと思うのだった。

 

パガニーニーの伝記なんかどうでも良くてもデイヴィッド・ギャレットがどうでも良くても、ヴァイオリンの音色が大好きだという方には心からお薦めしたい。

音楽題材の映画は音楽を魅せる力があればそれだけで持っていくから本当に凄いよね。

デイヴィッド・ギャレットが音楽監修したというアリアやヴァイオリン協奏曲のアレンジも聴き応えある。「魔王」があんなになるってのも驚きだわ~。

劇中でシャーロットが歌うアリアの原曲「パガニーニのヴァイオリン協奏曲第4番・第2楽章」。聴き比べるのも一興。


パガニーニ: ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ短調 – 第2楽章(Paganini: Violin Concerto …

 
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以下ネタバレ感想

ライブシーンが圧巻

あの酒場での即興ライブシーンが泣けるほど好き。

天才が聴衆に受け入れられる瞬間。悪魔に魂を売った男の音楽ではない。神を見ているようだった。あの場に居た人間はみなそう思ったはずだ。

この人が奏でる音をもっと聴きたい…。大衆のその気持ちがロンドン公演を成功させる。上手いパフォーマンス。ウルバーニが居なくてもこの人には充分に神がついているように見えた。

 

あの描写だと結果的にはウルバーニがスキャンダルも仕掛けたようにしか見えなくて。(水銀もあんたが飲ませただろって感じだが…)牢まで迎えに来たシーンでは本当にアマデウスを迎えに来る死神のように見えたわ。

だから、ウルバーニは元々パガニーニに恨みがあり、全ては復讐だったのか…とか思っていたのだけれども、そういうのは全く見えないまま終了~…ぇ…あのシーンはただの思わせぶり

 
史実、16歳でパガニーニと駆け落ち計画まで行ったらしいシャーロットをパガニーニが最期の時まで愛していたのかは解らない。

けれども…そんなにロマンチストかしら。そんな純愛はあまり悪魔的ではないな。。
 

 


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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