映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『善き人』「善き人」とは何も出来ない人

善き人~ GOOD ~

  

監督: ヴィセンテ・アモリン   
出演: ヴィゴ・モーテンセン、ジェイソン・アイザックス、ジョディ・ウィッテカー、スティーヴン・マッキントッシュ、マーク・ストロング、ジェマ・ジェーンズ、アナスタシア・ヒル
公開: 2012年1月1日


2013年3月19日。DVD観賞。

ラストに押し寄せるマーラーの交響曲「巨人」を聞きながら、全く違う事を考えてた。
何だっけこの曲…どっかで聞いたぞ、この曲……。

1937年。
ナチス統制下のドイツで大学教授をしていたジョン・ハルダーは、総統官邸からの呼び出しを受け、「人道的な死」に関する論文を書くように依頼される。
それまで何だかんだと家庭の事情を盾にして入党していなかったジョンは、これを機会に半ば強制される形で入党する事になる。

入党したくは無かったが、反抗する力も気力もなく、為すがままにされていつの間にか大学で学部長に昇進になり党では幹部になり…。

立派な党員服を着てナチスの象徴であるハーケンクロイツの腕章を着けている自分の姿を鏡で見るジョン。

えっ。この人、本当に「善き人」なの

という疑問でいっぱいになりながら、ラストシーンで思う。

自分は善き人だと思っていた。善き人であろうとした傍観者の話。
この世に溢れている多くの人の姿を描いた話なのだと。

誰だって自分の身は可愛い。一歩間違えれば昇進できないどころか命だって危ない時代なら、動かないでジッとしているのが正解だ。

しかし、その結果、失う物はある。必ずある。
その大きさは自分可愛さと引き比べてどれほどの物だろうか。


初めて見た、まるで闘えない情けない男を演じるヴィゴ。それでもヴィゴ・モーテンセンはカッコいい。
  

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ヴィゴが好きなら、絶対に見て損はない1本…メガネ男子だったりお料理男子だったり……いや、そんな見方する映画じゃないんだけど。汗.gif

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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繊細で優しくて、だからこそ思い切った事は出来ない「普通の男」の結末には共感は出来ないけれども同情は出来る。
自分だってあの時代に生きていたら同じようになったに違いないから。

ユダヤ人の親友に一体何がしてやれるのか。
危険を顧みず隠し部屋に匿った人たちもいた。しかし、ジョンにはその環境は無かった。

「肩書きだけの名誉ある党員」。
親友を売ったのは自分の妻だったと知った瞬間の怒りと後悔は想像すると切なくなる。
病気の母親を捨て、おかしくなっている妻を捨て、子どもたちを捨てて得た若い妻。全てが自業自得だ。

ずっと続いていた幻聴と妄想は、自分が間違っているのではという自信の無さが生んでいたのかも知れない。

ラスト、収容所に送り込まれてきた大量のユダヤ人の洪水のような映像と共に押し寄せてくる「マーラー交響曲第一番・巨人第三楽章」
童謡「フレール・ジャック」に似ているから耳慣れたこの曲の洪水と共に流れてくる、これから消されていく人たち。

「善き人」は、この人たちのために一体何をしてあげられるだろうか。

これが現実だ。妄想でも何でもなく。
善きアーリア人が、この人たちを見過ごし、無視し、無かった事にし、そして消した。
それが現実。

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