『リアル~完全なる首長竜の日~』完全なる前半ホラーの日

リアル~完全なる首長竜の日~

   

監督: 黒沢清   
出演: 佐藤健、綾瀬はるか、中谷美紀、オダギリジョー、染谷将太、堀部圭亮、松重豊、小泉今日子、青木綾平、川島鈴遥
公開: 2013年6月1日

2013年6月5日。劇場観賞。

原作は第9回このミステリーがすごい!大賞受賞作・乾緑郎氏の小説『完全なる首長竜の日』。未読です。

原作とこの映画はかなり内容が違うらしい。
…で、原作未読の私にはそれはどうでもいい事だけれども、この映画の予告映像とこの映画の中身もかなり違うので、ご用心下さい。
えっと…特にホラーが大嫌いな方は、あの映像を見て描いたイメージでキャスト目当てで見に行くと目を開けていられなくなる可能性も… まぁ、前半だけだけど。

全く前情報なく見る身としては映画『インセプション』のような、夢想世界に入りこんで行くイメージ。または、ドラマ『未来日記』(←あくまでもドラマの方ね)のように、やはり恋人を救いに行くために…というイメージ。

そういう部分は予測がついていたし、この手のストーリーなのでオチまで最初から何通りか考えてしまったし、あまり意外性は無かった。

だから、むしろ意外だったのは予告で全く流されていなかった前半のホラー映像だった。
いや、黒沢清監督だから見てみたいな、と思って行ったワケだけど、まさかホラーが見れるとは思わなかった。
この部分は儲けた気分~。
『クロユリ団地』よりも確実に恐かったし。

廃墟の映像なども、寂しいシーンとした空気が漂う。それが不気味。
  

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原作は『インセプション』よりも面白いという評を受けたらしいけれども、まさにその『インセプション』というシーンもある。『インセプション』のガラガラ崩れていくイメージと違ってこっちは「溶けていく」感じだったけれど。
  

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映像は「え、予算が足らなかったの?」と、思うシーンも多いのだけれども、後々から考えると「あーーー…だから…か…」と納得がいく。
つまり…現実か現実じゃないか…という事。

あまり書くとネタバレしそうなのでストーリーについては触れないけれども、先ほども書いたように結末の予測は付いてしまうので、とても面白かったかと聞かれると「とても」ではないかな、と。

あと、すいません…。原作は設定が恋人ではなくて姉弟なのだそうで…その設定のままで良かった気がする…。
だって、はるかちゃんが…とても逞しく見えてしまったのだ。えっと…単なる私感ですっ

八重の父が権八さんだっていうのに驚いた。だったら、お母さんもぜひ風吹ジュンさんで。 黒沢監督の映画にオダジョは常連のようなモンなので見ている時には気づかなかったけど、よく考えたら新島襄じゃないか。まさか『八重の桜』番外編だったとは…。←違います。

人の意識の中に入り込むなんて恐ろしい事はしない方がいい。個人的には絶対に覗かれたくないし、覗かれてまで連れて帰ってもらわなくてもいい。

けれども、自分の大切な人が居なくなるという事ならば、入り込んでも連れて帰りたいかもしれない。

もしも科学の力でそんな事が出来るような世の中になったら、それは罪深い行為。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


モリオは確実にミノルくんより恐いだろ…。

都会から来た子が気に食わなくて虐めていて、自分で危険な所にわざわざ攻撃しに来て溺れるとか…自業自得すぎて同情もできない…。

けれども、それさえも現実かどうか解らないんだよね。
浩市の中に父親が島の開発に関わっていたから周囲から疎外されていた少年時代の3年間という物があって、それがモリオと島の廃墟のイメージになっている。

「モリオ」という少年は首長竜と同じで最初から存在しないかもしれない。存在していても死んでいないかも知れない。
自分を虐めていた少年を「死んでしまえばいい」と思った記憶がイメージになっているのかも知れない。

意識がないのは敦美ではなくて浩市なのだろうとは、すぐに想像がついた。
1年前から辞めているらしいスポーツクラブのバイト。いつもパジャマのようにラフな服。どう見ても運転しているように見えない車の窓に流れる風景。

生きている人が生活しているようにはとても見えない。

でも、もう一つどんでん返しがあるかと思った。
センシングもとても現実の物とは思えないし、妙にベタベタしてくる中谷美紀も妙に冷たい堀部圭亮も現実の人とは思えなかったから。

結果、これはハッピーエンドじゃないんじゃないのかな…と思ったのだった。

最初から最後まで全部が幻想。

誰が見ている夢なのかは解らないけれども、誰かの夢なんじゃないかと。全て。

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