『母と暮せば』二宮和也と暮らせば

母と暮せば

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作品情報

監督・キャスト

監督: 山田洋次
キャスト: 吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、加藤健一、広岡由里子、本田望結、小林稔侍、辻萬長、橋爪功

日本公開日

公開: 2015年12月12日

受賞

※第39回日本アカデミー賞・最優秀主演男優賞(二宮和也) 最優秀助演女優賞(黒木華)
 第70回毎日映画コンクール・男優助演賞(加藤健一)音楽賞(坂本龍一)

レビュー

☆☆☆☆

2015年12月16日 劇場観賞

山田洋次監督初のファンタジーだというが、『小さいおうち』も充分に痛々しいファンタジーだったと思っている。 そして、これはファンタジーというよりも、ホラーの域だよな…と思った。上質で上品なホラー。

母親にとって、寂しくて悲しくてこれほど切ない話はない。そして、決して嵐のファンだからこんな事をいうわけではなく、このドラマの中ではこの位置づけが「二宮和也」であることが、唯一の良心なのである。

あらすじ

◆あらすじ
1948年8月9日、長崎で助産師をしている伸子(吉永小百合)のところに、3年前に原爆で失ったはずの息子の浩二(二宮和也)がふらりと姿を見せる。あまりのことにぼうぜんとする母を尻目に、すでに死んでいる息子はその後もちょくちょく顔を出すようになる。当時医者を目指していた浩二には、将来を約束した恋人の町子(黒木華)がいたが……。(シネマトゥデイより引用)

浩二が二宮和也じゃなきゃダメな理由

天使のニノだと思って見ていたら、実はニノではなくて大野くんだったのだという……ぇっ…解るやつだけ解ればいいネタ。意味は下のネタバレ欄で。。
 

この作品はね、もう、嵐のファンで男の子の母である人は誰でもあのラストシーンに背筋を寒くしながら、こんなのダメだ!これは幸せじゃない!と叫びつつ、で、でも、まあ…ニノだし、ちょっといいよね……と複雑な気持ちに襲われることだろう…

いや…私のことですがね…。
 

だから、これはもうキャスティングが素晴らしい。

原爆で夢も希望も失った身にニノミヤである。絶望にニノミヤ。嘆きにニノミヤ。だからちょっとだけ救われるのである。

この母の人生に射すほんのわずかな光だよ。そのくらいはあって欲しいと願う全ての母の光だよ。

決して甘い楽しいファンタジーではない。当たり前だよね。怒りとあきらめに満ちたファンタジー。

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こんな結末でいいのかよ…とも思ったが、そんな人を現実に作ってしまう世界なのだから仕方ない。

現実はもっと過酷だっただろう。
だって現実の世界にはニノが居ないもの。

長すぎるほどに感じる母と子のエピソードは甘い甘い思い出話。世間のどんな母でも息子との思い出は宝よりも重い。

母と息子の物語(ちょっとホラー)

この作品、もちろん反戦の想いも込められているだろうが、実は親と子の物語だと思えば現代にも通ずるものはある。

そういう意味では監督のメッセージは『東京家族』『家族はつらいよ』と何ら変わらないのよね。

「親を大切に」
そういう事よね。

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基本的に恐れ多くも吉永小百合の出演作は総じて「吉永小百合のため」の映画になっちゃってる感じがしてあまり好きではないのだけれども、この作品の吉永さんはすごく良かった。

孤独で悲しくて、ちょっとずるい女の顔もあって。
何よりも、死にそうだった。孤独で死にそうだった。
その哀れさに魅了された。

 


以下ネタバレ感想

 

つまり、アレだよね…天使じゃなくて「死神くん」だったという結末の衝撃。。

「マッチ売りの少女」を読んで「これはハッピーエンドだよね」という人は、なかなかポジティブな人だと思うわけ。

この作品も同じだよね。

大事な息子が帰って来るのをずっと待ち続けた母が、ついにあきらめ。

息子の嫁になるはずだった可愛い娘もついに他の男の所に行ってしまい。

原爆なんてなければこんな事にならなかったのに…もう死んでしまいたい

…という絶望の中で擦ったマッチの炎の中に息子が現れたのである。
 

浩二は言っていたじゃないか。

「母さん、なかなかあきらめてくれないから、僕、出て来れなかったんだよ」

母は浩二が生きて帰って来るという執念で今まで生きていたのだ。

もう帰って来ない、自分は1人だと絶望したから死んでしまうのである。
 

だから、ここで迎えに来るのがニノだってことだけが、この物語の救い。

もちろん…

二宮和也が迎えに来たって嬉しくないという人は、自分が好きな誰かに脳内変換して見ればいいのだ。

ここだけが、見ている人間が「ニノが迎えに来るなら……この人ちょっと羨ましい…」と思える所なのである。
 

だから、この映画を観て涙した人は、自分のお母さんが「ニノが迎えに来るなら死んでもいいか」なんて思わなくて済むようにしてあげないと。

親が孤独の中で死んでしまうような事が無いようにしないと。

そういう事なのだろうな、と。
年老いて1人になった母を持つ身としては、叱られた気がした。

 


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