『博士と彼女のセオリー』恋愛のセオリー

博士と彼女のセオリー~ THE THEORY OF EVERYTHING ~ 

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監督: ジェームズ・マーシュ   
キャスト: エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、ハリー・ロイド、デヴィッド・シューリス、エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー、チャーリー・コックス、エンゾ・シレンティ、マキシーン・ピーク

公開: 2015年3月13日

2015年3月16日。劇場観賞

第87回アカデミー賞・主演男優賞受賞(エディ・レッドメイン)

実在の天才物理学者・スティーヴン・ホーキング博士と、その妻・ジェーン・ホーキングの出会いから恋愛・結婚生活に到るまでを描いたストーリー。

ジェーン・ホーキングの自伝を原作としているので、当然、ホーキング博士の業績や研究よりも私生活の方を中心として描かれている。つまり、恋愛ものであり闘病物語。

この方向で全くお涙ちょうだい無く、むしろ冷え冷えするほどのリアリティを味わうのが凄い。

あらすじ
天才物理学者として将来を期待されるスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)はケンブリッジ大学大学院に在籍中、詩について勉強していたジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い恋に落ちる。その直後、彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命は2年だと言われてしまう。それでもスティーヴンと共に困難を乗り越え、彼を支えることを選んだジェーンは、二人で力を合わせて難病に立ち向かっていく。

「シネマトゥデイ」より引用

ホーキング博士はタイムマシンの存在を否定している。物理学者なのに、そこを捨てちゃうワケ…と、以前思った記憶がある。

「過去に戻れるものが将来発明されるならば、現在に未来からの旅行者が押し寄せているはずだから」と言われれば、そうですね…としか言いようがないわけだが。

そして、この話を聞いた時は私は博士がこんな病と闘っている人とは知らなかったのである。

本当だったら、未来でALSが完治する治療法を発見して過去に持って行きたいと一番望んでいるのは博士自身だったろう。

しかし、博士はそんな夢みたいな未来は捨てたのだ。彼の時間はもっとリアルに進んでいる。

人間は過去に戻れなくても未来には必ず行くのである。
今、こうして座ってパソコンを打っている間にも時間は進んでいる。打った文字数が増えていく。パソコンの中ですら時間は進む。

生きている限り希望はある。

というのは、生きている限り未来へは行けるという事。

女目線、妻目線から見たこの作品は、所々で複雑な気持ちにさせられる。

学生時代に発症した博士の人生と寄り添うという事は、当然、介護生活の覚悟をする事である。ここまで出来る人はなかなか居ない。ここまで強い人もいない。

これが「理想の夫婦」と言われてしまったら誰も理想に追いつけない。これが「理想の妻」だったら生きていてゴメンナサイの気持ちになってくる。

しかし、このジェーンという人、決して聖女のように描かれているわけではない。
「すごいよね…」と思いながら見たり、「えっ、そこは付いて行かないの?」と驚かされたり、中盤以降は「これ大丈夫なの~?」と思うシーンも多く……。

ようするに、何をしても複雑な気持ちで見守ってしまう女性なのだった。

強くて優しくて、したたかで弱い…そんな複雑な女をフェリシティ・ジョーンズが好演。
自分的にはオスカーを受賞したエディ・レッドメインの演技よりも彼女の方にばかり目が行ってしまった。キャラクター的にも。

世間の目だけではなくて親戚の目まで。負かされないように頑張る人生は大変だったろう。夫は世界が認める優秀な頭脳だ。これを自分のためではなく世界のために守り抜く。
世界は彼女のことも表彰するべき。

恋愛映画といってもキラキラした時間は少ない。ポスターを見てキラキラを感じてしまった人は、その感覚をもっと遥かに重いものとすり替えてから観た方がいいです。

中盤過ぎから、どんどん「えええ…??」と、なっていくが、それもたぶん博士と彼女の中では決まっていたセオリーなのである。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


筋力は衰えていくのに頭脳は変わらない。頭は冴えているのに体は動かない。次第に内臓の筋力も失われていく。「ALS」という治療法のない難病。

ジェーンがスティーヴンとの結婚生活を決心したのは、彼の「余命」を支えるためだったのだろう…と思う。若い2人にとって残された2年という時間。そして学者としてのスティーヴンに残された時間。

しかし、病の進行はなぜか停止した。時間がいくらでも現れたのだ。

止まったからといって当然回復するわけではなく、終わらない介護生活、周囲からのプレッシャー、誰にも頼れない孤独。研究の事しか考えていないように見えたスティーブンが一番ジェーンの本音に気づいていたかも知れない。

ジョナサンは、妻を失くした孤独から立ち直りかけている優しい男だった。
3人の生活シーンは微笑ましくもあったけれども、ちょっと岡本かの子を思い出しちゃった。これは絶対に周囲に何か言われるよね、普通。と思っていたら言われたし。しかも、実家。

爆発消滅寸前だった妻に「自由」と「希望」を与えた博士。

神は世界を創造しない。
そういうが、博士はずいぶん多くの神の恩恵を受けているよ。(奇跡と神はまた異なるものなのか)

病に憑りつかれても脳は死ななかった。肺炎で声を失っても意思を伝える方法は得た。

何よりも。
ジェーンと出会い、ジェーンに支えられる人生を得た事が一番の奇跡。
3人もの子どもたちを得たのも奇跡。

タイムマシーンは過去へ行かない…
けれども時間は逆行する。出会いの日まで戻っても何も間違っていなかったことを確認するため。

「博士と彼女のセオリー」公式サイト

  

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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

 

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