『寄生獣 完結編』大切な他者のために

寄生獣 完結編  

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監督:山崎貴
キャスト: 染谷将太、深津絵里、橋本愛、新井浩文、岩井秀人、山中崇、ピエール瀧、豊原功補、大森南朋、北村一輝、國村隼、浅野忠信、阿部サダヲ
公開: 2015年4月25日 

2015年4月27日。劇場観賞。

日本のコミック原作実写化作品は、この作品と「るろうに剣心」が歴史を作ったな…と思った。

奇想天外な設定に史実の凄惨さをきちんと織り交ぜリアルな映像で新しいアクション時代劇を作り上げた「るろ剣」。いかにも漫画らしい設定の中に大人が観賞するのに充分な哲学を込め、飽きさせない展開で見せた「寄生獣」。

もちろん、素晴らしい原作あってのこのストーリーなわけだが、テーマを説教臭くせずに映像で見せた力はさすが。

前編からの、「人間とはどういう物なのか」「悪魔とはどういうものなのか」そして「共存」という問いかけの答えをキッチリ出した完結編。

本当に素晴らしかったんだよ。……終盤までの2/3は。

【あらすじ】
新一(染谷将太)の暮らす東福山市で、市長・広川(北村一輝)が率いるパラサイトたちの強大なネットワークが形成されていく。彼らの動向を注視していた人類側は、パラサイトの全滅を図るべく特殊部隊を編成して広川と配下たちの根城となっている東福山市庁舎の急襲を画策していた。静かに対決の時が迫る中、パラサイトの田宮良子(深津絵里)は人間の子供を生んだのを機に人類と共存する道を探る。新一とミギーがその鍵になると考えるが、彼は母親を殺したパラサイトへの憎しみと怒りに支配されていた。(シネマトゥデイより引用)

 

人間って、みんな素晴らしいし助け合う美しい生き物だよ!などという生温かいテーマではないのよね。人類全体に与えられる大いなる皮肉。虚無感。けれども、わずかな希望。

それは原作のテーマであるわけなのだが、脚本の古沢さんのオリジナル作品で見られるシニカルさが共通しているので、ちょうどいい感じに仕上がったのかも知れない。

主人公も苦悩し続けた「正義の定義」…今回まさにその体現者となった田宮良子に泣かされた。深津絵里の本気を見たわ。本当に凄い女優さんだ。
    

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主人公・新一は、ただの復讐心から徐々に彼らの存在の意味を考える人になっていく。実写版のミギーは相変わらずクールさは無くイイお友達である。個人的にはこれはこれで愛おしい。。>

しかし必死で戦っているはずの新一よりも、なぜかパラサイトな人たちの方に肩入れしちゃうのね…。田宮良子はもちろん、感情なんて何も持ち合わせていない後藤のカッコ良さにも魅入る。

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「人間一種を食べる私たちの行為は慎ましい」

前編でミギーが言っていた事が、何となく説得力あるように思えてしまうのだった。だって可哀想だよね、彼らは。

数は勝れど一対一の戦闘能力は圧倒的に低い新一が人間代表として彼らと向き合う…。役者さんの熱演に涙しながら息つく間もなく観たんだ…ほんと、終盤まで。。

…で、申しわけないけれどもラストの方は個人的には飽きてしまったの。

ここで「やっぱりこの監督だから…」と思ってしまったのだった。好みもあるんだろうが。日本人の多くは好きな人も多そうだけれども。。

つまり引っ張り過ぎると涙も枯れてもう出なくなるという日本映画によくあるパターン…。

それでも、そこを補うほど前2/3は素晴らしかったので。迫力の映像はぜひ劇場で。

『寄生獣』PART1 悪魔は誰だ
「映画@見取り八段」では映画「『寄生獣』PART1 悪魔は誰だ」の感想・批評をお届けしています。自己満足映画評価ブログです。邦画・洋画・アジア映画・アニメなど何でも 観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


豊原さんの首ーーーーーー!!!

え~…最後まで生きていてほしかった…でも、バッサバッサ行っちゃうんだもんね。遠慮なし。

人間だって食用の鳥や魚の頭を落すのに躊躇しないもんな。そういう事ですよね。

そんな中で、田宮良子は「情」というものを知った。

人間は時に自分よりも大切な他者のために1つになる。そうなった時、やつらは強くなる。

赤ん坊に「いないいないばあ」をし、闇夜の窓ガラスに映る自分の笑顔を発見し、声を出して笑う。その笑顔が泣いているように見えた。

「人間が人間の子どもを殺すわけがないだろう」と倉森は最期に言っていたが、そんな事はない。そういう事件は世の中に溢れている。パラサイトと何の変りもない事を楽しんでやっている浦上も。楽しんでいるわけではない分、たぶんパラサイトの方が良心的なのだ。鬼畜は人間の方だ。

そんな世の中に危機感を抱いた「誰か」つまり「人間」がパラサイトを生んだのだという後藤の言葉もショックだよね。

つまり、犯罪防止を叫ぶ人たちの憎悪の気持ちも人間を殺すのだという皮肉。

結果的には人を救う事が出来るのは人を愛する気持ちだけなのだ。叫ぶだけでは憎しみが広がるばかりで何も救えない。

新一と里美が見上げる空。ラストシーンでしみじみ、そう感じた。

…それはホントに良かったんだけれども~…

個人的にはミギーが犠牲になって後藤から新一が逃げるシーンがクライマックスで。。

あの後に入るラブシーンには萎え萎えだった…ぇぇぇ…緊張感なさすぎね…。。 それにあのシーン自体もね…申し訳ないけれども、橋本愛ちゃんの演技が…若いからね…ヤってない感満々…(何を言わせる…。)

ま、まぁ…あの、日本のドラマや映画で女子が脱ぐと必ず着ている「今時のJK絶対着ないだろシュミーズ」を脱ぐ所までした大胆さは称賛しとかなきゃ…。

あと、後藤と戦う新一はもうミギー無しの「人間」でなければ意味ないんじゃないかなぁ。…とか思ったのでした。

上にも書いたけれども、終盤は泣かせようモードが激しく見えてちょっと飽きてしまったのは事実。それでも前2/3の凄さでお釣りがくるくらい。記憶に残る凄い日本映画だった。

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comment

  1. nakakuko より:

    Marikoさん
    香港でも上映されているのですね~!しかも高評価!^^
    日本で作ったマンガベースのSFアクション作品として素晴らしい出来だと思いました。
    一番評価できるのはキャスティングかも知れませんけれどもね^^
    そうそう、ピエールさんは現在NHKドラマで大変硬派なイケメンをやっているので、ちょっと混乱します(笑)
    新井さんもそこでも競演しています。
    ファンとしては嬉しいです^^

  2. Mariko より:

    こんにちは。
    香港在住のものです。こちらでもさっそく封切られたので観てきました。
    こちらは18歳未満はNGとなっています。
    Yahoo香港のユーザーレビューでも今のところ4.7(5点中)という中々の高評価です。前作も同じ感じでした。
    原作どうこう、というのはおいておいて(私の中であれは傑作なので)、よくここまでがんばった、という感想です。
    残念ながら新一の人間ではなくなっていく自分の中の葛藤がほとんど描かれておらずバトルムービーになるのか?というところで前作が終わり、かつあと2時間で残りのエピソードをどうやって描ききるのか大変心配していましたが、完結編を観て「ああ、良くここまで工夫してまとめたな。」と感心しました。
    詰め込みすぎなのが返って飽きさせず、あの二つのエピソードを同時進行させたのも、時間稼ぎ&撮影を少なくて済ませる(実際は市庁舎戦もがっつり撮ったのかもしれないけど。)、非常に良いアイデアだったと思います。
    一番心配していたSpecialEffectもチープさを感じさせずかなり良かったのではないでしょうか。
    キャスティングは文句無しですね。染谷君の安定感、そして深津絵里さん!本当に冷たさと賢さを表現したすばらしい演技でした。
    にしても瀧さんと新井さんと大森さん、最近忙しすぎですね笑。

  3. nakakuko より:

    隠れ常連さん
    私も実はキャスティングの時点では田宮良子が心配だったのですよ。
    しかし深津さんは本当に素晴らしい女優さんでした。
    元々好きなんですけどね、想定以上のクールビューティでしたわ。
    前編では主人公の父親が初めから居ないのがツッコミ所でしたが、個人的にはそこはまぁいいかなと^^;
    >原作ではラスボス後の最後のところは後日譚として1話で簡潔にまとめられていました。
    あぁ~その部分もちょっと要らない感じでしたね~^^;
    長い原作を4時間にまとめて色々削っているのに、アレをわざわざ付けることは無かったかも…。
    >あと漫画原作で歴史を作った作品には、ぜひ20世紀少年を仲間に入れてほしいです。
    確かに、あの再現力は素晴らしかったです。
    そう考えると「のだめ」も。

  4. 隠れ常連 より:

    こんにちは
    私は原作者がデビューの頃から大好きで、原作も初回から最終回までずっと読んでました。
    グロな描写のつかみと言い、無個性に見えるパラサイトの微妙な変化の描写と言い、ラスボスへの勝ち方と言い、毎回うならされたのを良く覚えています。
    正直キャスティングを見て、これは・・・という危惧を抱いており、劇場まで身にいく気はしませんでした。
    先日テレビで特別版を放送しており、何気に見ていましたが、特に危惧していた深津さんが、すごいクールビューティぶりで、次に危惧していた橋本愛の出番も少なく、結構良い出来だと思いました。
    原作では主人公の父親が生きているのですが、そこは時間の関係からか「調整」されていましたね。
    実際見ていないので、ラスト1/3がどの部分かはわかりませんが、原作ではラスボス後の最後のところは後日譚として1話で簡潔にまとめられていました。
    あと漫画原作で歴史を作った作品には、ぜひ20世紀少年を仲間に入れてほしいです。あれは原作に忠実に作りこまれており、キャストの再現率などは、これ以外にないという面々をそろえていました。

  5. nakakuko より:

    BROOKさん
    私は原作後半は全くの未読で~アニメも前編の所以降はHDDに溜まってるのです^^;
    だからどこまで原作に沿っているか全く解りません。
    前半はちょっとJホラーっぽい空気もあって、これはハリウッドでは出せないと思うので自分的には日本で良かったかなと^^

  6. BROOK より:

    原作を知っているだけに、ちょっと“粗”が見えてしまって…
    前編の方が盛り上げ方が巧かったように思いました。
    完結編はバトル描写よりも、
    パラサイトと人間の関係性をメインにしていましたね。
    ハリウッドから映画化権が戻ってきて、今回の映画化となりましたが…
    ハリウッドでのバリバリのアクションも観たかったような気がします。

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