『もののけ姫』死に飲み込まれず意志を貫く強さ

もののけ姫

作品情報

監督・キャスト

監督: 宮崎駿
出演: 松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、美輪明宏、森繁久彌、西村雅彦、上條恒彦、島本須美、渡辺哲、森光子、佐藤允、名古屋章

公開: 1997年7月12日

第21回日本アカデミー賞最優秀作品賞

レビュー

☆☆☆☆☆

 

日本テレビ「金曜ロードショー」にて何度目か視聴。もちろん、公開時に劇場で観ています。しかも、1日に3回。

当時、ダンナとケンカした日があって。。。ムカついた私は、黙って家を出て行き、映画館に入ってこの映画をずっと見続けていたのでした。(その当時、その劇場は入れ替え制じゃなかった)

「もののけ姫」は私にとって、そういうちょっと変わった思い出と共にある映画。見る度、懐かしい~。

 

その後、ビデオを買って子供たちと見て、ビデオを持ってるクセにテレビ放映される度に見て。。。ジブリのアニメって、全部持ってるんだけど、何故かテレビでやる度に見ちゃうんだよね。

昨日も子ども達と一緒に見てました。

 

劇場で観た時、屋久島をモデルにしたという森の深い緑に、ただただ吸い込まれたのを覚えている。

『もののけ姫』感想 屋久島

美しい・・・

あの印象は、10年以上経った今見ても変わらない。

人間と自然の共存

人間と自然の共存という部分は「ナウシカ」と同じ。

この作品の世界は、キャラクターと場所を変えただけで、「ナウシカ」に限りなく近い。

大きな違いは舞台が日本人にとって近く感じられるという事とキャラクターの設定かな。

ジブリNo.1イケメン男子

ナウシカが男子にとって萌え~~な存在ならば、アシタカは女子にとって結構燃える存在だ。

『もののけ姫』感想 ジブリNo.1イケメン男子 アシタカ

 

ジブリのキャラは、だいたいの作品で、女子が逞しく美しく神々しい存在で、男子はちょっと頼りなくてヘタレている。

しかし、アシタカは、今までのジブリ男子キャラとはちょっと違う。

彼は、一本筋が通った男である。
何かを守ろうという意志がある。
強く正しく美しく凛々しく冷静沈着。

お家柄もお育ちも良い。立ち居振る舞いに品がある。

今までのジブリ男子キャラが作品の中で成長していったのと比べて、彼は、すでに成長する必要がない。あまりにも熟成した青年だ。

理性も理想も特に持たない自然児ヒロイン

ヒロインであるもののけ姫・サンは、獣に近いだけに純真である。可愛げはあまり無い。
彼女が守りたいのは自分の神であり、種であり場所である。

「自然を守ろう」などという大望は特にない。もっと本能に近いものである。

我欲・私欲よりも民のため・ジブリNo.1敵方美人・エボシ御前

その森の主である神々と対立しているのは、タタラ場の長であるエボシ御前。

タタラ場は森を切り開いて砂鉄を取っている。
つまり森にとって、彼女は「森を殺す者」

『もののけ姫』感想 エボシ御前

エボシは常に冷酷に笑みをたたえながら敵に立ち向かっている。
しかし、タタラ場の住民や病人に対する情は深い。

御前の欲は民の暮らしのための欲。単なる私利私欲ではない。

強く美しく、自分の目的を邪魔する者には情け容赦ない。
非常に魅力的な女である。

タタラ場の住民は、そんなエボシに全てを任せ、彼女を慕い、彼女に命を預けて生活している。特に女たちは元気で逞しく、清々しい。

美しい神々

「もののけ姫」に登場するキャラクターは人間だけではない。

この世界では、神々も人間にその姿を見せ、共存しているからだ。
この世界の神々、とは、すなわち「自然」である。

この世界では、動物の姿は大きく、言葉を話し、物を考える。
森の長はシシ神であり、全ての生と死を司っている。
これらのキャラクターが、森とシシ神を手に入れようとしたり、守ったりするために戦っている間に、時々、もっと私たちの歴史に近い「人間」たちが顔を出す。

南北朝から応仁の乱を経て戦国へ入って行く室町後期

「もののけ姫」の世界は、とても広い。

この時代は室町の後期辺りらしい。

タタラや森が戦っている世界の外では、世間は飢饉に襲われたり、侍たちが陣地を広げるために戦(いくさ)をしたりしている。タタラも地侍である浅野から略奪のための戦を仕掛けられている。

戦のためには武具が必要で、そのためにタタラ場は必要不可欠。その上、世を支配できるという「シシ神の首」。

みんなが欲しがるのも当然。

たたら製鉄によって隆盛を極めた時代を偲ぶ
<ライブカメラ> ご利用案内 入館案内菅谷たたら山内住所島根県雲南市吉田町吉田4210番地2電話番号0854-…

 

勢力を失い永遠の命を得るためにシシ神の首を欲しがる「帝」も姿は現さないが話の中で登場する。

こういう歴史的背景も興味深い。
『もののけ姫』感想 タタラ場

リアルと言えば、この物語は、ただ正義を振りかざした物ではない。

アシタカだって決してただの正義の味方ではない。
解けない呪いを抱えて、自分の死と戦っている。

山犬やイノシシは、滅び行く自分たちの誇りのために戦っている。
タタラの人々は自分たちの暮らしを守るために戦う。

 

どんな境遇でも生き続ける強さ。

それを物語は強く強く訴える。

 

日本人にとって、「ナウシカ」よりも近い背景がある「もののけ姫」

私は、この作品がとても好きである。

たぶん、ジブリの作品の中で何の拘りもなく「大好き」と言えるのはここまで。

もちろん、この後の「千と千尋」とか「ハウル」も好きだけど…「もののけ」以降の作品は、何か商業主義に走った感じもしてしまうのだ。

声優に関してもそう。

この作品も、すでにほとんど専業声優ではない役者さんが参加しているワケだけれども、どうしても違和感を感じるのだ。

宮崎駿監督は専業声優を好きじゃないという話もあるけれども、実際は、監督自身はあまり拘りが無いのではないか……と私は思ってるの。テレビや映画で話題の俳優を使えば宣伝にもなるワケで、そういうキャスティングに拘っているのはプロデューサーなんじゃ。

私的には、宮崎アニメのヒロインは島本須美さんでいて欲しいのである。(もっとも、今ではもう声質も変わっちゃったんだろうけど。)

「そなたは森で、私はタタラ場で、共に生きよう。」

森は元の姿を取り戻して行くが、人間のせいで神は姿を消した。

サンは自然と歩むために森へ帰り、アシタカは人間と歩むためにタタラへ帰る。

それでも、2人は共に生きていこうと誓い合う。

たぶん、この後も森は侵略し続けられるだろうし、人間世界では戦はますます激化するだろう。

2人の行く道は、それぞれ困難を極める物だろうけれども。。。

 

それでも、この一筋の光刺すラストが私は好きだ。

 

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