『偽りなき者』冤罪事件の作り方

偽りなき者

原題 : ~ JAGTEN ~

作品情報

監督・キャスト

監督: トマス・ヴィンターベア
出演: マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、アニカ・ヴィタコプ、ラセ・フォーゲルストラム、スーセ・ウォルド、ラース・ランゼ

受賞

第65回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門・男優賞受賞(マッツ・ミケルセン)

日本公開日

公開: 2013年3月16日

レビュー

☆☆☆☆

2013年10月9日。DVD観賞。

 
原題は直訳すると「HUNT」=狩り…である。

本当に狩られている感覚だった。

こんな馬鹿馬鹿しい事、ある!?

と、怒りで頭がおかしくなりそうだった。

見ている間、ずっとイライラした。だって…理不尽極まりないじゃないか。

特に、きっとアレはああなるんじゃないだろうか、という嫌な予感が的中しちゃったシーンなんか…もう。

あらすじ

失業し、離婚し、1人息子を自分の元に呼び寄せたい中、幼稚園の助手という仕事を得て安定した暮らしを始めたルーカスは、ある1人の少女の作り話によって過酷な生活を強いられることになる。

恐るべき子どもと集団パニック

子どもは無垢で嘘などつかないなど、どうして本気で思えるのだろう。

自分の子どもを信じたい気持ちは分かる。
でも、どうしてそうなっちゃうの

いわゆる「集団パニック」の恐ろしさが描かれる本作。

閉鎖された世界の頭のおかしい権力者が「あいつが悪い」と断定する→知的な識者だと信じている人たちがあっという間に話に巻き込まれる→犯人断定。

冤罪事件の作り方。

この過程の間に「疑い」が何もないことが恐い。こんな現実あったら恐い。

子供の頃からずっとこの町の住人なんだよね。みんな…。友情って一体何なのだ。

主人公・ルーカスが引きこもりで友達もいなくて以前から不審者っぽかったならまだ解るけれども、仲間はいっぱいいたはずなのに。

 

周防正行監督の「それでもボクはやってない」と、似た感覚はあるものの、信じてくれる心強い味方がいない分、あれよりももっともっと気分がドロドロする。まさに狩られていく感じ。

後味悪すぎるラスト

結末も全くスッキリしなかった。
私だったら、あんな町に住み続けられないけど。

そして、ラストのあのシーンは不要だったと思う。

サスペンスとして秀逸だとは思う。いい映画だとも思う。

少なくとも教えてくれる事はある。

汝の隣人を信ぜよ…と。

血圧の高い方にはお薦めしません。ブチ切れそうだから。

 


以下ネタバレ感想

 

ファニーーーーーーー!!!!!!

 
ああなるんじゃないかと思ったんだよ。…もう、すっごく心配していたらその通りになった。

犬に罪はないだろ~。

「変質者」を追い詰めるつもりで自分自身がおかしくなっちゃってるのが解らない「誰か」。恐すぎる。

 
園長のグレテに話を切り出された時に、どうしてもっと本気で否定しなかったんだろう。

まぁ…子どものたわ言が自分を本当に追い詰める結果になるとは思ってもみなかっただろうから……。

本人の居ない所でどんどん広がっていく嘘。

 

じゃあ彼は見せたんだね。
きみに触らせた?
白い物が出た?

誘導してるじゃないか。
犯罪と犯人を作り上げているじゃないか。

子どもに罪はないのだろう。

しかし、ごめんなさい。私はこの子を許せないし、この子の親も許せない。特にグレテは許せない。

訴えるわ。そして、こんな裏切り者だらけの町には住まないわ。

ルーカスは心が広すぎる…。

仕事も信用も失って愛犬まで失くしたのに

「父よ。というだけであなたは神の子になれる」

…じゃねーーよ

…と思ってしまった私は心が狭すぎるのでしょうか、神よ。

 

私たちがこの映画を見て考えなくてはならないのは、こういう人を作らないためにどうすればいいかという事。

子どもは信じてあげたいよ。
けれども、嘘を広げた大人のせいで、この子も傷つく結果になった。

真実を見極めるって、きっと難しい。

 


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