『7番房の奇跡』セーラームーンのランドセル

7番房の奇跡

原題 : ~ 7번방의 선물 / Miracle in Cell No.7 ~

作品情報

監督・キャスト

監督: イ・ファンギョン
キャスト: リュ・スンリョン、パク・シネ、カル・ソウォン、チョン・ジニョン、オ・ダルス、パク・ウォンサン、キム・ジョンテ、チョン・マンシク、キム・ギチョン

日本公開日

公開: 2014年1月25日

レビュー

☆☆☆☆

2015年1月5日。DVD観賞

こんなに理不尽で辛い話なのに後味は人の温かさに泣くんだよな……。

 
冬の白い雪空に浮かぶ黄色い風船を見上げる主人公。
その意味が解るクライマックスは天上の楽園。地上はコメディ。
泣いていいんだか、笑っていいんだか、もう…。

あらすじ

<あらすじ>
イェスンは、数年前に起きたある幼女暴行殺人事件の弁護のために模擬国民参加裁判の法廷に立っていた。
数年前、1人の少女が知的障がい者の男によって暴行殺人の犠牲になる。少女は警察庁長官の娘だった。当時の裁判で男は罪を認め死刑判決を受ける。
容疑者の男にも殺された少女と同じ年の娘がいた。

理不尽な事件

少女は頭から血を流して倒れていた。男が少女をベタベタ触っているのを通りがかった女性が目撃した。ただそれだけ。

 

娘を殺された警察庁長官の恨みは深い。それは解る。解るけれども、これは駄目だろう…。

そんな残酷な映像が映し出されるのとは裏腹に楽しく優しさ溢れる刑務所描写。

個性的なキャラクターが温かく主人公父娘を包む。
7番房の奇跡1.png

 

少女期のイェスンを演じるカル・ソウォンちゃんが可愛らしく、表情も動きも天才的…。この子を守りたいと駆けずり回る7番房の面々の気持ちが見ている方にもそのまま沁み込んでくる。

ファンタジー

悲惨な現状を笑いで包み込む。残虐な事件の中にあってもあくまでも基本はファンタジー。

 

こんな事、あるわけないだろう~とツッコみつつも泣きながら笑いながら気持ちを持っていかれて許してしまう。

父を思うイェスンの涙に泣かされ、刑務所の人たちに笑わされ、理不尽な権力の横暴に眉をしかめ、人の優しさに泣く。

 
こういう韓国映画の演出は本当に……凄い。

「I am Sam」との比較を目にするけれども、こういう演出は独特だと思うの。

 
自分がどういう感情で見ればいいのか掴みどころなく、フワフワと映像の成されるがままに見続けて、最終的には黄色い風船を見上げる主人公の気持ちに同化している。
7番房の奇跡.png

 
どんなにひどい状況の中にも情けはあり、どんな辛い結果の果てにも優しさはある。

けれども、やはり、やり切れないのだった…。
EDの曲に癒されながらも、最後まで自分が得た曖昧な後味を噛みしめる。

 
こういう涙を流す作品を見たのは久々かも。
 


以下ネタバレ感想

 

ヨングは少女を殺していない。
刑務所の中でヨングの記憶を丁寧に拾ってみんなで考えたイメージが事実なのだろう。

 
けれども、警察はそんな風に丁寧にヨングの話を聞いてくれなかった。警察は「警察庁長官の娘を殺した憎い犯人」を逮捕し、長官の復讐を果たす手伝いをする事しか頭になかった。

凍った地面で滑って頭を打ち死亡した少女をヨングはただ習った通りに救護活動しようとしただけ。

服のボタンを外して緩め、胸を押して心臓マッサージし、人工呼吸する…。その現場を見られたら他人にどう思われるかなど考えない。ただ助けたいだけ。子どものように純真なその行動が冤罪の材料にされる。

 
自分が死ねばイェスンは助かる。

そんな脅しを信じてしまうほどの純真さを法は庇ってくれなかった。

こんな生きにくい世の中でも救ってくれる人はいる。

ヨングの純真さとイェスンの健気さが父娘に最後の時間をくれる。

 
壁を越えられなかった黄色い気球。
事件の切っ掛けになった黄色いセーラームーンのランドセル。

 
どんなに正義を行っても、どんなに今正しい結果を得られても、父はもうこの世に居ない。

けれども、冤罪は晴らした。

無罪判決を告げるガベルの音に泣く。

刑務所は父の自由と命を奪ったが、同時に温かく優しい思い出の場所でもある。

それが解るから、風船を見上げるイェスンの表情にまた泣けるのだった。

 

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