『マイ・バック・ページ』暴力で世界は変らない

マイ・バック・ページ

 

監督: 山下敦弘   

出演: 妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里、石橋杏奈、中村蒼、韓英恵、長塚圭史、山内圭哉、古館寛治、あがた森魚、三浦友和
公開: 2011年5月

        

DVD鑑賞。

原作は、評論家の川本三郎氏が書いた回顧録「マイ・バック・ページ」
つまり、実話ベースの作品である。

1971年に埼玉県朝霞市の陸上自衛隊朝霞駐屯地内で自衛官が殺害された。
犯人は、大学生3人。
この「赤衛軍事件」がベースになっている。

・「朝霞自衛官殺害事件」by Wikipedia
参考は上記のページをどうぞ。ただし、これを読むと映画の内容も大体ネタバレします。

事の発端は学生運動である。
1969年の「安田講堂攻防戦」に乗り遅れた男とそれを傍観していた男。
彼らが目指していた物は、一体何だったのだろうか?

そもそも、私はこの全共闘という物が目指していたものが全く分からないのである。
これに関わるドラマや本は何本か見たが、何がしたいのかよく解らない。

ただ、あの時代の大学生は熱かったんだな、と思うだけ。
そして、申し訳ないが、あまり賢い生き方とも思えない。

現在、20歳くらいの世代がゆとり教育で「ゆとりん」などと呼ばれているが、大学4年間、親がいくら払ったかもよく知らず、バイトと遊びにうつつを抜かしていた私なども、あの頃学生だった人たちから見たら「ゆとりん」なんだろうね…。

こんな私に梅沢という人間が理解できるはずもなく、もう、ただ、ひたすらに怒りがこみ上げた。

これを見て一番に思い出したのは、あの「オウム真理教」である。
梅沢が麻原に見えて仕方なかった。

それを雄弁に不気味に演じた松山ケンイチが素晴らしい。

妻夫木聡、演じる沢田は、なぜこの男を信じたのだろう。

ばかだばかだばかだ・・・

と、散々思いつつも、ラストの一幕には貰い泣きする。

後味は良くない。
しかし、心に当たる物は確かに存在する作品だったと思う。

 

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 

    


何で俺、あいつのこと信じちゃったのかなあ。
信じたかったのかなあ。

沢村自身にも解らないその時に浮かされていた熱。

彼はジャーナリストとして手柄が欲しかった。
梅沢がチェ・ゲバラのようになると信じていた。

自分が逮捕されたら、仲間をさっさと売るような男だよ。

自分は武器を調達しろと言っただけで、殺せとは言ってない。

やったのは仲間の独断だと言い張る。
自分も命令されていたんだと言い張る。
取調べのシーンで、まさに麻原彰晃の姿を見た。

我々は自分自身を狂気に追い込んでいる。
狂気に追い込むことで正気に近づけているんです。

そんな事、あるわけないだろう。狂ってる。

記事が出れば僕は本物になれるんですよ。

それを聞いても、まだ彼を庇った沢田。

どうしてかなぁ・・・
もう、「本物」ではないと解っていたはずなのに。

「とにかく、生きてて良かったよ。」

タモツの言葉で初めて涙を流す沢田。

あんな男のせいで、そして自分もそれに協力したせいで、失なわれてしまった命がある。

その贖罪の涙なのか・・・
沢田を見ながら、私もいつの間にかポロポロ泣いていた。

・「マイ・バック・ページ」 公式サイト

 

 

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