『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ニューヨーク第6区を探す旅

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
~EXTREMELY LOUD & INCREDIBLY CLOSE~

  

監督: スティーブン・ダルドリー   

出演: トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー、バイオラ・デイビス、ジョン・グッドマン、ジェフリー・ライト、ゾーイ・コールドウェル
公開: 2012年2月18日

2012年2月20日劇場観賞。

とにかく…
ものすごく感動して、ありえないほど泣いた。

元々、父と息子の話にはハマりやすいタチなのだけど、自分でも何でこんなに泣いてるんだと情けなくなるほどボロボロ泣いた。

事前情報は、いつも通りほとんど無く、トム・ハンクスが出る事、トーマス・ホーンくんはこの映画でデビューした演技の経験のない子だという事。そして、9.11テロ事件の被害者家族の話だという事、自閉症児の話である事。このくらいの事しか頭にない状態で観た。

もしかしたら、テロに対する憎しみや人種の問題が絡んだ話なのかとちょっと思っていたのが、実際に観てみると、「9.11」はこの作品において、そんなに大きな位置を占めてはいなかった。

そういう事で、特に反テロや反戦を描いた作品ではありません。

この作品は、ただただ父の息子に対する溢れるほどの愛を描いた親子の物語だ。もちろん、そこに母の姿もシッカリと刻まれる事は物語が進行していくと解る。

オスカーはとても頭脳明晰で神経質な子供だ。しかし、ストーリーの中で母親が語るところによると、アスペルガー症候群「かも知れない」という程度のものらしい。
ただ、親にとって気難しく育てるのに苦労するのには違いがない。

父親はこの少年に小さな冒険課題を与え続け、少年は課題を解いていくことで地図を読む知識を覚えたりすることを楽しんでいた。それだけではなく、父親は閉鎖的になりがちな少年に冒険で人と接することに少しずつ慣れさせるという教育も行っていた。

回想で語られるオスカーと父・トーマスとの触れ合いの様子が、もう本当に優しくて温かいのである。
  

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これが、充分に語られ続けるので、見ている者にも父を失ったオスカーの空虚な心の中が手に取るように解るのだ。

太陽の光は地球に届くまで8分かかる。
だから、もし太陽が爆発しても、その8分間は誰もその事に気付かない。
みんな普通に暮らしている。

これは、父を失ったあの事件から、自分が父の死を確信するまでの時間を示している。

父の死後、偶然「鍵」を発見したオスカーは、これは父が自分に残したメッセージだと思い、母に秘密で父が残した最後の謎解きの旅に出る。

この冒険の間に出会う人々、それぞれの過去や事情、優しさ、切なさにまた涙する…。

1人では謎解きが難しかったオスカーに、口のきけない老人の相棒が出来る。マックス・フォン・シドー。彼のユニークな存在感がまたこの作品に優しさを添えている。

  

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全くの新人だというトーマス・ホーンくんの自然な演技でドキドキしたり泣かされたり…。ナイーブな少年・オスカーを完璧に演じて見せた。素晴らしい子役さんだ。

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「鍵」の謎が解けた時、そこにはもう1つの父子の姿があった。そして、それまでは表に出てこなかった母の存在…。オスカーが本当に抱えていた大きな秘密。

家族を大切にしたくなる、そんな優しい優しい映画。

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


パパは言ってた。恐さを乗り越えて進めと。

電車に乗れなかったオスカー。騒音が嫌いで耳をふさぐオスカー。

オスカーには恐い物がたくさんある。
でも、それを乗り越えて進んだ。

9月11日。あの日、オスカーは父からの最期の電話を聞いていた。
何度も何度も留守電に「大丈夫か」と入れる父。
父はそこにオスカーがいて、怖くて電話を取れずにいる事をちゃんと解ってた。
母にも誰にも言えなかった、これがオスカーのトラウマ。

初めて話したのは、同じように父を失くした「鍵」の人。ウィリアム・ブラック。

話す事でお互いの気持ちが埋まっていくあのシーンが大好き。
優しい人たちで溢れたこの映画が大好き。

地図から消えたニューヨーク第6区を探すヒントを自力で見つけたオスカー。

失くした物が多い人ほど得る物がある映画だと思う。

※劇場で観てから7か月。別に温めていたわけではなくて…サボっていただけなんだけど…
今日書かなくてはいけない気がした。9月11日。

大切な人を失くした方々の心が癒える日が来ますように。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」公式サイト

 

 


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