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映画@見取り八段

自己満足映画批評ブログです。邦画・洋画などジャンル問わず観賞。劇場上映中作品のネタバレ感想は別枠で表記。ランキングは年末総評価まとめで。

『追憶と、踊りながら』夜来香(イエライシャン)

追憶と、踊りながら

~ LILTING ~ 


   

 
監督: ホン・カウ
キャスト: ベン・ウィショー、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン、モーヴァン・クリスティ、ナオミ・クリスティ、ピーター・ボウルズ
公開: 2015年5月23日
2016年2月29日 DVD観賞


冒頭から、フワーっと匂う追憶の香り。「夜来香」、神経質な母、繊細な息子、繰り返す会話…。
ああ、そうか。居ないのか。何とも言えず切ない間…。

◆あらすじ
ロンドンの介護ホームで生活しているカンボジア系中国人ジュン(チェン・ペイペイ)は、息子カイ(アンドリュー・レオン)の訪問を心待ちにしていた。彼女は息子の恋人リチャード(ベン・ウィショー)を嫌っていたが、彼はいつもジュンに優しかった。リチャードは英語のできないジュンとイギリス人のアラン(ピーター・ボウルズ)との仲を取り持つために通訳を雇い……。(シネマトゥデイより引用)

 
登場人物は少ないが、それぞれの思惑がちっとも噛みあわず、全員が孤独なのに自分の孤独に閉じこもることしかできないというとても寂しい話。

リチャードは恋人の母のこじれた心を開こうと試行錯誤する。が、相手はなかなか心を開かない。

何せこの敵は頑固である。何年も英国で暮らしながら、英語を一切学ばず使わず夫や息子に頼って閉じこもって生きてきたらしいから。

この頑固な母には確かに自分がマイノリティだとは打ち明けられなかっただろう。「震える」というカイの気持ちも理解しやすい。

時間軸は幻想のように行ったり来たり。それぞれが自分が見たい風景をそこに見る。カイがいる情景。

繊細だった恋人。ベン・ウィショーとアンドリュー・レオンが作り出す明るくて優しい2人の時間の描写が切ない。

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恋人の心に影を落としていたのは、母親だった。

決して愛していないのではなく、愛しているからこそ持て余す。

世間的には息子を縛り付ける、いわゆる「毒親」ってやつなのだろうが、私も息子を持つ母親なのでジュンの気持ちはかなり解る。そして、今、私自身の母が老いてこんな感じになっているので負担に思う子供の気持ちもよく解る。

ましてや中国人の母である。子どもを大切に思う気持ちも将来を託す気持ちも他国民から見たら理解しづらいほど大きいかも知れない。「個人」よりも「家族」が重要な国。そこで育った女が他国のホームに入れられる。考えられないほどの苦痛だろう。

ジュンの頑固で凝り固まった様子がなぜか可愛くて。この人を放っておけないアランじいさんの気持ちも解らないではない(笑)

ただ、踏み込むところまでは行かないのね。言葉が通じても表面的なことばかり撫でていては理解はできない。

自分自身も傷を抱えながら相手の気持ちを溶かしていく。
とても難しい作業だ。

年寄りには年寄りの、若者には若者の勝手さ。

強く触れすぎたら壊れそうな繊細な状況を静かに淡々とバランスを取りながら美しい映像で語る。

ラストの受け取り方は見る人それぞれかも。

私は、寂しく感じた。

ここから下ネタバレ観てない方は観てから読んでね 


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ぶっちゃけて言ってしまえば、ゲイだってことをママにカミングアウトしよう!!…という話なんだけれども…そこに行きつく前に死んでしまったから残された恋人が苦労する…という。

本当だったら一番解りあえるはずの2人なのに。大切な物を失くした者同士。

彼らが相互理解できないのは言葉だけのせいではないと一番理解しているらしいのが通訳のヴァンだというのが面白い。

「訳すな」と言われても言っちゃうし、勝手にアドバイスもしちゃう。口を挟みたくなる気持ちは解るわ。もどかしいもの。カラッとした良い子だ。ちょっとハ・ジウォンに似ている雰囲気のナオミ・クリスティ。

アランとくっついてしまえば手っ取り早くジュンは幸せになるだろうと考えるリチャード。

しかし、ジュンはアランを選ばなかった。

「違った」もの。アランは息子と暮らせなくてもいいと言った。孫に会いたいとも思わないと言った。個人が独立した英国家庭の意識。中国人のジュンとは違う。
アランは中華料理を食べる時にも箸を使っていなかった。これも「違う」。

リチャードが告白した時、ジュンはそれほど驚いたふうには見えなかった。感づいていたんだろうなと思う。

たぶん「友達」だろうが「恋人」だろうが「嫁」だろうが同じだった。

だから、ジュンは言うんだ。

「馬鹿な母親ね、嫉妬していた」
「カイを縛り付けたつもりはない。いつも傍にいただけ。」
「あなたも解る。親になれば。」

頑なだった母から初めて出た本音。

ジュンはリチャードが嫌いだったんじゃないんだ。

「息子を奪うもの」が嫌いだったんだ。

なのに、カイは告白が恐くてジュンをホームに押し込んだ。クラッシックな壁紙の可愛いお部屋はジュンにとって監獄だったのに。

母と子、国、言葉、習慣、性、年代、匂い…

たくさんの壁を超えられる物は、理解しようと努力する事、それだけなんだね。

「孤独に慣れる人生を受け入れる」

妄想ラストダンスを流しながら語るジュンのそのモノローグを聞いて、あまり前に進んでないんだな…と寂しく思った。

リチャードと暮らせばいいのに。箸を上手く使え、ジュンのために「夜来香」を探してきてくれたリチャードと。

ジュンがもう一歩、歩み出すラストが見たかった。


『追憶と、踊りながら』公式サイト

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