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『桐島、部活やめるってよ』それでも俺たちはこの世界で生きていかなければならない

桐島、部活やめるってよ 

監督: 吉田大八
出演: 神木隆之介、橋本愛、大後寿々花、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ、浅香航大、前野朋哉、高橋周平、鈴木伸之、榎本功、藤井武美、岩井秀人、奥村知史、太賀
公開: 2012年8月11日

第36回日本アカデミー賞:最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞、話題賞他受賞。
第37回報知映画賞:最優秀監督賞、第67回毎日映画コンクール:日本映画優秀賞、監督賞受賞。

2012年8月22日。劇場観賞。

 

約3ヶ月遅れレビュー…。この記事は11月19日に書いています。

 

これは、たぶん家で1人で見ていたら号泣していたと思う。

特に何が起きるわけでもなく、画面の中の人たちがアタフタしているだけなんだけど、どっと込み上げてくる物があった。

懐かしい…という感覚。どうして私はこんなだったんだろう、という苦い思い。あの頃に戻りたい郷愁感…。 そんな物が一挙に込み上げてきて切なくて切なくてしようがなかった。

こういう感覚は「時をかける少女」以来かも。

あれに繋がる感覚があった。

 

私は、高校時代が好きだった。

今から考えると、それは「群れる」ことに成功していたからかもしれない。校内の至る所に「仲間」がいて、嫌な思いをすることも少なく、楽しい3年間を送った。

そんな自分でも、「仲間」が見つからない時にはワケの解らない孤独と焦りを感じた。

学校とは、妙な所だ。みんな「群れる」ことに必死だ。「群れる」ことが出来ないと1人外れた気持ちになる。なぜ、あんなにも必死だったのか。今から考えても、よく解らない。

 

「桐島、部活やめるってよ」の中にも、その姿が見えた。

学校では「仲間」が必要で、その「仲間」の立場が強ければ強いほど自分の立場も優位になる気がして、みんな必死になって孤独じゃない自分を作ろうとする。

何でも出来るヒーローがいて、その取り巻きがいて、それに少しでも触れたい者、全く無関係な位置で「群れて」いる者、興味なく生きている者…不思議と「地位・階級」に似たものが出来てくる。

何でこんなに自分語りしているのかというと…。

たぶん、この映画ってそういう映画だと思うから。

 

多くの人がこの映画の中に自分を見つける。
そして、あの頃の自分を見ている感覚に陥る。
そして、つい自分の過去を振り返ってしまう。

この映画は、たぶんそんな映画。

 

俳優さんは、それほどテレビや映画で見る人は揃っていない。

確実に名前が通っていると言えるのは神木隆之介くん、橋本愛ちゃん、大後寿々花ちゃん、太賀くんくらい。

けれども、みんなそのまま学生生活を送っているような自然さだった。

 

神木くんは、やっぱりさすがだと思った…。あの神木隆之介だというのに、このオーラのなさは一体何なんだろう。笑.gif元々大きい人ではないけれども、体格が他の作品で見るよりも一回り以上小さく見える。

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女子の方々なんかね~、ああ~物すごく解る、解るよって思いながら見た。「女子ってワケ解んね」って私も思うよ。

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映画部…。何か見ていると微笑ましい一団。

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高校時代は複雑だ。
何かに対する憧れもある。希望もある。しかし、叶わない物があることも理解している。

この映画を見て、どんな感想を持つのか。
それはその人それぞれの現在の人生の充実度にも寄るような気がする。

学生時代に忘れ物をしてきた人ほど心を揺さぶられる作品。だから、私は泣くのだ、と思った。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね

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学校のヒーローである「桐島」は、この作品には出てこない。
f:id:nakakuko:20150413141814p:plain

 

 

姿がないからこそ、桐島が消えた事に慌てふためくみんなの様子が滑稽にも哀れにも映る。

 

桐島を親友だと思っていた宏樹。
恋人だと思っていた梨紗。
なのに、桐島は何も言わずに消えた。

 

桐島と友達、恋人である事は、彼らのステータスだったはずだ。

何の相談もなく突然「バレー部のエースでヒーローの桐島」を失った2人は途方に暮れる。自分たちの信じる者、頼る者が消えたから。

その孤独と不安はたぶん本人たちにしか解らない。

 

ヒーローが居なくなるという事は、ヒーローの隣というポジションも無くなるわけだ。

そんな孤独の隙間に入り込もうとする梨紗の親友で宏樹の恋人だったはずの沙奈。

しかし、No.2たちは自分の事で精一杯で沙奈どころではない。そして、ここにもまた不安と孤独が生まれる。

それを解消しようとするNo.3の行動により、その下の階層もどんどん不安になっていく。

No.1が崩れた事は、こうして桐島と何の関係もなかった最下層にまで影響を及ぼすことになった。

 

やっと得た撮影場所を汚される映画部のメンバーの怒りのゾンビ攻撃…。

すごく可笑しいんだけど、何だか泣けてしまう。

カメラの中で襲っているゾンビが、そのまま「不安」や「孤独」や「苛立ち」を表しているから。

 

たぶん、今までほとんど会話したこともないだろう前田に話しかける宏樹。

 

あなたは映画監督になるのですか?

 

しかし、前田の答えは

 

それは、無理。

だった。

 

桐島の隣という地位以外に何も持たない学生生活を送ってきた宏樹が、夢の実現に向かっていると思い込んでいた前田の答えに涙する…このシーンが印象的。

 

結局、何もない。
自分の位置を確立させてくれるものなど何もないんだ。

 

「それでも俺たちはこの世界で生きていかなければならないんだ。」

 

それが、答え。

 

でもね、そうは言っても、前田はこの後、映画監督になるかもしれないよ。学生時代の答えは将来を決める絶対的な物ではない。

学校は奇妙なところだ。

そこから出れば、それぞれが今までいた位置から解放される。

そして、いつか懐かしくこの時代を思い出す。

前田にも宏樹にも、この先に輝かしい未来があればいい。

 

・「桐島、部活やめるってよ」公式サイト

 

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