【終戦のエンペラー】無私の民、日本人

終戦のエンペラー~ EMPEROR ~

   

監督: ピーター・ウェーバー   
出演: マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ、西田敏行、初音映莉子、桃井かおり、伊武雅刀、羽田昌義、火野正平、中村雅俊、夏八木勲、片岡孝太郎
公開: 2013年7月27日

2013年7月31日。劇場観賞。

1945年8月15日正午、昭和天皇は玉音放送によってポツダム宣言の受諾を表明し、日本の降伏が全国民に知らされた。これにより、太平洋戦争は終結。
8月30日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)司令官、ダグラス・マッカーサー元帥が日本に上陸。日本統治のための指揮を執る事になる。

ここまでは、恐らく義務教育で教わる範囲。日本人ならば誰でも知っている事だろう。

マッカーサーは日本に上陸すると戦争責任者である戦犯を検挙し、裁判で裁く準備を始めた。
この作品では、そのいわゆる戦後処理について描かれている。

1945年8月30日、GHQ最高司令官ダグラス・マッカーサーは日本に上陸し、第二次世界大戦の戦争責任を問うために活動を始めるが、頭を悩ませたのは「天皇」の存在だった。
「天皇」は果たしてこの戦争の最高責任者たるか否か。また、天皇を逮捕や処刑した場合、日本人にどのような影響を与えるのか。
マッカーサーは極秘調査として、部下のボナー・フェラーズ准将にこの戦争の「真の責任者」を探し出すよう依頼する。
フェラーズには開戦前、学生時代に恋人同士だった「あや」という女性がおり、彼女の捜索も同時に始めるのだった。
10日間という短期間の中で、「天皇」に戦争責任があるか否かの捜査は難航する。

海外が描く日本…というのは、とんでもない物が多いので、あまり期待しないで見に行ったものの、全く違和感なく「日本」が描かれていた事にまず驚く。

撮影は全編に渡ってニュージーランドで行われたらしいが、そこに再現された当時の日本が素晴らしい。
マッカーサーが上陸した厚木基地、アメリカ大使館、空襲の焼け跡、田舎の家屋。家の中の調度から料理に至るまで、しっかり「日本」だった。

もちろん、私だって当時の日本をこの目で見たわけではないが、「当時の日本だと思えるように」作られていた。それだけでももう感無量。

役者さん達もそれぞれ当時の人の雰囲気がある。
マッカーサー役のトミー・リー・ジョーンズ。
  有名なパイプをくわえたサングラス姿…。ものすごく「らしい」。
   

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日本を描くというならば、やはりきちんと描いてくれなければ全てが嘘にしか見えなくなるわけで、そこが出来ているだけでも見る価値がある。

ストーリーも、どうせアメリカ万歳の綺麗ごとになっているんでしょ…と思っていたのだけれども、全くそういう事が無かった。

アメリカ人にとって、全てが「グレー」で非常に解りにくい人種である「日本人」…という描写が新鮮だ。
確かに戦争を起こしたくせに、やりたくてやったわけではないらしい。
アメリカから見れば「王」、つまり日本の長であるはずの天皇は、この戦争についてどう考えていたのかもまるで解らない。

フェラーズは度々あやの言葉を思い出す。
「信奉」が理解できれば、あなたも日本人を理解できるのに。

真の戦争責任者は誰なのか。日本人の本音と建て前。という謎を解くミステリー部分と、戦争で何もかも失った人々の心を描く人間ドラマ、そして、フェラーズとあやの恋愛部分…それらが融合して全く飽きない物語になっていた。

近年、日本人が作る戦争映画やドラマは何だかお綺麗なお涙頂戴ものばかりで、見てガッカリな事が多い。外国が撮った日本の方が真に迫って見えるなんて恥ずかしい気持ちになるくらい。

アメリカ制作だが、出演者のほとんどは日本人。それも、ちゃんとした日本人の役者さんである事も嬉しい。
日本の戦争映画ではお馴染みの方々も多く、見ていて安心感がある。

当時の日本、皇室にとって天皇陛下がどのように扱われていたか…。天皇の口から詠まれたお歌を披露するのにシッカリと天皇がおわす方向に頭を下げる関屋次官。こんな細かい事まできちんと再現してくれる繊細な演出。
   

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ボナー・フェラーズ准将とあやの恋愛関係は丸っきりの創作らしく原作にもないらしいが、全くそんな事は知らず原作も未読の身にとっては、この回想シーンも美しい。

大抜擢でハリウッドデビューした初音映莉子さん。美しく、可愛らしく、スタイルよく、毅然としている…という素敵な日本人女性になりきっていた。
   

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太平洋戦争が終わって、もう70年近くなる。日本は「戦争を知らない子供たち」だらけだ。
興味のある方もない方もぜひ見ていただきたい1本。

※アメリカ人のちゃぶ台返し…(ノ-_-)ノ ~┻━┻・..。;・’初めて見た。
   

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ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


 

アメリカから見れば「王」が戦争を仕切っているのが当然なわけで、「王」が知らない所で様々な事が起きているなど思いもよらない…。

多くの日本人が一部の日本人に踊らされて起こした戦争。みんなが日本は戦争すれば勝つのだと信じていた。

「 四方の海 みなはらからと思う世に など波風の 立ち騒ぐらむ」

明治天皇が詠まれた歌を開戦前の御前会議でお詠みになられて気持ちを伝えたという昭和天皇。

「四方の海にある国々は皆同胞なのに、なぜ波風を立てるのか」

天皇にはハッキリと戦争するなという事は出来なかった。そういうお立場ではなかった、と伝えるも、証拠がなければ無罪には出来ないとアメリカ的に物をいうフェラーズ。

みんなのいう事いう事が全て「グレー」。日本人の言葉は中間の美があり、中間の薄気味悪さがある…。

はっきりと戦争終結を決断されたのは天皇であった。けれども、証拠はない。だからマッカーサーは天皇と会う。

自分は断罪される覚悟でマッカーサーと対面された天皇と、断罪するためではなく共に日本を作るために会ったのだと告げるマッカーサー。

この人たちがいたからこそ、今の日本はあるのだと。
本当に感動した。
天皇が日本という国に居わす事に感謝したくなる。

戦争の悲惨さも伝えられ、上に立つ人たちの勇気と赦しの心も伝わる…いい戦争映画だった。

「終戦のエンペラー」公式サイト

 

 

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