『東京難民』それでも生きてゆく

東京難民

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監督: 佐々部清   
出演: 中村蒼、大塚千弘、青柳翔、山本美月、中尾明慶、金子ノブアキ、井上順、金井勇太、落合モトキ、田村三郎、岡村洋一、大谷ノブ彦、吹越満、福士誠治、津田寛治、小市慢太郎
公開: 2014年2月22日

2014年2月26日。劇場観賞

「底辺」という言葉がある。

文字通り三角形の底辺…格差社会ピラミッドの最下層を示す言葉であり、他人を小馬鹿にした響きがある。

そんな差別用語を使うのは止めましょう!!
というのは、それを自分と関わりのない層だと認識できる上から目線の発言であって、その存在が実際にあるのは事実。貧富の差が少ないと言われる日本。格差はある。現実にある。

主人公は何処にでもいる平凡な大学生。当たり前のように親に学費を払わせて当たり前のように仕送りさせ、単位の心配がなくなるまで講義をサボリ、コンパ、高いタバコ、パチンコ、ゲーム…。

「金の切れ目が縁の切れ目」なのは恋愛関係だけではない。親、友人、家、そして「運」。あっという間の転落人生。

底辺社会の様々な世界を主人公がたった半年間で味わうというのはムリがある気もするけれども、堕ちてしまえばこんな物なのかも知れない。1つ1つの描写はたぶん大げさではなく、こんな物だろう。

リアルであるから恐ろしい。自分だって明日はこうなるかも知れない。全く他人事には思えなかった。

「一度落ちたら容易に這い上がれない仕組みになっている」社会。

親を恨んでも社会に呪いの言葉を吐いても爆弾を作っても仕方ない。
結局は、自分自身が行動しなければ生き抜けない。

坊ちゃんだった主人公がわずか半年で、ネットではなくリアルな人間関係を作り、あのまま学生をやっていたら一生体験しなかったであろう仕事を体験し、他人の痛みを知る。

辿り着いた結論は、とにかく「生きる」という事。

絆も慰めも綺麗ごとだけれども、あった方が助けになる。
今日暮らす金がある事が、今日住む場所がある事が、仕事がある事が、こんなにも有り難いのだと…見終わって心からそう思う。

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自分的には中村蒼くんの成長を今回も確認できて満足…。
大塚千弘さんは乳首まで見せる女優魂。いい表情だったラスト。

キャストにもストーリーにも派手さはないけれども、確実に堅実に訴えかけてくる重さがある秀作。

今日は観客の年齢層がかなり高かったのだけれども、主人公と同じくらいの若い層にぜひ見ていただきたい。

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


大学を追われマンションを追われ、実家はなくなり、親もいなくなり、ネットカフェ難民から闇の世界、あげくの果てにはホームレス。これが半年間の出来事なのだから驚いた。転がり落ち始めたら早いという事か…。

『闇金ウシジマくん』に出てくる債務者の1人の状況をリアルにジックリ描き出したようなストーリーだった。

切っ掛けは確かに「親のせい」だ。
けれども、大学にまともに行かず単位ギリギリになってようやく顔を出すような事をしているからこんな事になったんだよね。
大学側だって、いきなり除籍なんてするわけない。親だけではなく、本人にも通告しようとしていたはず。
マンションからの内容証明も見もしないで放っておくからこんな事になる。

つまり、警戒心が足らな過ぎる。日常の平穏を「当たり前」だと安心しすぎ。

これ、私自身がこういう傾向の人間だから…ものすごく突き刺さった。

「クソ親父」のせいにしたり「世間の冷たさ」のせいにしたりしていても食べては行けない。

底辺の仕事にはその上からの搾取が付き物。住所不定で保証人もいない身には文句も付けようがない。だから、この社会は一度落ちたらなかなか這い上がれないようになっている。

原作の出版は2011年5月なので、震災で息子さんを失くした浮浪者の下りは原作に入っているのかどうかは解らない。

震災で亡くなった人もいるのだから、生かされている者は生きなければ…というメッセージ自体はあまり実は好きではない。人の傷は人それぞれだからだ。

けれども、それを切っ掛けに主人公が「生きねば…」の境地に至ったこと、「絆」を求めて父親を探す決心をしたことに関しては…そういう人も現実にいるのだろうと思った。

生きる意欲を持つ切っ掛けも人それぞれだから。

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