『岬の兄妹』福祉はどこへ行った

岬の兄妹

『岬の兄妹』感想

作品情報

監督・キャスト

監督: 片山慎三
キャスト: 松浦祐也、和田光沙、北山雅康、岩谷健司、中村祐太郎、平田敬士、風祭ゆき、ナガセケイ、松澤匠、芹澤興人、杉本安生

日本公開日

公開: 2019年03月01日

レビュー

☆☆☆

劇場観賞: 2019年3月4日

 

ずっと「生保生保ーー」と思いながら眉をひそめて見続けた。

臭うような気持ち悪さ。

この記事は短感です。後ほど追記するかどうかは不明です。

あらすじ

港町、仕事を干され生活に困った兄は、自閉症の妹が町の男に体を許し金銭を受け取っていたこと を知る。罪の意識を持ちつつも互いの生活のため妹へ売春の斡旋をし始める兄だったが、今まで理解のしようもなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れ、戸惑う日々を送る。そんな時、妹の心と体にも変化が起き始めていた…。ふたりぼっちになった障碍を持つ兄妹が、犯罪に手を染めたことから人生が動きだす…(Filmarksより引用)

あなたも私も偽善者

これは「偽善者」を糾弾する作品なのだと思った。

主人公の友人・ハジメくんがその例で、あんな職業に就いていながら福祉を紹介してくれるわけでもなくただ主人公を責めているだけなんて、どう考えても納得行かない。

福祉が届くべきところに届かない現状はこの国のリアルだ。

けれども、この物語の場合は、ちょっと違う気がした。

誰がどう見ても福祉が必要な家なのに、「誰も知らない」のではなく、「誰も言わない」。

誰も言わない

『万引き家族』のレビューに「日本は充分貧しい。福祉は全く行き届いていない。誰も知らないだけで。」と書いたが、この作品世界は福祉が届かなさすぎる。

『万引き家族』誰も知らない
映画『万引き家族』のあらすじ・レビュー・考察など。後半はネタバレ感想を…カンヌ国際映画祭・パルムドール(最高賞)、日本アカデミー賞など国内外の賞を多数獲得。『誰も知らない』『そして父になる』などの是枝裕和作品。キャスト: 樹木希林、安藤サクラ、松岡茉優、…

片足を引きずらなければならないほどの障がいを持つ兄、知的障がいのある妹。誰かが「役所に相談しろ」と言うべきだ。なのに誰も言わない。言わない事に悪意すら感じる。「無関心」と「偽善」の犠牲。

 
ここまで来ると、やはり不自然だと感じてしまうので、これは闇ファンタジーなのだと思う事にした。

描かれていることは、ちょっと現実に遠い。

けれども、「無関心」と「偽善」はリアル。

それでも生きていく

兄のやることは「福祉に頼らないこと」を含めて嫌悪感しかない。妹を連れまわして売春させる図は滑稽だ。(笑えないけれど)

それでも、ここが福祉のない国だと考えたら、きっと、こう生きるしかない。

 
それに、妹は恐らく……好きだから。

 

和田光沙さんがひたすら凄い。

 


以下ネタバレ感想

 

ハジメくんは警察官なのに、どうして生活保護の手続きを教えてあげないの金なんか貸してる場合じゃないだろ。と何度もモンモンとする。
 

いくら「偽善」の世の中だとしても、誰だってそのくらいはアドバイスしてあげるよね。その段階で、私の中で「ハジメくんという人は偽善の世を生きている現代社会のメタファなのだ」ということになったのだった……。

 
とにかく、良夫に同情できなくて。

自分自身は役所に行く事もせず妹に売春させて、ハジメくんやリストラした会社を罵倒する身勝手さ。

真理子が妊娠したら、まさかの「客に」父親になってくれと要求……。自分自身にも障がいがあるのに、低身長病態のある客を見下す醜悪さ。

妹を使って売春斡旋している後ろめたさを、「虐められている学生を助けている」「相手がいない男たちを助けている」という気持ちのすり替えで誤魔化している。

本当に。同情できない。笑えもしない。

 
けれども、こんな人は現実にいるし、たぶん私の中のどこかにも巣食っている。

人間の嫌らしさをえぐりまくった映画だったなぁ。

正直、何度も観たいものではない(笑)

 

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