『利休にたずねよ』美を決める男

利休にたずねよ

 


監督: 田中光敏
出演: 市川海老蔵、中谷美紀、大森南朋、成海璃子、伊勢谷友介、市川團十郎、福士誠治、クララ(イ・ソンミン)、川野直輝、袴田吉彦、黒谷友香、檀れい、大谷直子、柄本明、伊武雅刀、中村嘉葎雄
公開: 2013年12月7日

2013年12月18日。劇場観賞

 

千利休は戦国から安土桃山の時代を織田信長と豊臣秀吉に引きたてられて名を成した茶人である。

 

生まれは堺の商家。本名は田中与四郎、号は宗易という。

家業を継ぐための教養の1つとして16歳の時から茶の湯に親しみ、17で武野紹鴎に師事。紹鴎が目指す、茶道具や茶室を極限まで簡素化させる事で枯淡の美を追求する「侘び茶」を完成させた。

 

この映画では、信長の茶頭として仕える40代半ばから、秀吉に切腹を言い渡される69歳までと、時間を遡った10代の利休が描かれる。

 

茶道という芸術を追及する利休の栄華。

「栄華」といっても利休にとってやりたい茶道を追求できる自由を与えられた栄華であり、一茶人でありながら当時の権力者を動かすまでの力を持つ栄華…という視点からは描かれていない。

 

利休が意図しようとしまいと、権力者・秀吉お抱えの茶人の誉める物、認める物はそれだけで価値が出てしまう。

その価値が本当に解ってるか怪しい人々までが「利休が認める物」を欲し、それらには高値が付いて行く。

まさに、作中のセリフ通り「美は私が決めること」

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わび茶という芸術を作り上げ入れ込んでいく様がもっと狂気めいて描かれていれば、もっと見ごたえあっただろうと思われる…。

 

もっともこの作品は利休の伝記を描くものではなく、「なぜそこまで美を追求したかったのか」を紐解いていくミステリー仕立ての部分があるので、ストーリーとしては史実や芸術を淡々と描くよりもそっちを見せたかったのだろうな…。

 

個人的には、その部分が長くて……絵的に納得いかない部分もあって…たぶん見せたかったのだろうけど今ひとつだったんですけど。

 

まぁ…そういう事もあったのかも知れないね…歴史なんてタイムスリップでもしなければ本当の事は解らないのだから。

 

ちなみにネットに浮いている話で「朝鮮人が茶道を伝えたことになっている」というのを見ましたが別にそんな内容ではありません

 

でも「なんで」とは私も思う。いや、どの国とか限った事ではなく…。

 

市川海老蔵の所作美しく、茶人としての利休の素晴らしさには見ごたえがあった。

利休が求めた「精神で感じる美」「余計な物を極限まで削った美」を表す花や風景、わずかに開けられた戸の隙間から覗き見える雪景色の暗と明の対比。

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究極の日本を表すインテリアである。美しい。この映画がモントリオール世界映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞したのも頷ける。

 

利休が求めた「余計な物を削った」世界は、権力という余計な物を呼び寄せた。

国宝となっている二畳の茶室・待庵。ここで何人の権力者が秀吉への取次を頼んだ事だろう。

 

利休69歳の2月。突然秀吉から蟄居を申し付けられる。秀吉の怒りに触れた理由は諸説ある。個人的には、一茶人である利休に時の武士たちが師事していくのを面白く思わなかった者からの陰謀…のような気がする。

 

その月の末には切腹の沙汰が下った。
これまた一茶人である利休になぜ「切腹」という死罪が下されたのかには諸説ある。

 

石高を得ていたのだから武士と同じ…という話もあるけれども、私はこれも誰かの差し金かな…と思っている。 商人ふぜいが武士に意見するくらいお偉いのだから腹切って見せよ、という嫌がらせ。

 

「美」は暴力と権力に勝てなかった。

香炉を投げつけようとして握りしめる宗恩。

 

私が利休にたずねたいのは……。

 

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私が利休にたずねたいのは……。

 

その女の事…でしょうか。

 

女房としては、投げつけたい気持ちでいっぱいだっただろうな…。しかし、その女も利休ももう居ない。

 

さて…歴史改悪だの捏造だのと騒がれている高麗の女だけど…。

利休が「美」を求めるようになったのは手に入れられなかった女の影を追うからだ…という話は、まぁ…タイムマシーンでも使わなきゃどんな歴史が正しいのかは解らないのだからあるかも知れない、と思おう。

でも、それがなぜ外国の女でなければならないんだろ。どの国とか関係なく。別に日本の女でいいじゃん、とつい思ってしまう。

 

利休が求めた「究極の美」のスペースは二畳でも限りなく日本の美しい風景が広がるように作られているわけよ。その切っ掛けが外国の女性だっていうのが解せない…まぁ原作ありきなワケだから、原作の設定自体が解せない。

 

あとは絵的に…いや、クララさんは充分美しい、というか可愛らしい女性だったけれども、一生その面影に「美」を追い求めるほどには見えなかったの。すいません これは、好みの問題。 だけど、私はそれ故に説得力を感じられなかった。

 

ストーリーとしては、ええぇぇ利休、心中の生き残りかよと……。

「待庵」もあの時の小屋のイメージから作られているのかと思ったら何か興ざめ……。

個人的には、この映像このキャストで、普通~~に他の原作の伝記『利休』を見てみたい。

 

そう思ってしまったのだった。何かもったいない。

 

 


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