『一命』武士の義・赤備え、クソくらえ

一命

監督: 三池崇史   

出演: 市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司、竹中直人、青木崇高、新井浩文、波岡一喜、笹野高史、中村梅雀、天野義久、大門伍朗、平岳大
公開: 2011年10月

     

理不尽だけど、どうしようもない事・・・

スクリーンの中で、どうにもしてあげられない悲惨な事が次々と起こる。助けてあげられない。ただ泣きながら見ているしかない。

徳川が天下を取り、泰平の世が始まった。
その陰で、家を失って浪々の身になった武士たちがいた。

「誇り」は金にも飯にもならなかった。

「武士の誇り」の元に堂々と生きている勝ち組武士。
わずかな誇りさえ捨てなければならない負け組武士。

勝っている者には、負けている者の立場も悔しさも自分の事のように感じることは絶対に出来ない。

それは、時代を超えて現代に至っても、たぶん同じなのである。

安泰の世に住む人たちは、かえって血なまぐさい世界へ惹かれていく。
死の実感がないからだ。

それを見てしまった者と見ていない者。

井伊家の人たちと半四郎の住む世界は、同じ土の上に立っていながら全く違う。見ていて、その伝わらない悔しさが染みていくようだった。

大河ブロガーの間で蓋をしたように語られない「武蔵」が、私は結構好きである。

「バガボンド」が出来るのは市川海老蔵しかいないと、心から思ったもの。

そんな海老蔵の目力演技と迫力を思いっきり堪能できる映画である。

どの役者さんも、どのシーンも、素晴らしく美しい。

見ているのが辛いシーンも多かったけれども、だからこそ心に訴えてくるものも大きかった。

今の所、今年の邦画では(今年は見逃しが多いから何とも言えないけど)私的には一番。

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


武士の生活の安泰は「お家」次第。

もしかしたら、今、井伊家の位置にいるのは自分かも知れず、こっちにいるのがお前かも知れない。と半四郎は切々と訴える。

しかし、彼らには彼らの「義」があるのだった。

豊かな人には本物の貧乏は理解できないのである。

求女に下された仕打ちは「見せしめ」というやつなのだろう。
井伊家にとっては、情けない下らないヤツに見えたのだろう。

「家」を守る事がそんなに大切なのか?

と聞かれれば、たぶん、あの時代の人にとっては何より大切なのに違いない。

それでも、沢潟彦九郎ら三名に下された罰の中には、半四郎に対する斎藤勧解由の情け心もあったのだと思いたい。

死んだ子を膝に抱き、血まみれの夫の遺体と食べる血まみれの饅頭。

こんな不幸があった時代。

それは、あの時代の事だけではなくて、今も何処かにある風景。

血を流している人に竹光でもっと腹を抉らせるような事を私たちも知らずにやっているかも知れない。

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