『バイス』「副」を意味するのか「悪徳」を意味するのか

バイス

原題 : ~ Vice ~

『バイス』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: アダム・マッケイ
キャスト: クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、ケイリー・スピーニー、アリソン・ピル、サム・ロックウェル、スティーヴ・カレル、タイラー・ペリー、ジャスティン・カーク、リサ・ゲイ・ハミルトン、シェー・ウィガム、エディ・マーサン、ビル・プルマン

受賞

ゴールデングローブ賞 主演男優賞(クリスチャン・ベール)

第91回アカデミー賞 メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞(他8部門ノミネート)

日本公開日

公開: 2019年04月5日

レビュー

☆☆☆☆

劇場観賞: 2019年4月8日

 

“Vice president” とは「副大統領」を意味する単語だ。

しかし、同時に”vice”は単独だと「邪悪」「悪徳」を意味する。

ディック・チェイニーの場合は……。

あらすじ

「バイス」:バイス・プレジデント(副大統領)を指すだけでなく、“悪徳”や“邪悪”という意味もこめられている―ワイオミングの田舎の電気工から“事実上の大統領”に上り詰め、アメリカを自在に支配し、アメリカ史上最も権力を持ったチェイニー副大統領の姿の前代未聞の裏側を描いた社会派エンターテイメント!…(Filmarksより引用)

ジョージ・W・ブッシュ時代の副大統領

ディック・チェイニーはジョージ・W・ブッシュの下で副大統領を務めた人物。

ブッシュは色んな意味で有名な大統領であり、日本人にもお馴染みの顔だろう。

しかし、よく似てるよね……すごいわ。さすがのメイクアップ賞。

 『バイス』感想 ブッシュ

ブッシュ(正しくはJr.)の時代の副大統領ということは、あの9.11からイラク侵攻の間を務めていたということになる。

あまり知られていないディック・チェイニーが一体どういう人物で、どういう政治をしたのか。これは彼の伝記的映画。

ちなみに、ブッシュJr.もチェイニーも御存命である。生きている内にこんな映画が作られちゃうなんて、アメリカって黒いのかオープンなのかよく分らない……。

史上最悪の副大統領(Vice)

ブッシュJr.がイラク戦争に際して、どのようなことを行ったのかは『記者たち』のレビューにも書いたのでここでは割愛させていただきます。

とても詳しく知りたい方はWikipediaでもジックリ読んで下さい。(全て真実とは限らないけれども)

この作品では、ブッシュの悪評の元となった政治のほとんどは、チェイニーが行ったように描かれている。

法律を曲解して勝手に変えたり。副大統領権限を作り出したり。全国民の通信データを傍受。イスラム国(ISIL)が出来上がったのもこの人のせいということに……。

恐い恐い。国のトップが一体何をやっているのかよく分らない、憲法もいつ勝手に改正されてしまうか分らない。日本も他人事ではない話。

ストーリーはコメディ仕立て

しかし、とことんブラックだが、作品自体はほぼコメディ仕立てなのだ。

ディック・チェイニーの人生は、どこの誰なのかよく分らない「ナレーションの彼」によってペラペラと語られていく。彼は一体誰なのか……というミステリー付き。

とりあえず、エンドロールに入ったからって帰らないでね。と2回言っておきます。

 
眉間にシワ寄せながらだけれども、あははーーやれやれ……と見終って、なぜかエンドロールでポロポロ泣いた。

人の人生ってどうしてこんなに痛くて切ないのだろう。

それでも、この人を羨ましく思う。

「正しい事をした」と言い張り謝らず、そしてずっと信じて寄り添う妻がいる。

メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞の凄さ

く…、クリスチャン・ベールって誰だっけ?これは私が知っているクリスチャン・ベール??

と、劇中まじまじと主演俳優を見て「クリスチャン・ベール」を思い出そうと頑張っちゃった。何度か(笑)

帰ってから思わずググったけれども、よくよく考えたら『アメリカン・ハッスル』よりはクリスチャン・ベール…
『バイス』感想 意味は「副大統領」そして「悪徳」

もっとも、クリスチャン・ベールはこの役のために20キロ近く増量したというから、メイクの力だけではなくて、本当に凄いプロ根性。

そして、もちろん、「モノマネ」に終始しているわけではなく、役者さんたちの演技が凄いのだ。

何を考えているのかよく分らないチェイニー、おぼっちゃん丸出しのブッシュJr.、強く優しく夫を支え続けるリン。

本当に。そこにこの人たちがいて人生を再現するように。

だから、面白いし。
だから泣けてしまうの。

 
青春時代から人生の絶頂期から衰退まで……。家族の物語でもある。

 
政治上の事は、『記者たち』と併せて観たい1本。順番的には、たぶんこっちが先の方がいいかなと。

 


以下ネタバレ感想

 

ディック・チェイニーの事もよく知らなかったくらいだから、妻のリンの事も知らなかった。

まさに、この妻の叱咤激励によって動かされた人生だったんだなぁと。

つまり、そこには家族への愛があるわけで。

次女と長女の下りは気の毒になってしまった。

兄弟の仲が悪くなるほど親の心を痛める事はない。

 
心臓の病と闘った人生でもあったんだなぁ。

まさか、まさか、ナレーションの「彼」が臓器提供の「心臓」だったとはジェシー・プレモンスさん、凄いセリフ量、お疲れ様でした。

 
私は謝らない!
すべき事をしただけだ。

 
「すべき事」は、純粋に国のためを思っての事なのか。

それは国民に本当に益をもたらせたのか。

人生の終わりまでに答えが出るといいね。

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