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映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『この国の空』私が一番きれいだったとき

邦画・か行 荒井晴彦 二階堂ふみ 長谷川博己 富田靖子 利重剛 上田耕一 石橋蓮司 奥田瑛二 工藤夕貴 福本清三 日本映画 第二次世界大戦 太平洋戦争 ★★★

この国の空

 

   

 
監督: 荒井晴彦
キャスト: 二階堂ふみ、長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二、滝沢涼子、斉藤とも子、北浦愛、富岡忠文、川瀬陽太、所里沙子、土田環、福本清三、木本順子、前島貴志、上田こずえ、岡部優里、川鶴晃弘、下元佳好、高橋弘志、司裕介、星野美恵子、宮崎恵美子、矢部義章、宮田健吾、福岡歓太、山野井邦彦、あきやまりこ、太田敦子、奥村由香里、小泉敏生、鈴川法子、武田晶子、西山清孝、細川純一、宮永淳子、山口幸晴、篠野翼、井上蒼太郎、七浦進、泉知奈津、大矢敬典、桂登志子、小峰隆司、髙野由味子、武田香織、林健太郎、松永吉訓、安井孝、山中悦郎、覚野光樹、小野寛、七浦紀美代
公開: 2015年8月8日 : 2016年2月17日 DVD観賞


背景は太平洋戦時下だが、激しい空襲や無残な風景が主体となっているのではなく、描かれるのはあくまでもその情景の中で生きる人々である。

焼け跡は、むしろ淡々と普通にそこにある。
「私がいちばん美しかった時」そこにあったのは戦争だった。

◆あらすじ
終戦が近い東京で、母(工藤夕貴)、叔母と共に暮らす19歳の里子(二階堂ふみ)は、何度も降り掛かる空襲に恐怖し、結婚適齢期なのに戦況が悪化し結婚など望めそうもない状況に不安を抱いていた。そんな中、丙種により徴兵を免除され、妻子を疎開させ一人で生活している隣人・市毛(長谷川博己)の身の回りの世話をすることに楽しみを見いだした里子に、いつしか自らのうちに潜む女性としての本能が芽生え……。(シネマトゥデイより引用)

 

とにかく、よく食べる描写のある映画である。

昭和二十年。物語は東京大空襲後から始まっている。

ヒロインが暮らす家は杉並にあるらしいが空襲は免れているようで、比較的余裕のある生活を見せている。

しかし、空襲を免れているからといって、普通に穏やかに生活できるはずもない。

食料は配給であり、灯りは消さねばならず、町に子どもがいない。
そして、若い男も居なかった。

ヒロインの里子は19歳。本来なら結婚相手が決まっていてもおかしくなく、お洒落して友達と出かけていてもおかしくない。

戦争は彼女から出会いと娘盛りを奪っていた。

「戦時中」を描く作品として、視点が面白い。

警報が鳴って爆撃があり、炎の中を逃げ惑うようなハラハラする描写はなく、登場人物たちは「戦時中なのに」と思うくらい普通の生活をしている。

しかし、当然心中は「普通」ではない。警報は毎晩鳴っている。遠くの空が赤く光っている。光っている空の下には何百もの真っ黒い死体がある。

明日は我が身だという焦燥感と死への憧れに似た奇妙な感情。死と隣り合わせに居る人たちの死生観が浮き彫りにされた作品。

「戦争に行けない」という劣等感と「戦争に行かなくてもいい」という優越感が混同する男。「死」についてブツブツ語ったり妻子は疎開に送ってるのに、ぉぃ…という非国民っぷりが、さすがハセヒロ…。

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お母さん(工藤夕貴)と伯母さん(富田靖子)のバトルもなかなか素晴らしい。 

人の気持ちなんて理解してる場合じゃない世情、自分が生きていければそれでいいエゴ、冷たいね、汚いね、と思いつつも非常事態だから、人間だからこれが正しいだろうとも思う。『火垂るの墓』の叔母さんは鬼なのか仕方ないのか論を思い出す。

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工藤夕貴のお母さんが、そこはかとなく色っぽくて可愛くて、でも姉には厳しくて、人間臭くて素敵だったな。

里子が娘盛りを潰されているならば、このお母さんは女盛りを潰されているのよね。

二階堂ふみは、昭和もよく似合う。

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ラストのセリフ。  
なるほどな…。こんなに大きな戦いを前にしても、個人個人の戦争は違うのだなと。

日本純文学の香りがする一品。

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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「戦争で死ぬのと病気で死ぬのとどっちがいいかな。」とか、

「あなたは空襲の町に転がっている死骸をみましたか?真っ黒に焦げて丸太棒と変わりない。ところが、川に飛び込んだやつは綺麗なんだ。ぼくは何だかホッとしましたね。人間が死んでいるんだなってね。僕も死ぬならああいう恰好で死にたいって。」

とか言っちゃう男。

「戦争に行きたくない。恐いんだ。」とか遥か年下の女に言っちゃう男。

戦地で戦っている男は、死に様など気にしてる場合ではないだろう。空襲に襲われ真っ黒に焦げた遺体が転がっている所では、死に様など考えもせず逃げるだろう。

どう死ぬか、どうすれば綺麗かなど考えられるのは生きているからである。

生きてはいるが、いつ死ぬか解らない絶望と隣り合わせに居るから。

死が近くない人間は、あまり死について考えない。
死と隣り合わせに居ることが、女と、この情けない男をくっつける。

里子は 私の戦争がこれから始まるのだと思った。

戦争が終わり、彼の妻が疎開先から戻って来る。
里子にとっては、ここからが戦いなのだ。

茨木のり子の『私が一番きれいだったとき』で終わるラスト。

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

この後2人はどうなるのか。
個人的には「やめなさい」としか言えないけれども。

あなたはまだまだきれい。
若いおとこも帰ってくる。
あなたは生きた。
とてもしあわせになるのはこれからだよ。

少なくとも、その男は止めなさいって思う(笑)

『この国の空』公式サイト

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