『渇き。』パパ愛してる。

渇き。

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監督: 中島哲也   
キャスト: 役所広司、小松菜奈、清水尋也、妻夫木聡、二階堂ふみ、橋本愛、森川葵、黒沢あすか、青木崇高、高杉真宙、國村隼、オダギリジョー、中谷美紀
公開: 2014年6月27日

2014年7月2日。劇場観賞

中島監督好きなのに『告白』以来見てないなぁ…と思ったけれども作品自体が『告白』以来久しぶりだったらしい。

ポップな映像と音楽に乗った狂気の疾走。そこは相変わらず。
毒々しいほどのクズっぷりが役者さんの叫びと共に展開される。

2009年の韓国映画『渇き』(未レビュー)も血が描かれたけれども、こっちもある意味「血」の映画。ちなみに無関係です。

血しぶきは飛びます。
そして呪うべきは血の繋がりなのだった。

原作は第3回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した深町秋生氏の小説『果てしなき渇き』。

自分が引き起こした事件が切っ掛けで警察を辞めた元刑事の藤島は、コンビニでの殺人事件に遭遇した後、別れた妻から一人娘・加奈子が失踪したという連絡を受ける。
加奈子の行方を追う内、藤島は娘が想像もしなかった裏社会と関係している事を知っていく。

1年前のクリスマスからストーリーは始まり、さらに過去に遡り、現在に戻り、さらに進み、そして戻り…。

今どこにいるのか迷うほどだが、主人公自身がラリっているので仕方ないのである。
彷徨う時系列と薬と事件と暴力と…「もしかしたら全て妄想なのかも」とすら思わせる不安定さが見る方を不安にさせる。

どんな親だって「自分の子どもに限って」と思っているし、自分の子どもの行動も心も把握なんてし切れない。

けれども子どもは親を映す鏡である。
クズがクズを作り、クズの世界を拡散していく。
その根底にあるのが、恐らくは愛の不足。
みんなが渇いているんだ。

多くの作品に出演し、三谷作品では「かわいいクズ」気味な役所さん史上たぶん最低のクズ。
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こんな大俳優にもの凄い迫力でクズをやられたら、他の方々もみんな負けずにクズをやらなくてはいけない気持ちにもなるだろ……。

ヘラヘラした笑顔が不快な妻夫木くん。この人も大概クズだわ。
國村さんもいるし『パコ』キャスト被ってるよね。
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カラフルなファンタジーだった『パコ』に引き換え、こっちは毒々しいファンタジーだけど。

極めつけのクズだったオダジョ……。
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ベテランから中堅までクズになりきれば若手も漏れなく素晴らしいクズっぷりを発揮する。

『高校入試』から『平清盛』まで存在感を見せてきた高杉真宙くん、同じく『高校入試』で印象的なクズだった清水尋也くん。『告白』では美少女だけど棒だった橋本愛ちゃんの成長っぷり。安定の二階堂ふみ。みんな凄かった。

そして、ここが大事…加奈子@小松菜奈。
なんだろう…この、人を食ったような美しさと可愛らしさとSっぽさ…。
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この役に本当にピッタリだった。スラッとしたスタイル、黒いストレートな黒髪。可憐にして色っぽく、ミステリアスで透明。惹きつけられたわ。

「グロい」という事で賛否出ているらしいけれども、耐性のない方は止めた方がいいのかも。
ホラーに慣れている方にとっては、どうってことはない。

映像的なグロさよりも、誰にも共感できない登場人物のクズっぷりにイライラするかも知れない。
けれども、人間だから。親だから。親の痛々しさはタップリ感じられた。グサグサ突き刺さった。

学生1000円キャンペーンやっているみたいだけれども、子どもに見せても仕方ない気がする。
見なきゃいけないのは「何も解っていない」親でしょう。

 


以下ネタバレ感想

 

 

パパは失踪中。ママは恋愛中。

寂しげにそういうも、本音は何処だか解らない。

神経内科に通う父。娘も同じように世話になっている。
この親、そして、この子。

「愛」それなに?ウケる~。と笑う娘は、一番欲しい物を相手に与えてから奪うモンスターになっていた。

人を傷つけるのが楽しいんだよね。スクールカーストの頂点に君臨しながら、それでも掴めない愛。与えられれば貪りつくす。これはサイコパスなのか。親が悪いのか。

これが自分の娘だったら、どうするだろう

藤島の場合は、結局、よく解らなかった。
愛と殺意が混在するのもまた親だからなのかも知れない。

娘を殺して埋めた教師にだって、そうしてしまうだけの理由はあるわけだが…藤島はそれでも加奈子を殺した女が許せないらしい。

雪の中を掘らせ続けるなんて、最後まで狂ってる。

狂っているけれども、クズだけれども、でもちょっと可哀想で愛おしいとも思えるのだった。

誰だって、優しくて美しい妻と可愛い子どもが微笑んでいる家に憧れるし、そこに帰りたいだろうからさ。

親だって人間だから。完璧でなんていられない。

「渇き。」公式サイト

 

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