『クイズ・ショウ』テレビは世界一大きな教室

クイズ・ショウ

原題 : ~ QUIZ SHOW ~

 

作品情報

監督・キャスト

監督: ロバート・レッドフォード   
出演: ジョン・タートゥーロ、レイフ・ファインズ、ロブ・モロー、ポール・スコフィールド、デヴィッド・ペイマー、グリフィン・ダン、ミラ・ソルヴィーノ、マーティン・スコセッシ、バリー・レヴィンソン

日本公開日

1995年3月25日

レビュー

☆☆☆☆

 
2014年5月7日。DVD観賞

1950年代。NBCの人気クイズ番組『21(トウェンティワン)』を舞台に起きた実在の出来事をベースにしたストーリー。

あらすじ

高額賞金で高視聴率の人気テレビ番組『21(トウェンティワン)』で連勝していたチャンピオン、ハービー・ステンペルは、視聴率の陰りを理由に「やらせ」敗退させられる。

代わりにチャンピオンになった大学講師のチャールズ・ヴァン・ドーレンは、親も高名な作家で教育者であり、家柄もよく容姿端麗。
ハービーによる告発が封印されたニュースを読んだ立法管理小委員会の捜査官、ディック・グッドウィンは単独で『21』の調査を始める。

 

人が死んだり大きく物事が動くわけでもないのに目が離せず、夢中で見た。

毎週高額賞金が出るお祭りのようにバブリーな番組。
1950年代、テレビ番組の成長期。民衆はテレビの中にドリームを求める。その裏にいる人間は視聴率・視聴率だ。視聴率を上げるためにどんな手でも使う。

それから60年以上経った現代でも、テレビはあまり変わらない。
私たちが見ているテレビ番組では「やらせ」は始終横行している。 私たちも頭半分ではそんな物だろうと思いながら見ている。

何かが明るみに出れば眉はしかめるが、直接視聴者が損害を被る事はないからいつか忘れ去る。一時のスキャンダルがまたテレビを賑やかにするだけの話だ。

「やらせをして何が悪い。ショウなんだよ!」
そう言われれば確かにそうなんだ。関わる人間を糾弾しても報われることはない。

正しい行いがいつも正しいとは限らない。結果、傷つく人間もいる。
誰も幸せにならない結果が待っているかも知れない。

それでも、正しくありたかった人の気持ちが痛々しいほど伝わった。

いつの時代だってテレビは勝ち続ける。

苦い結末に締め付けられるような思いで涙が出た。
EDでテレビを楽しむ人々の姿が辛かった。

楽しい世界の裏には綺麗なものばかりがあるとは限らない…。

レッドフォード監督らしい、正しくも苦さが残る作品。

制作は1994年。もう20年前。どうりでキャストが若いわけだ…。

レイフ・ファインズがすごく若いよ美しいよヴォルデモート。
繊細な表情の演技…痛々しい青年。
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こっちも若い…グッドウィン役、ロブ・モロー。ヴァン・ドーレンを見守る目に愛を感じる。
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たぶん、友情はあったんだ。決して奥さんが言っていたような「卑屈なユダヤ人根性」などではなく。
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正しい事が正しく行えないほど世の中は複雑だ。
それは、何年経っても変わらない。

それでも立ち向かう人がいるから秩序は保たれる。
解ってくれる人は必ず何処かにいる…と信じたい。

 

 


以下ネタバレ感想

 

 

グレゴリー・ペックにはスタントマン。大統領にはゴーストライターがいる。

それと、クイズの答えを初めから知らされている「やらせ」とは違うだろ…詭弁が過ぎると思う。テレビマンは口が上手い。

3回も観た第28回アカデミー作品賞『マーティ』を間違えて答えろという指示。
ハービーは、たぶんそれが一番イヤだった。違う問題だったらここまで拘らなかったかも知れない。

だから、正しい回答をいうのかと思った。
折れたのは次のパネルクイズのタレントになれるという話を信じたから。
欲に負けた。

ヴァン・ドーレンは自分の能力に自信を持てずにいた。
容姿端麗の賢いスターはテレビが作り出した虚像だった。
金と自己顕示欲に負けた。

本当の事を言えばいいのに。グッドウィンのためにも言って欲しい…
ずっとそう思いながら見ていた。

けれども、あんなに素晴らしいスピーチですべてを告白した結果、得た物はマスコミの好奇心の餌食になる事だけだった。

グッドウィンも想定していなかった苦い結果。
別にヴァン・ドーレンを追い込みたかったわけではない。
テレビ業界の腐敗を正したかっただけなのに。

いつも、テレビは勝ち続けるんだ。

この敵は装うのが上手く演出が上手く、逃げるのが上手く、撃退することなんかできない。

この映画が作られて20年。
今でもそれが変わっていない事に驚く。

真実を告白した結果、ヴァン・ドーレンは二度と教壇に立つ事はなかったらしい。

ヴァン・ドーレンに嫉妬していたハービーさえ勝った気にならない結末。

テレビの力は恐ろしい。


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・象のロケット

★前田有一の超映画批評★

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