『轢き逃げ -最高の最悪な日-』「相棒」の一遍でも良かったよねという感想

轢き逃げ -最高の最悪な日-

『轢き逃げ -最高の最悪な日-』

作品情報

監督・キャスト

監督: 水谷豊
キャスト: 中山麻聖、石田法嗣、小林涼子、毎熊克哉、水谷豊、檀ふみ、岸部一徳

日本公開日

公開: 2019年05月10日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年5月15日

 
制作側としてはそんなつもりじゃなかっただろうけれども、世間的にタイムリーな感じになってしまった……。令和明けからこっち、歩行者を巻き込んだ交通事故のニュースばかりの2019年。

自分も運転する人間だし、急いでいることも多いし、犯人がやったことは許されないけれども人間心理として分らないわけではない。気をつけて、運転。

あらすじ

ある地方都市で起きた交通事故。一人の女性が命を落とし、轢き逃げ事件へと変わる。車を運転していた青年・宗方秀一、助手席に乗っていた親友・森田輝。二人は秀一の結婚式の打合せに急いでいた。婚約者は 大手ゼネコン副社長の娘・白河早苗。悲しみにくれる被害者の両親、時山光央と千鶴子。その事件を担当するベテラン刑事・ 柳公三郎と新米刑事・前田俊。平穏な日常から否応なく事件に巻き込まれ、それぞれの人生が…(Filmarksより引用)

犯人は初めからわかっている……(?)

タイトルがタイトルだから、何が起こるかは分っているわけで、ソレは意外と初めの方に用意されている。

運転のシーンにはドキドキしっぱなしだし、やめてやめて、うわぁ……で、この後、何やるの?と思うわけである。

事故が起こる経緯は、私自身も遅刻気味でだらしないので頭を抱えて見ていた。

どうしてこうなっちゃうんだろう……どうしてそんな事をしてしまうのだろう。

でも、人間とは嘘を吐く生き物である。物語は加害者側の若者目線から描かれ、ゆっくりと解決へと向かっていく……

 
のだと思っていた。

だから、意外な展開ではある。

右京さんはやっぱり謎解き

加害者の方ばかりが描かれて被害者側は出てこないんだなぁ……と思った所に、物語もだいぶ進んでから監督でもある水谷豊が登場。

一人娘を失った夫婦の姿は思ったよりも淡々としていて、ああ、こんな風になるのかもね……というリアリティがあった。

……が、もちろん、右京さんがあきらめて淡々と過ごし続けるわけがなく……。色々と動き回っちゃうのも、まぁリアリティはあるのかも知れない。

 
でも、ともかく、ひとこと。長い。

評価としては「テレビ的」

人間ドラマに寄った前半、突然のミステリー&サスペンスな後半、どちらも見応えはある。あるけれども、何だか野暮ったい感じに見えてしまうのである。(そしてきっとテレ朝制作なんだろうなと思ったらやっぱりそうだった。)
 
「相棒」の1本として今作があっても良い気がする。水谷さんは相棒の脚本にも関わってみればいいのに。お話としては面白い。

 
被害者側の心情や行動はテレ朝がよくやる刑事ドラマや2時間ドラマ的。加害者側の心情は複雑に腐っているけれども胸が痛い部分があり、映画にするならばこちらをもっと掘り下げて欲しかった。

サスペンスを入れ込んだことで、加害者側にまつわる負のファンタジーが薄まり、理解したいと思う気持ちが萎えていく。

 
ラストの余韻は好き。あれは脚本の妙。

ベテランキャストは魅力的

岸部一徳さんと毎熊克哉さんの刑事コンビが楽しかった。毎熊克哉さんは朝ドラ『まんぷく』の印象そのまま(笑)あの時から刑事姿を見てみたいと思っていたので、ナイスなキャスティングでありがたい。

悲しみに暮れる小林涼子さんは美しく、檀ふみさんには泣かされた。

 
主演の中山麻聖さんは三田村邦彦さんの息子さんだと初めて知った。今後に注目。
 『轢き逃げ -最高の最悪な日-』

 


以下ネタバレ感想

 

いやあ……計画的にそんな所にピッタリ立たせておくのは無理でしょ……
 
と、思うけれども、「別にそうならなければそれでも良かった」「イタズラのつもりだった」と言っていたもんね。

つまり、全ては「運」が起こしたことで、だから「最高にタイムリーだった最悪な日」。
 

「誰でも良かった」

が、親としては許せない。

亡くなった娘に彼氏が出来て、楽しく過ごしていたのならばまだ良い。嫉妬を解消する「誰でもいい」道具として使われるなんて許せない。

 
この話は、「誰でもいい」と思われる人生を生きてきた輝が、「誰でもいい」道具として1人の女性を使い、輝く人生を迎えるはずだった秀一を「誰でもいい」人間に貶める話だった。

マスコミにライトを浴びせられて有名人になった輝が今後、どの程度の刑に処されるのか。それは想像しか出来ない。極刑であってほしいけれども。
 

陥れられたとはいえ、あの時、逃げる決断をしてしまった秀一の手紙。

「罪を犯した者に与えられるべきなのは罰を受けることだけ。」

この覚悟と孤独。そして、それを支える決心をする妻の存在。

ここ。

この人間ドラマは、緑揺れる風景と共に素晴らしかった。

 

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