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『アフターマス』ユーバーリンゲン空中衝突事故を描く

アフターマス

原題 : ~ Aftermath ~

作品情報

監督・キャスト

監督: エリオット・レスター
キャスト: アーノルド・シュワルツェネッガー、スクート・マクネイリー、マギー・グレイス、グレン・モーシャワー、マーティン・ドノヴァン、ケヴィン・ゼガーズ、ハンナ・ウェア、テレサ・クック、キム・エヴァンズ、マリアナ・クラヴェーノ、モー・マクレー、ラリー・サリバン、クリストファー・ダーガ

日本公開日

公開: 2017年09月16日

レビュー

☆☆☆

観賞: 2019年5月26日(「アフターマス」 Amazonプライム配信にて観賞)

 
2002年7月に起きた実在の事故・ユーバーリンゲン空中衝突事故と、その後に被害者遺族が起こした事件を題材に描いた作品。

映画には、実在しない結末が加えられている。こんな結末が必要なのか?とも思ったのだけれど、たぶん、制作が一番描きたかったのはこれなんだろうな……。

このレビューは短感です。実際の事故と事件に関することばかり書いてありますが、それ自体がネタバレになるので、まっさらな気持ちで観賞したい方は見てから読む事を推奨します。実話には無いオリジナルの結末部分のみネタバレ欄へ。

あらすじ

建設現場で働くローマンは、数か月ぶりに帰ってくる妻と身重の娘を心待ちにしていた。しかし、妻と娘が乗っているはずの便は到着する様子はなく、空港に迎えに行ったローマンは、空港の管理会社から衝撃の事実を聞かされる。それは、家族が乗った飛行機が空中で衝突事故を起こしたというものだった…(アフターマス Amazonプライム配信より引用)

フジテレビ系「奇跡体験!アンビリバボー2時間スペシャル」を見て

2019年5月23日にフジテレビ系情報バラエティ番組「奇跡体験!アンビリバボー」でこの事故についての特集が組まれ、その時にこの映画の存在を知った。

多角的な視点でこの事件を知りたいと思って観賞したのだけれども、事故の顛末自体は「アンビリバボー」の方がずっと詳しく、理解しやすかった。

毎週見ているわけではないが、「アンビリバボー」という番組では毎回事件の再現ドラマが放送されていて、大袈裟な部分もあるけれども見応えもある。

この日の放送では、再現ドラマと共に当時の事故内容が詳しく図解されており、恐ろしさと悲しさで涙が出た。

『アフターマス』では不親切なほど事故の詳細は描かれないので、映画だけ見た人は理解できたのかな、と思ってしまった。この日の放送内容は番組の公式サイトでどこよりも詳しく書かれているのでどうぞ。

奇跡体験!アンビリバボー - フジテレビ
奇跡体験!アンビリバボー - オフィシャルサイト。毎週木曜よる7時57分放送。世界中の幸福な奇跡、常識や科学では解明できない超常現象、怪奇現象などアンビリバボーな話をお送りします。

ユーバーリンゲン空中衝突事故とは

上記のページに詳しく書かれているけれども、簡単にまとめるとこんな感じ。

  • 2002年7月1日21時35分、ドイツ南部のユーバーリンゲン上空で、バシキール航空2937便(乗員・乗客69名)と貨物便DHL611便(乗員2名)が衝突・墜落。71名全員の命が失われた。
  • 原因は管制ミスだったが、管制を行っていた民間航空管制会社・スカイガイド社は、事故当初ミスを否定。2937便のロシア人パイロットが英語を理解しなかったのではないか、機にTCAS(衝突防止装置)が搭載されていなかったのではないかと主張していた。
  • その後の調査で、管制官のミスで両機が同じ高さで飛ぶように指示された結果の事故である事が判明する。
  • スカイガイド社による人災

    しかし、当日はこの管制官ばかりを責めることはできない状況であった。

  • 業務は2人1組で行う規則だったが、1人が出勤するともう1人は休憩に入るという事が暗黙の了解になっていた。これはスカイガイド社が人員削減を行っていたため管制官の業務がハードになっていたから。
  • この日、1人で業務をしている所に、レーダー更新作業のメンテナンスがやって来た。管制官は電話回線を切ることは断ったが、メンテナンスの作業員は勝手に回線を切断していた。
  • その間にDHL611と高度上昇に関する連絡が取れず。回復してから高度の上昇を指示したが、この時、同じ高度に2937便が入って来ていた。
  • そして同じ高度で飛んだ2機が衝突してしまった。映画ではこの辺についてはバッサリ飛ばして、ローマンと管制官ジェイコブの悲しみと苦しみが描かれる。

    スカイガイド社の管制官刺殺事件

    事故の後、スカイガイド社から被害者遺族に対する謝罪はなく、ただ和解金だけが提示された。「アンビリバボー」でも酷い態度だったが、『アフターマス』の方はさらに高飛車な描き方だった。

    事故では「謝ったら負け」みたいな話がよくあるけれども、これだけの事故でこの態度は、通常の神経ならばなかなか出来ないと思うほど。

    人は謝られなければ憎しみを増す。

    理不尽なクレームモンスターは世に多いけれども、クレームの大部分は初期対応の悪さが原因なのよね……。

     
    ローマンは記者を使ってジェイコブの居場所を突き止めていたけれども、「アンビリバボー」では探偵を雇ったと言っていた。いくらなんでも記者がそんな軽率な真似をするとは思えないので、お金を使って調べさせたのが史実なのだろう。

    家族の写真を出して「謝れ」と言ったが管制官は写真を放り捨てた。

    実際の事件でも、建築士も管制官も共に事故からの精神状態が通常では無かったそうなので、「写真を捨てた」というのも恐怖に駆られて払いのけてしまったのだろう。刺した方も精神的ストレスによる事件ということになっている。

    映画の評価としては…

    この事故は、人の命を預かる仕事に対するスカイガイド社の適当さが引き起こした人災だし、その後の事件も人の憎しみや悲しみを甘く見ていたスカイガイド社が引き起こした人災だと思う。

    シュワルツェネッガーが主演だと聞いた時、もしかしたら派手に暴れてしまう映画なのだろうかと危惧したけれども、抑え過ぎなほど押さえた演技で、悲しみを抱えて静かに怒る人を体現。

    正直、静かすぎる……感情揺さぶられる要素まで抑えてしまった1本。

    事件の概要を知りたい方は、『アンビリバボー』の見逃し配信(あるのかしら)と併せてご覧になった方が良いかと。

     


    以下ネタバレ感想

     

    実際の事故の遺族、ヴィタリー・カロエフは事故当時46歳であり、妻と幼い2人の子どもを失くしている。

    映画では事故に遭ったのは「妊娠中の娘」という設定だけれど、これはシュワルツェネッガーの年齢に合わせたのかなと。

     
    子どもの前で父親を刺すなんて……(実際の事件もそうだったらしいけれども)、と思っていたら、案の定、出所してから復讐される。

    これは映画オリジナルの展開であって、なぜこんなことするんだろう……と思っていたのだけれども。

    復讐したらし返される。
    戦争と同じで、連鎖が止まらない。

    どんな悲しみも復讐では埋まらない。

    言いたい事はそれだったのかな。

     
    実在する建築士ヴィタリー・カロエフは、管制官のピーター・ニールセンを刺殺して5年服役した後、ロシアで英雄のように扱われて建設政策副大臣になったという。

    この辺、一体どういう経緯でそんなことに……と思うけれども、国を挟んだ事件なので報道が過熱する内にそれぞれの国にも心象的に遺恨を生んだのだろうと想像する。

    そもそも飛行機事故で亡くなったのは、ほとんどが数学オリンピックで優勝したご褒美に旅行に招待されたロシアの子どもたちと引率者だった。

    カロエフが起こした事件は、いつの間にか国ごと復讐物語にすり替えられてしまったのかも。

    この映画をロシアが制作したら、また違う目線の物が出来上がるのかも知れない。

     
    まぁ……どう描いてくれてもいいのである。

    人の命を扱う仕事には慎重の上にも慎重を。

    それさえきちんと押さえてくれて、亡くなった方々を冒涜しない内容ならば……。

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    ★前田有一の超映画批評★
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