映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『やがて来たる者へ』イタリア「マルザボットの虐殺」を描く

やがて来たる者へ~ L'UOMO CHE VERRA ~

     

監督: ジョルジョ・ディリッティ   
出演: マヤ・サンサ、アルバ・ロルヴァケル、クラウディオ・カサディオ、グレタ・ズッケーリ・モンタナーリ、ステファノ・ビコッキ、エレオノーラ・マッツォーニ
公開: 2011年10月22日


2013年3月12日。DVD観賞。

1943年。第二次世界大戦中、ムッソリーニ失脚後、イタリアはナチス・ドイツの侵攻を受けた。民衆に紛れた抵抗軍・パルチザンを一掃するために、ドイツ兵は何の罪もない女子供を含む一般住民を次々と虐殺したという。
イタリア・エミリア州マルザボット、グリッザーナ、ヴァド・モンツーノで虐殺された犠牲者は1800人を超える。その内、16歳以下の子どもは96人もいた。

この映画は、その「マルザボットの虐殺事件」を描いたフィクション。事件は史実だが、描かれる登場人物たちは架空の人物である。

主人公は8歳の少女マルティーナ。口がきけない子供だが、その原因は別に戦争にあるわけでも何でもなく、弟が生まれた時に自分の腕の中で死んでしまったのがショックで喋れなくなったらしい。
ストーリーはこの少女の目線で進んでいくので、上に書いたようなイタリアの状況は何も語られない。
少女にとっては戦争も兵隊も「何だか恐くて何だか不思議」くらいの物であって、年頃の叔母たちが祖母に叱られて殴られている事や、妊娠中の母親の身体や、食糧事情や、学校で虐められている事の方が重要な事なのだ。

ストーリーの大部分は、貧しいけれども肩寄せ合って生きている農業大家族の末っ子であるマルティーナの暮らしが描かれる。戦争の事は始めは大人たちの会話に時々出てくる程度。そして、次第にマルティーナの目にも解るほど緊張した状態になってゆく。

ただ、口をきかない少女の目線であるだけに、物語は淡々としていてあまり抑揚がない。
終盤は目を覆いたくなるような残酷な事が次々と起こるわけだが、それさえも淡々と進行していく。

この大虐殺の事は全く知らなかったので、自分的には歴史の勉強になった…という感想。
大変な事が描かれているのに心を揺さぶられるような描写はあまり無かった。

マルティーナ役のグレタ・ズッケーリ・モンタナーリちゃんが、とっても美少女なので、そこ中心に見ている分には癒される。
 

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この事件で虐殺されたマルザボットの住民は700人以上。皆殺し状態だったらしい。
虐殺のシーンは心が凍る。

後年、この事件に関わった17人の被告が軍事法廷で裁かれたらしいが、1人も出廷していないらしい。しかも、彼らは普通に年金生活を送っているというのだから酷い話だ。

もちろん、マルティーナ目線で良いドイツ人も悪いドイツ人も描かれるわけで、決してパルチザンが良く描かれているわけではない。

子どもにとっては、ナチスもパルチザンも同じ人殺しだ。

ただ解っているのは、神様は救ってくれなかった。それだけ。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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「時々ドイツ人が買い物に来ます。なぜここにきたのでしょうか。なぜ自分の家で子どもたちと過ごさないのでしょうか。」
「ドイツ人は武器で何処かにいる敵を撃ちます。連合軍と戦っているそうですが見た事はありません。あと反乱軍がいます。彼らを追い払うために戦うそうです。」
「反乱軍も武器を持ちます。私たちと同じ服を着て言葉も同じです。隊長はルーポです。ディーノ叔父さんも彼を思い助けようと言います。父さんもそう言います。でも、土地は放っておけません。」
「それからファシストもやってきて私たちの言葉を話します。怒鳴って「反乱軍は山賊だ。殺せ。」と言います。」
「それで、私は皆、人を殺したいのだと知りました。」


母が怒ったマルティーナの作文。
子どもにとっては、ドイツ兵も連合軍も反乱軍もファシストも…みんな同じだ。人を殺したい人たち。

貧しい大家族の中で、弟の誕生はみんなの希望だった。
あんな食糧事情でも頑張って、働きづめでも健康な男の子を生んだのに…。

家の中で銃声がした時は、赤ちゃんが撃たれたと思った。寝たきりのお祖父さんだったのね…。
母も祖母も、あっけないほど簡単に銃声とともに転がった。
それを見ていても泣きもわめきもしないマルティーナ。こういう時は声が出ない事が救われる。
そして、何とか弟を救い出すのだから強い子だ。

史実は全員虐殺の状態だったらしいけれども、もしかしたらマルティーナのように救われた子供もいるかも知れない。
そして、救われた赤ん坊もいるかも知れない。

何もかも失って、ようやく声が出るようになったマルティーヌの姿に、この映画を見る者は希望を見出せるだろうか。
「やがて来る者」は、「希望」や「平和」だと思って良いのだろうか。


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