『清須会議』雑な登場人物解説つき

清須会議

作品情報

監督・キャスト

監督: 三谷幸喜
出演: 役所広司、大泉洋、佐藤浩市、小日向文世、篠井英介、鈴木京香、妻夫木聡、伊勢谷友介、坂東巳之助、剛力彩芽、中村勘九郎、浅野忠信、寺島進、阿南健治、松山ケンイチ、でんでん、市川しんぺー、浅野和之、染谷将太、瀬戸カトリーヌ、近藤芳正、中谷美紀、戸田恵子、梶原善、天海祐希、西田敏行

日本公開日

公開: 2013年11月9日

レビュー

☆☆☆☆

2013年11月11日。劇場観賞。

極めて真面目な歴史大河

今までの三谷喜劇を期待していくと、拍子抜けするかも知れない。

ゲラゲラ笑えるほどの楽しさはなく、ホッコリする幸せ感もなかった。

三谷幸喜監督の映画は幸せをくれる映画だと思っている。
今までの作品では、いっぱい笑ってホッコリして幸せな気持で劇場を後にしてきた。

今回、見終わって一番初めに出た感想は「真面目か」

…というか…割と史実に忠実な、ちょっと面白い歴史もの。

ちょー簡単な織田家周りの人物解説

ストーリーは、ああ、こういう事もあったかも知れないねぇ…という、まんま「清州会議」。

この辺の歴史や人物に関する説明はほとんどないので、教科書の「信長」→「秀吉」→「家康」くらいしか頭に残っていない歴史に興味のない方にとっては意味解らない所が多いのではないかと心配する。

逆に、この辺の歴史に詳しい方にとっては、ほとんど想定内の事しか描かれていないので物足らないのでは~と心配する。

いずれにしても…心配である。
これも、三谷作品のファンだからゆえ…。

本来ならば「歴史が嫌いな人は見ないでしょ」と思うような映画だが、たぶん多くの人が期待して見に行くはずである。だって、三谷作品だから。

先ほども書いたが歴史背景の説明がほとんどないので、例えば、何故お市の方がそんなに秀吉を嫌っているのかなど、知らずに見ている方にとってはポカーーンだと思うのである。

中盤以降…いや、かなり最後の方でチラっとは語られるんですけどね。

(もっと言っちゃうと「お市の方って誰」って人すらいるのでは~ )

そんな方のために、一応、ものすごく雑な登場人物の説明を。(ものすごく雑です)
長いので、今さら必要ないって方は飛ばしてください。

・柴田勝家(役所広司)…織田信長の父・信秀の時から織田家に使えている重鎮。
本能寺の変の折には越中国東部制圧中で京都に駆けつけることは出来なかった。無骨・実直な性格といわれ、武勇に優れていた。

・羽柴秀吉(大泉洋)…教科書に出てくる「豐臣秀吉」。清州会議の時はまだ「羽柴」姓を名乗っている。百姓の出でありながら知略によって信長の草履取りから出世していったと言われる。
本能寺の変の折には備中高松城を攻めていたが、一番に京に駆けつけ明智光秀を追い詰めている。清州会議での発言権が大きいのはこの功績から。
智に優れた人物で、取り入るのが上手く、いわゆる「人たらし」。ちなみに「羽柴」という姓は丹羽長秀と柴田勝家から一字ずつ貰った物である。

・丹羽長秀(小日向文世)…古くから信長に仕えた家臣であり、柴田勝家と共に織田家の双璧と言われていた重鎮。 本能寺の変の折は四国出陣の準備中で兵力が整わず、一番近くに居ながら駆けつける事が出来なかった。
性格は真面目で信長の信頼も厚かった。武勇に優れ、柴田勝家と並ぶ猛将であったといわれている。

・池田恒興(佐藤浩市)…母は信長の乳母であり、幼いころから織田家に仕えている。
本能寺の変の折には秀吉と合流して光秀を攻めている。

・前田利家(浅野忠信)…後々は豊臣政権五大老の1人だが、この作品の段階では柴田勝家の与力である。秀吉とは古くからの親友ともいえる間柄で、夫婦ともに仲良く付き合っていた。

・寧(中谷美紀)…秀吉の妻。当時では珍しい恋愛結婚であり、若い時から臨終まで秀吉を支え続けた。

・お市の方(鈴木京香)…織田信長の妹。この時代、戦国一の美女といわれていた。聡明であったとも伝えられる。
20歳くらいの時に織田浅井同盟のために近江国の浅井長政に嫁いだ。政略結婚だが美男美女の夫婦で仲睦まじかったといわれ、二男三女を儲ける。(男子は側室の子という説もあるが、ここでは実子ということで)
織田と浅井が決裂した際に、お市は三女と共に夫と別れて館を出る。
敗戦した長政は自害。三女はお市と共に助けられたが、別に逃げた長男・万福丸は捕まり、信長の命を受けた秀吉によって処刑される。張りつけ串刺しの刑だったといわれている。
劇中で、お市が秀吉を嫌うのは、この過去があるから。

・松姫(剛力彩芽)…甲斐国・武田信玄の娘。信長の嫡男で本能寺の変で信長と共に命を落とした織田信忠の…正式には婚約者である。
史実では婚姻に至らぬ内に織田と武田の同盟は崩れ武田は滅亡したので、松姫は織田信忠の正室ではない。(劇中に出てくる三法師の生母は信忠の側室であったという説の方が有力)
ただ、この作品では、たぶん正室の扱いになっているらしい。そして三法師の生母ということになっている。…だから、そう思っといて下さい。
つまり、作品中では信長の長男の嫁であり、信長の孫である三法師の母。

「清州会議」とは

「清州会議」は、天正10年6月27日に尾張国の清洲城(現在の愛知県清須市)で行われた実際にあった評定である。

目的は、名目上は本能寺の変で亡くなった織田信長の後の織田家をどうするかという会議。

実際には、集まった重臣たちが推す織田家の跡取り候補をはっきりさせる事で自分たちの立場と所領を取りあう…いわば権力争いの場。 武具を持たない戦である。

個人的には、この映画が公開されると決まった時から、ずっとワクワクして待っていた。

もう~これを見ないで死ぬことはできないってくらいの勢いで期待していた。
ちょっと期待値が上がりすぎていたのである。

ワンシチュエーションドラマは三谷監督のお得意だし、歴史的にも秀吉と勝家の織田家内での立場が逆転するとても面白い会議。どんな会話劇を見せてもらえるんだろう…と思っていた。

結果的には…ちょっと退屈なくらいだった。
大河ドラマだったら1時間で終わるような会議だから…2時間持たせるのは長かったのかも知れない。

自分が有利なように裏で手を回していく秀吉の工作シーンが、もう少し面白いと思っていたんだけどな…。

もっとも、史実通りの結末でなければならないので、どうやったって意外性はないよね。
ただただ、勝家の不器用さが気の毒なストーリーだった。

キャスト陣の魅力

見どころは誰1人として不満がないくらいの豪華なキャスト。これはもう、堪能した

信長の次男・織田信雄。暗愚の殿…と言われていた「うつけ」の次男。
天真爛漫な笑顔、アホっぽい妻夫木くん、新鮮。

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個人的には、この作品一番のイケメンだった気がする…いや、人格的に。
前田利家。浅野忠信さん。

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セリフ回しは、ちょっと…だけど、表情が不気味で良かった武田の姫、松姫。剛力ちゃん。

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私は役所さんがずっとずっと好きなので~♥…本当は殺陣をぜひ拝見したかった。刀を持たない戦だから仕方ないけど。

そして、大河ドラマ「新選組!」ファンにとっては、もうウキウキするしかないキャストだもんね。鈴木京香さんはここでもお梅さんらしく、中村勘九郎@ヘースケはここでも真面目爽やかで、鴨@佐藤浩市さまは…ここでは気が弱くて平和主義。

あとは、中谷美紀さんが可愛くて。
女性キャストの中では中谷さんだけが能面じゃないので、新鮮だった。すごく若く見えたし、いきいきとしていた。

洋ちゃんはもういうまでもなく。小賢しくて人たらしで狡猾な猿、そのもの。

三谷さんのキャスティングは当て書きだとよく言われるけれども、当て書きでこんなに実在の歴史上の人物にハマっている気がするんだから、すごく不思議。

キャラが確立していた。みんな生き生きとしていて、そこにその人がいるようだった。

…だからやっぱり…ちょっと退屈に感じられてしまうのは飛びぬけたセリフの妙がなかったからかな。ある程度解っている歴史は「どこかで見たことがある話」と同じなので。

三谷解釈の面白さと歴史に対するリスペクトを感じる作品である事は確か。

すっっっごく笑える喜劇は期待せず、割と正統派の歴史ものとして楽しむ事をお薦め。

 


以下ネタバレ感想

 

一番笑ったのは旗取りのシーンね。
どこまで走っていくんだ、あんた…。

柴田勝家はお市の方にホレていたという話ではあるけれども、あそこまでお馬鹿ではなかっただろうと。

勝家がお市にホレこんでいるシーンは、面白いよりも心配してしまった。あまりに不器用なので。最終的にはそれがアダになって丹羽に投げ出されたようなもんだし。

勝家は確かに武勇に優れ真面目で一本気で織田のために良かれと思う道を選んでいた。けれども、時代は流れる。剣が強いだけでは勝てない頭脳の戦。秀吉はそれが出来る人だった。

新しい織田家には要らない…と言われた時の勝家が悲しくて…。
会社にずっと尽くして来たのにリストラされる老社員のようで。

代わりに手に入れた「戦国一の美女」の本心は「秀吉が一番いやな男」だから嫁ぐ。

本当に…真面目は損か…と思った。この辺は、どれだけ時代が流れてもきっと変わらないんだな。
丹羽さんの「女に対する心得」に、ホッとして涙が出た。
友情が無くなったわけではない。

…けれども…後には勝家はお市と共に戦火に焼かれながら自刃するんだけどね。

その時にも、たぶんこのお市の本心は「猿に助けられるくらいなら猿が一番嫌いな男と死ぬ」なんだろうなぁ…。

ホント…真面目不器用な人間は救われない。

 

 


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