『THE UPSIDE/最強のふたり』リメイク版は「誰も寝てはならぬ」

THE UPSIDE/最強のふたり(人生の動かし方)

原題 : ~ The Upside/The Untouchables ~

『THE UPSIDE/最強のふたり』

作品情報

監督・キャスト

監督: ニール・バーガー
キャスト: ケヴィン・ハート、ブライアン・クランストン、ニコール・キッドマン、ゴルシフテ・ファラハニ、ジュリアナ・マルグリーズ、アヤ・ナオミ・キング、スザンヌ・サヴォイ、テイト・ドノヴァン、アマラ・カラン、ジュヌヴィエーヴ・エンジェルソン

日本公開日

公開: 2019年12月20日

レビュー

☆☆☆☆

劇場観賞: 2019年12月04日(試写会)

 
超有名な仏版のハリウッドリメイク。実話原作があるので大まかな内容はほとんど変わらない。

いい加減に生きてきた黒人と、生をあきらめた富豪の障がい者が出会うことによってお互いの人生をUPさせていく。前向きになれるストーリー。

見ていて気持ちのいい展開だったし、仏版を未見の方は引っかかることも特にないと思う。

あらすじ

スラム街出身で無職、妻と息子にも見放されたデルは、ハンディキャップを持つ大富豪フィリップの介護人として働くことになる。秘書のイヴォンヌを始め周囲は、キャリアも教養もなくお調子者のデルに反対する。だが、お互いに一人の人間として接し、刺激し合うふたりは忘れていた充実した日々に満たされていく。しかしフィリップの心には、誰にも言えない秘密があった。そんなある日、ふたりを揺るがす出来事が起きてしまう…(Filmarksより引用)

実話ベースのハートフルストーリー

オリジナルは2011年(日本では2012年)公開されたフランス映画。スラム街出身で介助人として雇われた黒人青年役オマール・シーは、この作品により各種映画賞で主演男優賞を受賞している。

事故で首から下の機能を失くした大富豪の介助役として介護資格も経験もない不真面目な黒人青年が雇われ、その出会いがお互いの人生を豊かにしていくというハートフルストーリーは、実話がベースにあるだけにハリウッドリメイクされた今作もオリジナルも変りはない。

メイキング・ドキュメンタリー”本物の最強のふたり”

 

ポチポチとオリジナルと違う点があるものの、個人的にはこのリメイクも好き。
 
障がい、人種、貧困、ままならぬ人生を受け入れることが難しい人たちが、正反対の世界を生きる相棒と出会って自分の世界を広げる。偏見のない目線はフラットで、行動は自由だ。

貧民は富豪の暮らしに卑屈さを見せず、障がい者は自由に走り踊る心を得る。こんなに羨ましくて幸せな物語は無い。

キャストもバッチリ

オリジナルのドリスも明るくて可愛くて大好きだったけれども、ケヴィン・ハートのデルもとても良い。

失業手当だけ貰えればそれで良かった黒人青年が、「介護」という仕事を抵抗なく楽しんでいく様には見ていて力が抜けていく気分。現実はもっと厳しいけれど、デルの気負わない介護は見習いたいものがある。

ブライアン・クランストンのフィリップはオリジナルよりも人生を捨てている感じが出ているように見えた。

「自分なんか、どうでもいいからデルを雇った」寂しくて意固地な老人を表情だけで作る上手さ。彼の表情を見ているだけで泣けてしまうシーンがいくつもあった。

そして、ここに彼女か……のニコール・キッドマンも凄く好き。美しいのに頑なで、でも優しさに溢れている秘書。こういう「居そうなキャラ」のニコちゃんも尊い。

 
ただ、オリジナルにものすごく入れ込んでいる方は、改変された部分に大きな違和感を持つかも。(不快感はないと言いつつ、私でも「このリメイクの目的は何なのだろう」とは思ったもの……)

このリメイクの目的は

この実話を映画化した目的は、間違いなく、様々な偏見の目を取り払うことだと思うのだ。どんなマイノリティの世界に居る人もみんながフラットに接して、みんなで高みに上れるように。オリジナルはそういう映画だった。

リメイクもそのテーマは変わっていないだろう。なぜにハリウッドかといえば、フランス映画よりも遥かに観る人口が増えるからではないのかな。より多くの人たちに伝わるように。そういう事であってほしい。

オリジナル(フランス版)とハリウッド版比較

ここではネタバレしない程度。

  • 黒人青年の名前が違う。(「ドリス」から「デル」へ。発音の問題)
  • 黒人青年の家庭が違う。(「息子、兄」から「夫、父親」)
  • 秘書・イヴォンヌの立ち位置が違う。(下の項目にも関係)
  • 文通相手の描き方が違う。

フランス版は移民問題に切り込んでいて、こちらは人種問題に変換するのかなぁと思っていたけれども、それほどではなく。

ストーリー運びは全体的にこのハリウッド版の方がドラマティックになっている。(そのためのニコちゃん)

 
後は、音楽の使い方が違う。オリジナルも良かったが、こちらも良い。

個人的には、最近ちょっと「夜の女王のアリア」が脳内リピートする出来事があったので、タイムリーだった(笑)聞けて良かった。

あれを聞いて夢中になっちゃうデルは可愛い。

 
冒頭にも書いたけれども、フランス版を観ていない方は、全く無関係なので特にフランス版をおさらいする必要はない。むしろ見ない方がハリウッド版を楽しめるかも。

比較したい方は、ぜひどちらも楽しんで。

どちらも、素晴らしい人間ドラマ。

 

 


以下ネタバレ感想

 

『魔笛』をベラベラ喋りながら見て、馬鹿にしたり寝たりしていたのに、アリアに夢中になっているシーンが最高に好き。あれぞ、新しい世界に触れて感動するシーンだよね。デルの表情が子どもみたいに可愛かった。

絵画も。
アメリカ版ならではのバスキア(笑)

「ならでは」描写は楽しい。
 

で、「ならでは」の唯一の不満は、文通相手描写だと思うのだが……。

あれは、フィリップがニコールに行くための展開だよなぁ……と思うと、ちょっと悲しかった。

あんな事が切っ掛けでフィリップが悲しみ、デルにも失意を与える展開は、やっぱり盛り上げ好きなハリウッド版ならではという気がする。

最終的にイヴォンヌが受け止めるとなると、やはり「お馴染みの、よく事情を知ってる人しか障がい者は受け入れられない」ということになってしまうよねぇ。

その方が現実に近いということなのかも知れないけれど。

その分、デルの家族に訪れた幸せが夢のようなので、まぁいいのかな。

……と思っておく。

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