『アンネの追憶』「道徳法律」の意味

アンネの追憶~ MI RICORDO ANNA FRANK ~

   

監督: アルベルト・ネグリン   
出演: ロザベル・ラウレンティ・セラーズ、エミリオ・ソルフリッツィ、モーニ・オヴァディア、スルディ・パンナ、メシシュ・ガシュパル、アレクサ・カプリエラン、サライ・クリスタ、スルディ・ミクロシュ、バコニェ・チラ
公開: 2012年4月14日

2013年2月8日。DVD観賞。

アンネ・フランクと彼女が残した「アンネの日記」は、第二次世界大戦におけるナチスのホロコーストアウシュビッツを語る時の代名詞と言っていいほど有名だ。

アンネに関する書籍は児童書から漫画まで世界中の言語で出版されており、映像化した物も映画、ドラマと何本も制作されてきた。確か私の時は教科書にも掲載されていた気がする(今はどうだか知らないけど)。

それほどにアンネ・フランクは世界中で有名人であり、ドイツのベルゲン・ベルゼン収容所で1945年に亡くなっている事もあまりに広く知られている事実なので、この作品のレビューには特にネタバレ欄は設けません。今さらネタバレも何もないし…。

なので、映画の感想だけサラッと。

こういう題材の映画に関してこういう事を言ってしまうのはとても残念なのだけど…
ハッキリ言ってしまうと退屈だった…。(ああ、ほんと、すいません )

いや、内容が無いとかそういう問題ではなくて、私がすでに頭の中で知っている「アンネ・フランクの伝記」がそのまんま映像化されただけだったので。

もちろん、悲劇であるから泣いたシーンもあるけど、それよりもツッコミ所の方が大きかったかも…。

こんな作品の何処にツッコむんだよ、と怒られそうだけど…だって…

収容所に着いてから常に監視されているのにアンネ1人が列を抜けて子どもたちに歌を歌わせたり、文章が書きたいからと紙を探したり、色んな人を想像で勇気づけている様子も何だか…朝ドラヒロインみたいなんだもん…。

収容所の監視員がユダヤ人に向かって「あそこがどんな場所だか解っているかい」とか、ガス室の存在を教えて脅したりしてるのも普通に考えて有りえない。そんな事、教えちゃったら、あそこはガス室だって話があっという間に知れ渡って、いざ送り込む時に大パニックが起こるじゃん。

教師がドイツ軍人に「道徳法律の意味とは」と問うシーンはとても良かったけれども、この先生1人をガス室に送り込むっていうのも無理過ぎると思うのね。1人のためにガス室を使ったら、とても予算がかかるのね…。

アンネ役のロザベル・ラウレンティ・セラーズさんは、とても可愛らしい美少女だった。短髪もよく似合う。
  

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しかし、最後までふっくらした美少女なので、衰弱して死んでしまうようには見えないのだった…だってアンネ・フランクの死因は飢えによる衰弱と劣悪施設で蔓延したチフスの感染だという話なのだから…。

もちろん、「自由は善であり、それを許さず人を傷つけることは悪である」というハッキリした教訓はあり、「この歴史を忘れないように伝え続けなくてはならない」という話にも共感した。
…私自身もそう思っているから、こうやって年に何本も戦争関連の映画を観たり本を読んだりして、その感想を書く事で伝えているつもりだ。

うん。だから…この映画はたぶん「アンネの日記」ホロコーストに歴史知識として初めて触れる人向けなんだ、と思う。

人間が人間を迫害する事の恐ろしさと虚しさ、洗脳された人間が正しい方向を向けなくなるという真実、愛する者を失う悲しみ。それは充分伝わった。

原作は、アンネ・フランクの親友であるハンネ・ホスラーの話をまとめた「もうひとつの『アンネの日記』」らしい。

このハンネ・ホスラーという人が、隠れ家以降全くアンネと行動を共にしていないので、原作というよりもそれを膨らませた創作物という事か。

そして、エンドロール前には、ハッキリと
「歴史的事実から想像して創作されたもの」
という記述が流れます。つまりフィクションだ。

真実から作ったフィクションであるこの映画。
よく考えたらケースに「文部省推薦」とか書いてあった気がする…。

時間もそう長くないし、ショッキングな映像もない。
ぜひ、お子様に見せていただきたい1本です。

※てっとり早く「アンネ・フランク」について知りたい方はこちら→「アンネ・フランク」by Wikipedia
映画よりもこっちの方が胸に迫るかも…

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