『パズル』この世に生きていてもいい人間

パズル

   

監督: 内藤瑛亮   
キャスト: 夏帆、野村周平、高橋和也、八木さおり、佐々木心音、田中隆三、大和田獏、渡辺凱、冨田佳輔、佐伯亮、馬場ふみか、吉満涼太
公開: 2014年3月8日

2014年8月24日。DVD観賞。

原作は山田悠介氏の同名小説。

いつもの山田氏原作映画のようにグロくて残忍で容赦なくて…けれども、他の山田氏原作映画よりもファンタジックで不謹慎なほど美しい世界が展開される。監督によってこれほど世界観が変わるのだから映画は本当に面白い。

徳明館高校で、中村梓という1人の女生徒が飛び降り自殺を図ってから1ヶ月。
学校は奇妙な扮装をした一団に占拠される。人質をとられ、犯人たちから仕掛けられた「ゲーム」に右往左往する教師たち。
そして、その時から校長と数名の生徒が行方不明になった。

夏帆ちゃんが、とにかく儚く美しい。まるでファンタジーのような映像と、妙に可愛らしい音楽と、美しい少女…なのに、変なキャラクターと凄惨な事件。この不協和音が見ている人間を不安に陥れる。
   パズル2.png

監督は『先生を流産させる会』の内藤瑛亮監督。

あれのレビューには「主人公が出来すぎで女としての悲哀が感じられない」ような事を書いたのだけど、こっちにその本音があった。
あそこまでやらなくても…と思うもんね。

夏帆ちゃん以外のキャストも安定の演技力。若手を支えるベテラン俳優の方々もそれぞれ怪演。大和田獏さんなんて、もう…本当にキモい。

八木さおりさんの狂った感も良かった。あと、高橋和也さん。素晴らしいよね…息子の真実を知った時の様子がもう……そして、ラストに繋がる戦車のような迫力。滑稽なんだけれども理解できる。

野村周平くんのサイコパス的なキャラも良かったな。

純愛か。それとも、ただ壊したかっただけなのか。

壊したいと言いながら破滅に向かうことを楽しんでいるようにも見えた。
全然前向きじゃない。突進する方向が違う。でも必死。そこが少し切ない。

山田悠介作品だからツッコみ所だらけなわけだが、そこはファンタジーだから。
黒いグロイファンタジーホラー。たぶん今までの山田悠介原作映画の中で一番好き。
   パズル1.png

 


以下ネタバレ感想

 

 

この世に生きる価値ある人間は一人もいない。

神様か悪魔みたいな事をいう湯浅。
溺愛する母親に対してさえ愛を感じられない。

それでも復讐に走ったのは中村の痛みを感じたから。なんだろうな。
これはゲームに使える…と、思っただけには見えなかった。

妊娠中の安田先生に対する仕打ちは酷すぎると思った。別に知っていて中村を呼び出したわけじゃないもんね。他の生徒たちに対する復讐も酷いな…と、初めは思っていた。

けれども、あのシーンを見ちゃったら…ああ、何されても仕方ないのかなと。

それでも子どもを殺された親たちは今度はその復讐に走る。やられてはやり返していたら復讐は止まらない。だから虚しい。

タイトルは何故「パズル」なんだろう。
パズルのピースをはめるシーンは、ほぼ無かったし…と思っていた。

復讐された者も復讐した者もみんな居なくなって綺麗にピースがはまる。
中村の復讐が完結してピースがはまる。
欠けていた湯浅のピースが中村への思いで埋まる。

いずれにせよ、死んで完結するパズルは虚しい。

「パズル」公式サイト

 


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