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『臍帯』一番大切なもの

臍帯

『臍帯』感想

作品情報

監督: 橋本直樹
出演: 於保佐代子、柳生みゆ、さくまひろし、滝沢涼子、深水元基、藤真美穂、藤川俊生、桝木亜子、勝俣幸子、坂本裕一、佐藤智幸、織田美織、高橋一平
公開: 2012年6月16日

レビュー

レビュー : ☆☆☆☆

2013年9月3日 DVD観賞。

 

つらい…。
この子は一体、何のために生まれてきたのだろう。

◆あらすじ
一軒の家の幸せそうな情景を遠くから見つめている女が1人いた。
彼女は、この家の主婦に叶わぬ想いを持って毎日見つめ続ける。
やがて彼女は、この家の娘に近づくことを決意する。

『臍帯』感想

 

思慕の念を止めることができないから、それこそ生まれてきた時からずっと抱えて生きてきた思いだから、憎しみに変わってしまう。

けれども、憎み切る事もできないのだ。

タイトルは見つめられている女と見つめている女をかつて繋いでいた物を表している。

ひどい親と愛情に飢える子供を描いた映画やドラマは年間に何本も見ている気がするが、ここまでガツンときたのは久しぶりかも知れない。

そして、この子を産んだ女の事も酷いとは思うけれども気持ちが丸っきり解らないわけではないのである。誰だって幸せを求め、憧れる気持ちは持っている。それは誰も責めることはできない。

母親だって愚かな一人の人間なんだもの。葬り去りたい過去はある。

『臍帯』感想

 

鬱々とした暗い海と雨の風景。
窓の中にある手が届かない幸せ。

ミカを演じた於保佐代子の暗く澄んだ眼力が凄い。
わけも解らず突然恐怖のどん底に陥れられた綾乃を演じる柳生みゆのギリギリの演技が凄い。

そして、愚かな母を演じた滝沢涼子の「普通のお母さん」から「過去がある女」への変化。

主要キャストの3人に魅せられた。

 

淡々とした作品だが、目が離せなかった。
映像と音楽だけで語られるミカの過去が、どうしようもなく悲しくて、ただ泣いた。

そして、見終わってからもどうしたら良かったのかまるで解らない。

あったかも知れない幸せはゴミ捨て場に置き去りにされてしまった。

 

2010年・第23回東京国際映画祭出品作品。
公開劇場は少なく、DVDはレンタルしかされていないらしい。

橋本直樹監督は、長編映画初だとか…。
他の作品も、もっと見てみたくなる。

 

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お母さん、ぎゅうってして、ぎゅうってして、お母さん、お母さん…。

 

もう成人に近い年齢なのに、幼子のように自分を突き刺した母にむしゃぶりつく最期のシーンが壮絶だった。

ずっと愛情を求めてきて、もうおかしくなっていたんだろうなぁ…と思う。

 

そんな所に車止めて、警察が来たらすぐに捕まってしまうよ、と思ったけれども、そんな事はたぶんもうどうでも良かったんだ。

一度でいいから「ぎゅっと」してもらえれば、それで良かったんだ。

娘を1人捨てた母は、綾乃を心配しているような顔をしても本当に綾乃のために動いたわけでは無かった。 本当に綾乃を取り戻したければ、自分の幸せなんてかなぐり捨てて夫に真実を打ち明け、警察を呼んだだろう。

けれども、それは出来なかった。秘密の暴露は幸せを失くす危険があるから。
どこまでも自分勝手で痛い母親、直子。

 

少し甘えた声で話す綾乃が監禁されてからの演技が凄い。

ミカとの慣れない殴り合い。たぶん、腕力を使った喧嘩など1度もしたことなかっただろうお嬢さん。人を殴った事など恐らくないのはミカも同じ。

滑稽なほど弱々しい戦いが、かえってリアル。

 

水も食料も与えられず弱ってからの表情も…本当に死を間近にした人のように見えた。

 

「一番大切な物を壊してあげる」

と言いながら、手を下すことはせず縛りつけることもせず、結局、ミカという子はとても優しい。

憎しみは優しさに勝てていない。

「復讐」ではなくて、ただ解ってほしかっただけなのだと、ラストシーンでそう思った。

直子の腹の上で息が絶えたミカが海へ帰っていく映像は、胎内に戻る子供を思わせた。

 

子供を育てられない人間が母親であるという事は、本当に罪深い業。

「臍帯」公式サイト

 

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